もう一人のオレがみんな美少女で家に住みついてますが何か

第五話 日焼け美女のO.T.A. 1

　ある日の昼頃、おやつな時間には早い公園でひとり、俺はスーパーで買ったブラックコーヒーを、開けては呑んで空を見上げた。

　ボトル缶ながらも『焼き』や『挽き』など、豆の選定からすべての工程を、スペシャリストのバリスタ勢が監修していた。

　たまには外に出てゆっくりしながら、日光や酸素の補給で脳が活性するかもと、思い切って外出してはブラックコーヒーに浸かる。

　そこへ「隣いいですか」とお声がかかるから、そちらへ向いて確認してみたが、今ではあまり見かけないとされる黒ギャルか……？

「あっ、これ日焼けです。」

　浅黒く焼けた日照り焼きは大学生とあって、サークルで絡め取られては脱皮したか、その割にはサッパリとしてあたりが良い。

　日照り焼きJDの顔がずっとこちらを向いて、目を見開いてはニコニコしていて、何のつもりか知らんが悪いことではない。

　そして、勝手に紹介を始めてはソワソワしながら、何か重要なことを溜めているのか、
形容し難い感覚が薄っすらと浮き上がる。

　庵堂真胡都二十歳の大学生で、この日は午前にだけ履修科目を取っている日だったから、この公園に来たら俺を見つけたらしい。

「初めて会ったのに……、初めてじゃないような気がするんですよね……。」

　顔を赤くしているのを見ると、自分で少しイタイ発言をしたと思ったのか、何か云ったきりさらりと涼しい風が吹いた。

　沈黙の間が暇だったのでコーヒーを呑もうとしたが、その瞬間に「渡したいものがあるんです」と、唐突に切り出すから締め直す。

　あるモノを渡されて俺はハテナと思ったが、それでフィードバックする記憶が幾つか、脳内に浮かんでは消えて仕舞う。

　そのあるものとは、前世で俺が持っていた『バックレマンカード』だったが、表面がキラキラしたハイレアリティカードだった。

　更に気づいて仕舞った事があって、萌香や奈津美さんに実瑠と優花も同じ様なカードを、数日前に見せ合っていた事だった。

　あの時は変わった事をやっている程度に思ったが、何故か見覚えがあっても今では絶版していて、手に入れるのは恐らく不可能。

　それを出会った女子全てが、同じシリーズのレアカードを持っている上に、同じことを何度も聞いているから悟らざるを得ない。

「もう一人の……、俺……、なのか……？」

　今になって全てが繋がるところか、本当にみんなが『もう一人の俺』だったのかと、脳が急激に回転する様な感覚にフリーズした。

　何事かと思ったのか覗き込んだ顔が、横からゼロ距離に迫っては爽やかな芳香や声を添えて、さらりと遠ざかっては何かを云う。

『少し歩きませんか……？』