もう一人のオレがみんな美少女で家に住みついてますが何か

第四話 箱入り系動画配信者 5

　段々と奈津美さんのパフォーマンス力が、糸を引くほどに神がかっていて、一同はフワフワとソワソワと何かが落ち着かない。

　もはや登仙の如くにして曰く、俺以外の誰もがアレを自分にされたらと、想像を逞しくしては奈津美さんの手料理を気にする。

　米は繊細にして甘く艶に混ざって光沢すら覚えて、煮付けもの過ぎず甘すぎないから、素材の独特な味も絶妙に活かされている。

　野菜炒めはピーマンの苦みが抑えられていて、もやしのしなやかな食感と恐らく奮発したひき肉の身脂がサラダ油との絶妙な調和。

　臭みもなく癖ある旨味は分解されて微かに甘く、しっかりと火が通っていて色合いもよく、微かにバターも利いている。

　味噌󠄀スープも大根によく染みて豆腐のツルツル感もあって、保温力も高いから長く保って、出汁は鰹節でも煮込んだのか。

　こんな職人じみたレベルでハッスルしていては、そのうちに体調を崩すかも知れないが、奈津美さんは元から料理が好きなのか。

　この場の誰もが料理をほとんどしないし、アルバイト経験は恐らく無いから、調理器具や食器などの油処理は俺も同様だった。

　それにしても、きっと掃除すら任せっきりだろうと、つい奈津美さんに確認してみたら、最近はやってあると謂う回答だった。

「優花ちゃんの動画もカワイイ！」

　もう食べれないと、実瑠は家出人のJKと昼間にあげた動画チェックを見せ合って、何時の間にか知らぬは俺だけになって仕舞った。

　洗い物をすませる働き者の奈津美さんは、まだ俺が知らないことに気づいて、昨日の聴取結果を、本人に確認して俺に話した。

　斎藤優花・17歳と年は実瑠と同じだが、実瑠同様かそれ以上に強く否定されては、精神を圧迫され続けて耐えられなくなった。

　動画収益で予算もあるし実瑠を頼ることも出来たので、突発的に飛び出したら実瑠の立ち回りで、奈津美さんの世話になっている。

　父親は警察官僚で古いタイプの人種らしいが、優花も頭脳明晰とまでいかなくても、ガイドラインなどの理解くらいは出来た。

　何時までも『親の言いなり』や『オモチャ』では、自分自身の命ではなくなっているなら、ナリより独立の方が価値が高い。

　しかし、暫定レベルでは収益率も高くはなく、もっと工夫するか他に新しい価値を見つけるか、どうやっても課題は多い。

　ただ、今のところは実瑠と優花のあの爽やかな空気は、壊すべきではないことは奈津美さんも同じく、モラトリアムでいいだろう。