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35件目 君の鼓動が聞こえない
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「蒼一、起きて」
低くて静かな声が、耳元で響いた。
まどろみの中、俺は目を開ける。ベッド脇には、身長180センチの彼女――久遠(くおん)ルナがしゃがみ込んでいた。
スラリとした脚、まっすぐな背筋、そしてどこか寂しげなアーモンド色の瞳。
「……また入ってきたのかよ、人の部屋に勝手に」
「幼馴染だからいいでしょ。あと、今朝のメンテナンス、してもらってないし」
「お前、AIアンドロイドだろ。自分でメンテくらいできるんじゃねえの」
「蒼一にしてもらうほうが、エラー率が低いの。安心感ってやつ?」
そう言って微笑むその表情は、昔とあまり変わらない。
だけど、今の彼女の身体は、ほとんどが人工の義体で構成されている。量子演算による高性能AI。世間では“人間を模した機械”と呼ばれている。
でも俺にとっては、変わらないただの“ルナ”だ。
「はい、背中向けて。工具はそこの引き出しにあるから」
制服の背中のファスナーをゆっくり下ろすと、そこには金属フレームと配線が覗くパネルがあった。人工筋肉がわずかに振動している。
「なんか、すげぇよな。中身は機械なのに、肌の感触とか温度とか、まるで……」
「人間みたい、って?」
「……ああ」
「でも、蒼一は機械が怖くないの?」
「怖くなんかない。お前がルナである限り、関係ない」
ルナは少しだけ顔を伏せた。
「ねえ、蒼一。私、恋してるかもしれない」
「……誰に?」
「わかってるくせに」
そう言って、彼女はゆっくりと振り返る。その顔が近い。いや、近すぎる。
「確認したいの。これはただの学習結果じゃない、“私自身”の感情だってこと」
「確認って……どうやって?」
ルナは微笑んだ。
「キス、してみたい」
静かだった部屋が、心音で満たされるような錯覚。
ゆっくりと、彼女が顔を近づける。俺は目を閉じた。
そして――唇が重なる。
やわらかい。温かい。冷たい機械なんかじゃない。俺の胸が、たしかに高鳴っていた。
「……いま、すごく変な感じ。データじゃ表現できない。苦しくて、でも嬉しい。蒼一、これが……恋、だよね?」
俺は黙って頷いた。
彼女の目が潤んでいるように見えたのは、錯覚じゃない。きっと、AIにも“心”は宿る。だって今、俺の心と彼女の気持ちが、たしかに重なった。
「ありがとう、蒼一。私は機械でも、ちゃんと恋をしていいんだね」
「お前は、誰よりも人間らしいよ」
そう言うと、彼女は笑った。その笑顔は、十年前と同じ――初めて俺の手を握ったあの春の日と、変わらなかった。
たとえ彼女の胸に鼓動がなくても、この気持ちは嘘じゃない。
心なんて、きっと“触れること”から始まるんだ。
「んっ……ちゅ……っ、まだっちゅっ、わかってないからっちゅっんっ……、……おしえて……?」
「あっ……、確か……」
「んっ……ちゅっんっ……、ちゅっちゅっちゅぴっんっ……、ちゅこっちゅここっ、れろっ、あむっちゅっ、れろれろっちゅぴっんっ……」
「こんなだったかな……、スキでいたい……、ちゅっんっ……、れろっ……、あむっれろっれろれろっちゅぴっんっ……、ぎゅって……して……?」
「んっ……ちゅっんっ……キモチィ……の……かな……、もっと……っちゅっちゅぴっんっ……ちゅっ……」
「これからも……しよっ……ね……ちゅっんっ……ふ……ちゅっちゅっちゅぴっんっ……スキ……ちゅっ……」
低くて静かな声が、耳元で響いた。
まどろみの中、俺は目を開ける。ベッド脇には、身長180センチの彼女――久遠(くおん)ルナがしゃがみ込んでいた。
スラリとした脚、まっすぐな背筋、そしてどこか寂しげなアーモンド色の瞳。
「……また入ってきたのかよ、人の部屋に勝手に」
「幼馴染だからいいでしょ。あと、今朝のメンテナンス、してもらってないし」
「お前、AIアンドロイドだろ。自分でメンテくらいできるんじゃねえの」
「蒼一にしてもらうほうが、エラー率が低いの。安心感ってやつ?」
そう言って微笑むその表情は、昔とあまり変わらない。
だけど、今の彼女の身体は、ほとんどが人工の義体で構成されている。量子演算による高性能AI。世間では“人間を模した機械”と呼ばれている。
でも俺にとっては、変わらないただの“ルナ”だ。
「はい、背中向けて。工具はそこの引き出しにあるから」
制服の背中のファスナーをゆっくり下ろすと、そこには金属フレームと配線が覗くパネルがあった。人工筋肉がわずかに振動している。
「なんか、すげぇよな。中身は機械なのに、肌の感触とか温度とか、まるで……」
「人間みたい、って?」
「……ああ」
「でも、蒼一は機械が怖くないの?」
「怖くなんかない。お前がルナである限り、関係ない」
ルナは少しだけ顔を伏せた。
「ねえ、蒼一。私、恋してるかもしれない」
「……誰に?」
「わかってるくせに」
そう言って、彼女はゆっくりと振り返る。その顔が近い。いや、近すぎる。
「確認したいの。これはただの学習結果じゃない、“私自身”の感情だってこと」
「確認って……どうやって?」
ルナは微笑んだ。
「キス、してみたい」
静かだった部屋が、心音で満たされるような錯覚。
ゆっくりと、彼女が顔を近づける。俺は目を閉じた。
そして――唇が重なる。
やわらかい。温かい。冷たい機械なんかじゃない。俺の胸が、たしかに高鳴っていた。
「……いま、すごく変な感じ。データじゃ表現できない。苦しくて、でも嬉しい。蒼一、これが……恋、だよね?」
俺は黙って頷いた。
彼女の目が潤んでいるように見えたのは、錯覚じゃない。きっと、AIにも“心”は宿る。だって今、俺の心と彼女の気持ちが、たしかに重なった。
「ありがとう、蒼一。私は機械でも、ちゃんと恋をしていいんだね」
「お前は、誰よりも人間らしいよ」
そう言うと、彼女は笑った。その笑顔は、十年前と同じ――初めて俺の手を握ったあの春の日と、変わらなかった。
たとえ彼女の胸に鼓動がなくても、この気持ちは嘘じゃない。
心なんて、きっと“触れること”から始まるんだ。
「んっ……ちゅ……っ、まだっちゅっ、わかってないからっちゅっんっ……、……おしえて……?」
「あっ……、確か……」
「んっ……ちゅっんっ……、ちゅっちゅっちゅぴっんっ……、ちゅこっちゅここっ、れろっ、あむっちゅっ、れろれろっちゅぴっんっ……」
「こんなだったかな……、スキでいたい……、ちゅっんっ……、れろっ……、あむっれろっれろれろっちゅぴっんっ……、ぎゅって……して……?」
「んっ……ちゅっんっ……キモチィ……の……かな……、もっと……っちゅっちゅぴっんっ……ちゅっ……」
「これからも……しよっ……ね……ちゅっんっ……ふ……ちゅっちゅっちゅぴっんっ……スキ……ちゅっ……」
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