幸せが終わるとき。(完結)

紫苑

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こんなに好きなのに。

束縛してしまいたい。

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「クレハ、本当に俺の事好きなの?」

訊きたい。聞いてしまいたい。甘い言葉をいくらでも並べるから、お願いだから、俺以外見ないで。

すやすやと。事が終わり、寝るクレハに腕枕をしながら、俺はそっと囁いた。そうして、もう一度唇にキスを落とそうと近づくと、びくっと驚いた。

ベットの横にあった携帯が揺れながら、端にあったのがいけなかったのか、俺の方に落ちてきた。

これはチャンス?
これは悪魔の誘惑?
携帯を見るか、見ないか俺の心は揺れる。
拾うだけ、拾うだけだ。

そっと腕をクレハの頭の下からゆっくり抜き取ると、携帯をそっと拾う。

クレハの携帯は、誰からメールが来たのか分かるように、親切な事に外の液晶に名前が出てしまう。

―「アクア」

可愛い名前に女の子だろうと油断した。きっと女友達の…いや。

クレハにそんな名前の女の子の友人は居ない。

ベットからあられもない姿で携帯をいじる俺をクレハはどう思うんだろう?辞めておけ、今なら…もう一度ベットに戻って、クレハと甘い時間を過ごして、携帯の事なんて忘れちまえよと戻ろうとすると、また携帯が揺れた。

―「光」

こんな名前の友人もいないはず。

液晶にチカチカ映る恐らく男の名前を見て、俺は戸惑いながら携帯を開いた。着信をカチカチボタンで押しながら見たけれど、全部男の名前。それも複数。メールの受信履歴を見て、唖然とした。

「ねぇ、クレハ、こないだ部屋に来た時、風呂にネックレス置いて行ったでしょ?付けてあげるって言ったのにさぁ、どうせ脱いじゃうんだから一緒でしょ?何で終わった後、シャワー浴びるの?」

FROMアクア

カチカチ。

「クレハ、俺のゴム知らない?こないだ使ったじゃん?使い過ぎて俺がなくしちゃったのかもなぁ~。クレハ一緒にお風呂入ろうって言ったのに入らないし。一人で風呂入ってもつまらない…でしょ?」

FROM光

以下、よろめきたくなるほど沢山やり取りがある。

クレハのSEXフレンドは2人+不特定。メールを見ていると一度きりの関係も結構あるみたいだな。

冷静な自分がとても嫌だ。でも、ずっと彼女を疑っていた。

あんなに綺麗で可愛いエッチの上手い彼女が、俺みたいな地味で下手な奴相手なんかしてる方が間違いだよな。でも、

俺だけを見て、俺だけに感じて、俺の物だけにしたい。

それが例え贅沢でも。

同時に、何でそんな酷いことが出来るんだろう。
俺の事、好きじゃないんだろ?
他の奴の方が好きなんだろう?

どうせ、クレハ一筋で来ましたよ。
クレハもだと思ってた。―嘘だな。

―嘘だよ。俺はずーっと罪悪感を感じていた。母親レティシアの葬儀の後にしか付込めなかった。俺は最初を奪った事をずっと申し訳なく思ってたんだ。何も…葬儀の後なんかナイーブになるときにしか…

奪える!と思えて、襲った。

葬儀場で、誰もいない暗がりで。舌をねじ込み、体中を愛撫して、なめまわして、初めての経験に息が戸惑い、泣きそうなクレハを慰めたかった。俺は、クレハをずっと救いたいと思うより、母親レティシアとは違う、そんなお前が好きで堪らない。俺を見て。クレハの周りには俺以上なんていくらでも居る。だから、俺がむしろ一番葬儀にショックを受けていたんだ。

母親を憎んでたクレハ。
介抱された鎖の枷から、俺がまた首輪をつけてやる。
だから、他の男に何て行かないで。

ああ…クレハだけを一生抱いていたい。

隠れて買った婚約指輪。
ラピスラズリの指輪。

経験・愛・永遠の愛の石言葉。

全部断ち切ってお願い。

俺の事だけ考えてよ。
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