上 下
11 / 19
第四話 手巻き寿司パーティー

4-1

しおりを挟む


 出会った時には満開だった桜も、今では眩い黄緑色の若葉が風に揺れている。
 小花衣家にやってきて、早一カ月が経つ。もうすぐ大型連休だ。
 紗和子は、帯をぎゅっと締めながら朝の献立について考える。
 春らしい桜色の着物はところどころにモンシロチョウが飛んでいる。それに合わせる帯は生成り色の名古屋帯で、こちらにはタンポポが咲いている。帯揚げは空色、帯締めは淡い緑にして、帯留めには丸い綿毛を象ったブローチを選んだ。
 家事をしている時は割烹着の下に全て隠れてしまう。それはそれで、白い割烹着の雪の下に春が待っているようで、紗和子は好きだ。
 割烹着の紐を結び終わり、亜麻色の長い髪をくるりと結わえて棒簪でまとめ、後ろを振り返る。
 紗和子は、初めて来た日に寝かせられていた玄関脇の部屋を貰った。今現在、千春が締め切りに追われているため、薫はここのところ毎日紗和子と眠っている。
 今日も薫は春ノ助と寄り添うように眠っている。

「薫ちゃん、薫ちゃん、朝ですよ。起きて下さい」

 声を掛けて、とんとんと肩を叩くと、少しして長い睫毛が揺れて薫が目覚める。

「おはようございます」

 こくん、と頷いた薫が、ぐーっと伸びをして欠伸を一つ零すと立ち上がる。相変わらず薫は、すっきり目覚める。
 布団を押し入れにしまって、薫と手を繋いで部屋を出る。春ノ助もぐーっと伸びをしてからついて来る。春ノ助の爪が床に当たって鳴る音に、そろそろ彼の爪を切らなければ、と心にメモをする。
 朝一番にするのは、薫の両親と曾祖父母のお仏壇の湯飲みのお茶とご飯を新しいものにすることだ。そうしたらお線香を一本上げて、手を合わせる。
 それが終わったら、朝の支度にとりかかる。

「薫ちゃん、今朝は甘い玉子焼きとお出汁の玉子焼き、どちらがいいですか」

 紗和子は甘いのと言いながら右手をお出汁のと言いながら左手を薫に向ける。薫は、うんうんと悩んだ後、紗和子の右手をぎゅっと握った。

「じゃあ、今朝は甘いのにしましょう。さ、薫ちゃん、お顔を洗ってきてください」

 うんと頷いて、薫が洗面所へ向かう。春ノ助は、いつも薫について行く。春ノ助は、まだ九カ月なので子犬ではあるのだが、なんだかお兄さん気分で薫にくっついているのだ。
 台所へ入り、紗和子も朝食の支度にとりかかる。
 アジの開きをアルミホイルを敷いたグリルにセットして、鍋に作り置きのだし汁を入れて火にかける。冷蔵庫から味噌汁に必要な物がひとまとめになっているプラスチックのケースを取り出し、ついでに卵も取り出してケースに入れる。
 机の上に三人分のお弁当箱を広げ、炊飯器から熱々のご飯を盛り付ける。薫の分は、ふりかけを混ぜたおにぎりにして、昨夜、切っておいた海苔でクマちゃんの顔を作ってお弁当箱に入れる。
 薫の幼稚園はお弁当持参なので、大人もそれに合わせている。千春は、仕事が立て込むと薫がいない昼間は部屋から出て来ないこともあるので、お弁当のほうが便利なのだ。
 くいっと袖を引かれて振り返る。戻ってきた薫が両手を出している。
 その手に濡らして絞った布巾を渡す。

「いつもの通り、お願いしますね」

 こくん、と頷いた薫が居間に行く。卓袱台を拭いたり、箸を並べたりするのは薫の朝の仕事だ。
 紗和子は、先にお弁当を作ってしまおうと冷凍庫から作り置きのお弁当のおかずを取り出す。今日は、ハンバーグに決めて、それをレンジで解凍する。
 その間に昨夜の内に茹でておいたほうれん草をおひたしにして、紙のカップに入れてお弁当に。千春と紗和子のものは、シンプルなシリコンカップだが、薫のものにはカラフルな紙のカップを使っている。
 レタスとプチトマトも取り出して、洗って水気を切り、レタスの上にハンバーグを乗せてケチャップを掛け、彩にプチトマトを添える。薫のプチトマトには、可愛いうさぎのピックを刺す。大人のお弁当箱には、他に昨夜の残りの煮物も入れる。あとは、卵焼きを入れれば完成だ。
 そのタイミングで薫が戻ってきた。

「今日も卵をお願いします」

 紗和子は、薫に四つの卵を入れたボウルを渡す。
 薫はそれを机にもっていき、丸椅子に上って膝立ちになると卵をボウルから取り出し、一つ一つ丁寧に割り始める。薫は本当によくお手伝いをしてくれて、卵を割るのは彼女の仕事になっている。
 紗和子がだし汁味噌を溶かし入れていると、パンパンと机をたたく音がする。これは出来たよ、の合図だ。

「ちょっと待って下さいね、お豆腐だけ入れちゃいますから」

 近くのお豆腐屋さんで買ってくる絹豆腐は、大豆の味が濃くミルキーで美味しい。それを掌の上で切って、油揚げとねぎの入ったお味噌汁にいれ、火を止めて蓋をする。
 薫の前にあるボウルの中、四つの卵は割れることもなく真ん丸のままだ。ずいぶんと上手になったなぁ、と感心しながらたっぷりの砂糖と塩を少々入れる。

「はい、混ぜて下さいね」

 紗和子がボウルを手で抑え、薫が菜箸をぎゅっと握って混ぜてくれる。カシャカシャとボウルと菜箸が立てる音が台所を賑やかにする。

「……おはよふございまふ」

 寝ぼけた声に顔を上げれば、ぼさぼさの寝癖頭に、だらしなく浴衣を着た千春が欠伸を零しながら、廊下側の入り口からのっそりと顔を出す。

「おはようございます。昨夜も遅かったのでしょう? まだ寝ていても良かったんですよ?」

「お腹が空いてしまって、朝ご飯を食べたら、申し訳ありませんがもう一度、寝ます」

「分かりました。薫ちゃんは私が送っていきますね」

「はい……お願いします。顔、洗って来ます……」

 ふわぁ、とまた一つ欠伸を零して、千春は洗面所へ去っていく。薫と正反対に千春は、朝に弱い。
 見れば薫が面白そうに笑っている。寝起きの千春の様子が彼女の笑いのツボにはまったようだった。卵もいい具合に混ざったので、紗和子は玉子焼きを仕上げる。薫は、ちょっと離れたところでそれを見ている。
 玉子焼き用の四角い銅のフライパンは、紗和子が持ち込んだものだ。油を敷いて、馴染ませ卵を流しめば、じゅわじゅわっと卵が音を立てる。それを丸めて基礎を作って数回に分けて卵を流し込んでくるくると巻いて行けば、ふわふわで少し焦げ目の着いた玉子焼きの出来上がりだ。
 半分はお弁当に入れるが、もう半分は食卓に出す。
 焼き上がった魚をお皿に乗せて、冷蔵庫から大根おろしの入った小さなタッパーを出して、千春と紗和子の分に添える。薫にはまだ大人の味だ。
 戻ってきた千春が、焼き魚を運んでくれたので、紗和子はお盆に三人分のお味噌汁の鍋とお椀を三つ、紗和子が大事に育てているぬか床で漬けた胡瓜のぬかづけを盛り付けたお皿、それと納豆のパックも乗せる。

「これも、運びますね」

「ありがとうございます」

 戻ってきた千春がそれも運んでくれ、薫がついて行く。
 紗和子は、炊飯器からお櫃にご飯を移して、居間へ運ぶ。
 お味噌汁を千春が、ご飯を紗和子がよそう。仕度が整ったら、手を合わせる。

「いただきます」

 千春の掛け声に合わせて挨拶をすれば朝ご飯の始まりだ。
 紗和子は、薫が食べやすいように鯵の干物の骨を外して、身をほぐす。薫は、じっと待っていて、それが終わるとぺこりと頭を下げてから美味しそうにご飯と一緒に魚を頬張る。千春が優しい眼差しで見守っている。それを眺めながら紗和子は、自分の朝食に箸をつける。
 甘い玉子焼きに薫が嬉しそうに顔を綻ばせているのが微笑ましい。千春も味噌汁を美味しそうにすすっている。二人とも、その表情かおが何よりも雄弁に美味しさを物語ってくれている。作る側としては、この上なく幸せな光景だ。
 千春が味噌汁とごはんをおかわりして、薫に紗和子の分の玉子焼きを一切れ分けてあげて、和やかな朝食は終わる。綺麗に空になった皿や茶碗をお盆に乗せていく。

「紗和子さん、すみませんが、幼稚園に送るついでに原稿を出してきてもらえますか」

「はい、分かりました」

 それから千春は、分厚い原稿の入った茶封筒を居間に届けてから布団へ戻り、紗和子は朝食の後を片付ける。お皿を洗い終えると居間で薫が待っている。
 薫の通う幼稚園は制服があるので、用意しておけば薫は自分できちんと着られるのだが、流石に寝癖はまだ直せない。
 寝癖を直した後は、リクエストを聞く。
 どんな髪型がいいか尋ねると、薫は手で髪を掴んでポニーテールだったり、二つ結びだったりと大体の形を教えてくれるので、あとはみつあみにするかどうか聞いたりしながら髪型を決める。
 今日は編み込みハーフアップにして、ピンク色のリボンを結ぶ。一緒に荷物を確認してお弁当を黄色い通園バッグに入れる。薫はそれを肩に掛けて、制服と同じ紺色に白いリボンの帽子を被る。セーラー服のようなデザインの制服は、一年を通して下は半ズボンだそうだ。
 紗和子は割烹着を脱いで、軽く畳んで居間の片隅に置いておく。
原稿の入った封筒を小脇に抱え、一応、玄関で「行ってきますね」と千春に一声かけてから、お留守番の春ノ助に手を振り家を出た。千春から返事はなかったので、もう既に夢の中なのだろう。

「さあ、行きましょうか」

 薫の手を取る。

「今日は、良いお天気ですね」

 紗和子がそう声をかけると薫は、すーっと大きく息をすって吐き出した。にこにこ笑う薫を真似て紗和子も深呼吸をしてみる。
 心地よい春の空気を胸いっぱいに吸い込むと体の内側から、元気がみなぎって来るような気がした。

「よーし、気分もしゃっきりしましたし、行きましょうか、薫ちゃん」

 はーいと手を挙げた薫とともに紗和子は、ゆったりと歩き出したのだった。

 途中、少し寄り道をしてコンビニで原稿の入った茶封筒を出してから、幼稚園へ向かう。

「あ、薫ちゃん、小花衣さん。おはようございます」

「日菜子先生、おはようございます」

 幼稚園の門のところで若い女の先生が迎えてくれ、薫と揃って頭を下げる。薫の担任の小林日菜子先生だ。ちなみに、薫はさくら組だ。この幼稚園のクラスは、お花の名前がつけられている。
 門や玄関のところには、他にも先生がいる。四月も終わりになれば、入園当初、親と離れるのが不安でぐずっていた小さな子も笑顔で教室に駆けて行く子がほとんどだ。

「あ、薫ちゃんのおかあさんだ! きょうはチョウチョだ!」

 既に同じく親の送迎で登園していた子どもたちが駆け寄って来る。
 何も知らない子どもたちにしてみれば、紗和子は「薫ちゃんのお母さん」だ。千春は、自分の娘として薫を幼稚園に通わせているので、千春の妻になった紗和子は自然とそう呼ばれるようになった。先生方は、千春と薫が叔父と姪であることや、両親を亡くしたことを知っているが、子どもたちは知らない。
 初めて呼ばれたのは、千春が幼稚園に自分の妻になった女性だと紹介してくれた日だ。薫の友達の女の子が「薫ちゃんの新しいお母さん?」と言ったのだ。否定するのも、説明するのも憚られて、紗和子が困っていると他ならない薫が、こくん、と頷いて、更に手でハートを作って「大好き」と言ってくれたのでそのまま定着したのだ。
 紗和子は、喋れない薫が大好きと言ってくれているとはいえ、このことについて本当はどう思っているかが分からないのが、少し、不安だった。

「あ、これタンポポ? 薫ちゃんと風香、このあいだまで、たんぽぽだったもんね!」

 紗和子の帯のたんぽぽを見つけた仲良しの風香の言葉に薫が嬉しそうに頷く。
 ちなみに「この間、たんぽぽ」というのは薫たちが年中さんの時は、たんぽぽ組だったからだろう。

「薫ちゃん、はやくおカバンおいて、あそぼう!」

 風香に誘われた薫が紗和子を見上げる。紗和子は、しゃがみこんで薫をぎゅうと抱き締める。

「行ってらっしゃい。また迎えに来ますね」

 こくこくと頷いた薫も紗和子をぎゅっとして、背中をとんと叩いたら、離す。一週間ほど前からしている行ってきますと行ってらっしゃいの挨拶だ。千春が送る日は、家の玄関でする。

「風香ちゃん、よろしくね」

「はーい! 薫ちゃん、いこ!」

 仲良く駆け出していく二人を見送って、紗和子も立ち上がる。

「それでは、日菜子先生、よろしくおね、きゃっ」

「小花衣さん!」

「やだやだやだぁ!」

 何かにぶつかられてよろけた紗和子を日菜子が支えてくれる。
 だが、状況を把握するより早く、大音量の叫び声に日菜子と顔を見合わせ、音源を振り返る。
 薫と同い年くらいの男の子が母親と思われる女性が肩に掛けている鞄を引っ張り、泣き叫んでいた。

「れ、蓮人くん、どうしたの?」

 日菜子が声を掛けるが、蓮人というらしい男の子は聞く耳を貸さない。

「蓮人! ママはもうお仕事に行く時間なの! 車で美智も待ってるんだから、お兄ちゃんでしょ⁉ 我が儘言わないで!」

 その言葉通り、女性はいかにもバリバリのキャリアウーマンといった雰囲気があり、服装も化粧もばっちりだった。朝、日焼け対策と眉を描いただけの紗和子とは違う。
 この森山幼稚園では、昨今のニーズに合わせて、保育所のように遅くまで子どもを預かってくれるプランがあるそうだ。薫は、千春が在宅の為、昼ご飯を食べたら二時頃には帰って来る。

「なんで美智はいっしょなのに、オレはだめなの! やだ、オレもいっしょがいい!」

「蓮人は赤ちゃんじゃないでしょ⁉ ママ、何度もお話したよね⁉」

 蓮人の母親は、苛立たしげに言い返す。
 あまりの剣幕に驚いて、紗和子はゆっくりと瞬きをしてしまった。あ、と思った瞬間には、蓮人の小さな胸からぐしゃぐしゃになって、それでも母親に伸びる黄色いリボンが見えた。母親の胸では、オレンジ色のレースのリボンが蓮人以上にぐしゃぐしゃになってしまっている。レースのリボンは、彼女の手首にある腕時計に伸びて絡まっている。
 紗和子は、慌ててゆっくりと瞬きをして「糸」を消す。

「御影さん、落ち着いて下さい。蓮人くん、先生と一緒に遊ぼう? ほら、今日はお天気も良いし、お外でいっぱい遊べるよ?」

 日菜子が蓮人を宥めようと声をかけるが、蓮人は泣き止まない。むしろ、泣き過ぎて嘔吐き始めてしまっている。他の子たちが、その様子に不安になってしまったのか、紗和子の傍に寄って来る。紗和子は「大丈夫ですよ」と声を掛けて小さな頭を撫でた。

「ほら蓮人! 美智が待ってるし、ママお仕事に行くんだから、離しなさい!」

 母親が、ぐいっと鞄を引くが、蓮人は離そうとしない。日菜子も一生懸命、声を掛け、最後には抱き上げても蓮人は鞄を離そうとしない。

「ああ! もう! いい加減にして!」

 ついに母親が、鞄のチャックを開けて、中から財布やポーチを取り出す。
 蓮人が咄嗟に彼女の手を掴もうとするが、その手はするりとすり抜けていく。

「よろしくお願いしますっ!」

 叫ぶように言って、母親が鞄の中身だけ持ってヒールを鳴らして走り去っていく。

「やだやあ、オレもいくっ、うえっ、ママぁぁあ! ひっく、ママぁ!」

「蓮人くん。一度、お部屋に行ってお水飲もうか、特別に麦茶でもいいよ。あ、小花衣さん、すみません。ほら、皆ももう大丈夫だから、好きに遊んでおいで」

「いえ、大丈夫ですよ。それでは、薫をよろしくお願いします。皆もまたね」

「薫ちゃんのおかあさん、またね! 春ノ助もばいばーい」

 子どもたちが手を振ってくれるのに、手を振り返して紗和子も日菜子や他の先生に会釈をして歩きだそうとした時だった。

「おぇ、おえぇぇええ」

 日菜子とすれ違った瞬間、蓮人が嘔吐した。

「あら、まあ」

 袖と裾に朝ご飯だったのであろう未消化のそれらが、びっしょりと掛かってしまい、思わず出た言葉がそれだった。

「あっ、こっ、す、すみませんっ!」

「日菜子先生、大丈夫です。それより、蓮人くんを」

「あっ、はい!」

 日菜子が中に入って、門の壁の陰に蓮人を座らせ、嘔吐物が喉に詰まっていないか、呼吸ができているか確認を始める。

「これをどうぞ。お口の周りを拭いてあげてください」

 紗和子は胸元に入れてあった懐紙を取り出して、数枚を日菜子に渡す。日菜子が、お礼を言って受け取り、蓮人の口元を拭く。蓮人は、まだひっくひっくとしゃくり上げていた。
 さすがの事態に他の先生も来てくれて、タオルで日菜子の着物を拭いたり、門の前にぶちまけられたそれを片付ける。

「小花衣さん、本当にすみません」

 日菜子が幾らか落ち着いた、というよりは疲れ果てた蓮人を抱き上げて言った。

「日菜子先生、大丈夫ですよ。ウールなので洗濯機でざぶざぶ洗えますから。袖のおかげで帯も無事ですし。あ、蓮人くんが吐いてしまったことはともかく、私に掛かったことは蓮人くんのお母さんには言わないでくださいね」

「え、でも」

「わざとじゃないですし、本当に大丈夫なんですよ。すぐに帰って洗えば、なんてことはありませんから。お母さん、お疲れみたいですから、気に病まれては大変です」

 紗和子の言葉に日菜子先生も他の先生も言葉を飲み込んだ。
 きっと「糸」が見えなくても、蓮人の母親が疲れ果てて、追い詰められていることは見れば分かる。綺麗な化粧で隠せないほど隈があり、肌荒れもしていた。シャツやスーツも近くで見るとアイロンが掛けきれておらずに、よれっとしていた。元家政婦だから、ついついそういうところを見てしまう。

「タオル、ありがとうございました。蓮人くん、私は全然、大丈夫ですからね。では、失礼いたします。薫のこと、今日もよろしくお願いいたします」

 ぺこりと頭を下げて、紗和子はようやく家路へとついたのだった。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

文化祭

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

うつくしき僧、露時雨に濡れ

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:224

REAL ME〜この愛は止められない〜

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

ほろ甘さに恋する気持ちをのせて――

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:17

学園戦隊! 風林火山

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

妖精のいたずら

恋愛 / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:391

ぼくの淫魔ちゃん

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:4

年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月までー月の名前ー

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:130

処理中です...