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50件目 たとえば、名前を呼ぶだけで
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教室の隅、窓際のいちばん後ろ。
そこに彼女は、いつもいる。
背は小さく、猫背気味で、顔は前髪に隠れている。
誰も話しかけないし、彼女も誰とも話さない。
でも俺は知ってる。
その子――奈々瀬(ななせ)は、俺の幼馴染だ。
「……本、忘れたの?」
放課後、教科書を探していたら、後ろから小さな声が聞こえた。
振り向くと、奈々瀬が、机の下から俺の英語の教科書を差し出していた。
「……机、落ちてた」
「あ、ありがとう」
彼女はそっと視線を逸らした。
でもその耳は、ほんの少し赤くなっていた。
この子は、小さい頃からずっと変わらない。
声も小さいし、いつも影に隠れるようにしていた。
けれど、誰よりも優しくて、よく見ていて、そして――
「なあ、奈々瀬。お前、俺のこと……嫌いじゃないよな?」
彼女がぴくっと肩を震わせる。
「ど、どうして……そう思ったの?」
「いや、別に確信があるわけじゃないけど」
「俺が話しかけても、すぐ逃げるからさ」
「そ、それは……っ」
奈々瀬は、唇をきゅっと噛んで俯いた。
「……怖かったの」
「怖い?」
「また変な噂、立ったらどうしようって……」
中学の頃、俺が奈々瀬と仲よくしてるのを見た誰かが、
「陰キャに優しくするのやめなよ」って、俺に言ってきたことがある。
あれがきっかけだった。
奈々瀬は急に俺から距離を取り始めた。
「でも、やっぱり、無理だった」
奈々瀬が、ぽつりと呟く。
「祐真(ゆうま)の声、聞くと……嬉しいの」
その目は、怖がりながらもまっすぐで。
俺は、胸の奥が熱くなるのを感じた。
「俺さ、お前が俺のこと嫌ってても、別にいいと思ってた」
「え……」
「でも、本当はずっと話したかったし、隣にいたかった」
奈々瀬の大きな瞳が、驚いたように開かれる。
「だから、いい加減我慢すんのやめたわ」
「な、なにを……」
「こういうの」
俺は、奈々瀬の手を取って、自分の胸の前に引き寄せた。
「……っ」
「好きだよ。奈々瀬」
彼女の頬が、みるみる赤くなっていく。
「し、信じられない……」
「信じさせてやる」
そっと顔を近づける。
彼女は逃げなかった。
静かに唇を重ねると、彼女の肩が小さく震えた。
けれど、手は離れなかった。
「……こんな私、ほんとに……?」
「こんな“お前”が、いいんだよ」
僕らの関係は、昔のままのようでいて、もう違っていた。
“幼馴染”という言葉の奥に、やっと言葉が生まれた。
名前を呼ぶだけで嬉しい、そんな時代は終わった。
いまは、ちゃんと好きって言える。
そして、それにキスで応えてくれる彼女がいる。
「んんっ……、ちゅっ、んっ……、ペチョっ、ピチャっ……、ふ……っチュッんっ……ちゅっ、れろっ、れろれろれろっ、ちゅぴっんっ……」
「やさひくて……っちゅっ、ちゅっ、んっ……ペチョっピチャっ、しゅきっれろっ……、あむっちゅっんっ……、キモチィちゅっ、ちゅくっピチャっ、ちゅぴっんっ……」
「これからも……そのっ……、毎日……したい……な……、ふ……ちゅっんっ……、ヤラシーのにっ……フワフワ……んっ……ぎゅって……しよ……っちゅっ……んっ……ふ……ちゅぴっんっ……しゅき……」
そこに彼女は、いつもいる。
背は小さく、猫背気味で、顔は前髪に隠れている。
誰も話しかけないし、彼女も誰とも話さない。
でも俺は知ってる。
その子――奈々瀬(ななせ)は、俺の幼馴染だ。
「……本、忘れたの?」
放課後、教科書を探していたら、後ろから小さな声が聞こえた。
振り向くと、奈々瀬が、机の下から俺の英語の教科書を差し出していた。
「……机、落ちてた」
「あ、ありがとう」
彼女はそっと視線を逸らした。
でもその耳は、ほんの少し赤くなっていた。
この子は、小さい頃からずっと変わらない。
声も小さいし、いつも影に隠れるようにしていた。
けれど、誰よりも優しくて、よく見ていて、そして――
「なあ、奈々瀬。お前、俺のこと……嫌いじゃないよな?」
彼女がぴくっと肩を震わせる。
「ど、どうして……そう思ったの?」
「いや、別に確信があるわけじゃないけど」
「俺が話しかけても、すぐ逃げるからさ」
「そ、それは……っ」
奈々瀬は、唇をきゅっと噛んで俯いた。
「……怖かったの」
「怖い?」
「また変な噂、立ったらどうしようって……」
中学の頃、俺が奈々瀬と仲よくしてるのを見た誰かが、
「陰キャに優しくするのやめなよ」って、俺に言ってきたことがある。
あれがきっかけだった。
奈々瀬は急に俺から距離を取り始めた。
「でも、やっぱり、無理だった」
奈々瀬が、ぽつりと呟く。
「祐真(ゆうま)の声、聞くと……嬉しいの」
その目は、怖がりながらもまっすぐで。
俺は、胸の奥が熱くなるのを感じた。
「俺さ、お前が俺のこと嫌ってても、別にいいと思ってた」
「え……」
「でも、本当はずっと話したかったし、隣にいたかった」
奈々瀬の大きな瞳が、驚いたように開かれる。
「だから、いい加減我慢すんのやめたわ」
「な、なにを……」
「こういうの」
俺は、奈々瀬の手を取って、自分の胸の前に引き寄せた。
「……っ」
「好きだよ。奈々瀬」
彼女の頬が、みるみる赤くなっていく。
「し、信じられない……」
「信じさせてやる」
そっと顔を近づける。
彼女は逃げなかった。
静かに唇を重ねると、彼女の肩が小さく震えた。
けれど、手は離れなかった。
「……こんな私、ほんとに……?」
「こんな“お前”が、いいんだよ」
僕らの関係は、昔のままのようでいて、もう違っていた。
“幼馴染”という言葉の奥に、やっと言葉が生まれた。
名前を呼ぶだけで嬉しい、そんな時代は終わった。
いまは、ちゃんと好きって言える。
そして、それにキスで応えてくれる彼女がいる。
「んんっ……、ちゅっ、んっ……、ペチョっ、ピチャっ……、ふ……っチュッんっ……ちゅっ、れろっ、れろれろれろっ、ちゅぴっんっ……」
「やさひくて……っちゅっ、ちゅっ、んっ……ペチョっピチャっ、しゅきっれろっ……、あむっちゅっんっ……、キモチィちゅっ、ちゅくっピチャっ、ちゅぴっんっ……」
「これからも……そのっ……、毎日……したい……な……、ふ……ちゅっんっ……、ヤラシーのにっ……フワフワ……んっ……ぎゅって……しよ……っちゅっ……んっ……ふ……ちゅぴっんっ……しゅき……」
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