幸せが終わるとき。(完結)

紫苑

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想いが叶った後は。

幸せいっぱい。

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結婚式の日取りがほぼ決まり、あたしは横で肩を抱く男性をチラリと盗み見た。

カッコいい。優しい。気が利く。そう思いつつも、特には惹かれない。

だって、あたしにはレアが居るし。

お腹に愛の証が宿ってる。

彼は、産婦人科の先生で最近とても親切だ。

そう、あたしはお腹にレアとの子供が居る。

気持ち悪くて吐きそうになって、公園のベンチで横になっていると、

彼が肩を支えてくれて、産婦人科まで連れて行かれた。

そこで、名刺を貰って、彼は優しく、色々面倒を看てくれるようになった。正直、まだレアに子供の事は言うのは早いかな…と思って居たけれど、彼に早く新婚旅行までには言った方がいいと言われた。

あたしは、レアとの赤ん坊がこのお腹にいるんだ…と、

3か月ですねと言われたことも、
早く言いたいような憂いの気持ちも、

全てが愛おしくて、益々レアが好きだと思った。


「あの美人、本当勿体ない、人妻なんてなぁ」
産婦人科ここに来てるってことは、妊婦か~」

検診に来るたびに何だかチラチラ見られたけれど、あたしは幸せが一杯で何にも聞こえない。以前だったら、愛想よく微笑んでたりしたけれど、煩わしいし。

「ちょっと待てよ。俺が落とすんだからさ。」

そんな邪悪な声さえも聞こえない。
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