トラウマ持ち青年の変な日常

彼の名前は一条 翼

「ただいま」

　俺は少し息切れしながらもここまで連れてこれた。バタバタと騒がしい音が聞こえてきたと思ったら蓬莱が

出てきた。

「遅い!寂しかったんだ-----それなに?」

　言い方酷くね?

　あとで説明するから濡らしたタオルとか持ってきて。

「分かったわ。不知火君がそう言うなら。」

「ん……」

　俺はありがとうと込めた返事をだす。蓬来は満足したように戻っていく。

「さて、運ぶか……」


　部屋のドアを開けバックを置き、被害者君をベッドに寝かせる。手足が腫れていたからなるべく痛みが感じ

ないようにする。

　鼻血が出ていたか頭を少し高くする。止まっていたとしても一応はやっておく。

「持ってきたわよ。………電気つけたら?」

「わ、悪い……」

　リモコンで電気をつける。顔を良く見てなかったが女の子のような顔をしている。だけど、何処かキリッと

している。

　水に濡れた冷たいタオルで傷の汚れを拭く。

「あら?この人同じクラスの奴じゃない。」

「え?そうなのか?」

　被害者君も言ってたけど同じクラスなんだな。全く分からない。

「無理もないわ。クラスで余り目立ってないもの。いつも勉強してるわ。」

「よく見てるんだな。」

「人間観察よ。いざって時の為に弱味を握っとくと立場は優勢になるからね。」

　恐ろしいな。敵に絶対回したくない系だ。

「じゃあ、こいつの名前知ってるのか?」

「いいえ。名前は興味無いから覚えてないわ。」

　じゃあ、弱味を握っても駄目じゃん。

「ご安心を。外見と特徴は覚えてるから何とかなるわ。」

　別にそんなことで安心したくない。あぁ、バック持ってきてたな。名前をこれで見ればいいじゃないか。

　俺はバックについている名前を見る。この学校は名前を書く際にローマ字の筆記体書かないといけない。無

理だったらブロック体。

　一条 翼(いちじょう つばさ)か。聞いたことがあると言えばあるかもな。

「一条 翼ね。一応覚えておくわ。」

　お?珍しい。

「貴方が連れてきたもの。少し気になるんでしょ?」

「まぁな。」

　今は寝かしておいて明日聞こう。学校に連絡しておこう。休んでまで聞く必要はないと思うけどな。