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白昼夢。
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目が合えばそれだけで幸せで、
抱きしめあえばそんなことで喜んで、
求めあえば幸せな気持ちで満たされる。
そういう幸せな恋愛に憧れたこともあった。
だけれども、ティアナに手を出した罪悪感。
そして、クレハを忘れていく自分を憎く思う。
だから、出てきてからようやく、クレハのお墓に着くことが出来た。
ここのお墓は、火葬はしない。
掘り起こせば、彼女に会えるなんてそんな空想がよぎる。
クレハの長い髪を撫でるのが好きだった。
彼女の綺麗な唇にキスするのが好きだった。
そうして、それ以上の事を求めあったとき、他の男ともそうしてると知って、いら立ちが憎しみに変わり、彼女を殺した。
彼女がもし生きてくれたら-…俺はティアナを好きにならなかったんだろうか。
今さらながらに、自分のしてきた事を悔い改めねばと思う。
彼女が好きだったワイン。
彼女が好きだった花
わがままで気まぐれな子猫みたいだった。
そんな彼女が好きだったよ。
切なさに身を焦がしながら、墓場に抱き着いて、俺は一人で泣いた。
「クレハだけを愛して忘れないのが俺の罪だよな?」
墓前から聞こえてくる声がないことは分かってる。
それでも、訊かずにはいられない。
「俺はどうして生き残ったんだ?」
だって。
「逆だったら…俺は幸せだったのに」
悲しい。
それ以上に虚しい。
そして、切ない。
「何でだよ」
彼女のお墓が目の前にあるの?
その瞬間、後ろから何か暖かくて柔らかい物が当たる。
「まさか」
そう思って、振り返ろうとするけれど、長い銀髪が肩から流れてるのを見て、
「ティアナ?」
何も言わない。
「クレハ?」
何も言えない。
「好きだよ」
どちらが?
「私はレアの事が大好き」
「ティアナ?」
心の奥に溜まった考えが吹き飛んでいく。
風になって心を浚われた。身を持っていつも教えてくれるティアナ。
心でさえも綺麗なのが分かるから、大事にしなくてはと誓ったのに。
「ねぇ、私がレアの事一生守ってあげる。だから」
いつも笑顔をくれた。
泣きそうな時に抱きしめて忘れさせてくれた。
素敵な女性。
結局子供なのは、自分。
どちらを愛せばいいのか、悩んだ俺の負け。
クレハを愛し受け入れられなかった、俺の負けだ。
どちらの恋愛も俺は敗者だった。
そんな中、手を差し伸べて光をくれた。
「ティアナ、俺は…お前が好きだよ」
何故だか震えが伝わって伝染する。
彼女の息が耳元に当たりくすぐったい。不自然な事にも気付かず、俺は次の言葉を待つ。お互いの心臓が高鳴り、どんな返事が待っているのか想像できなかった。伝わる心音。近づく声。抱きしめる手に力が入る。
「キスして、レア。」
だから、その言葉がとても嬉しくて。
「いいのか?」
何も言わないのを「YES」と受け取り、彼女から近づく顔を横目に見てた。
俺は、耳元に手を掛けると目を瞑り、そのまま、二人は一つの影になる。
唇から伝わる暖かい熱が、
幸せで幸せで、眩い。
こんなにも幸せなことがあっていいのか?
余韻に浸りながら、目を開けると既に彼女は居なかった。
ああ、白昼夢だったのかと思いながら、
俺はあれは夢だったんだと思った。
本当はクレハが怒っていて、「幸せになるな」と言いたいのかと思い、寂しい気持ちに駆られる。ティアナに会いたい。
でも、許して貰えるのだろうか?
「貴方は許してくれますか?」
この中途半端な幸せが終わるとき。
俺は、ティアナを抱くよ。
もう逃がさない。
好きだって伝えて、ライバルに勝って、そしていつか手に入れて、クレハを認めさせて、そうして愛おしい彼女を狂うほどに愛したい。
多分彼女は色んな男と付き合って。
素敵な夢を持って、自立したカッコいい凛とした女性になれる。
その横でささやかに支えになりたい。
それが本当の俺の願い。
ずっと、次はティアナだけをきちんと愛して、
どんな邪魔があってももう離さない。
だから、応援してくれよ。
クレハ。
抱きしめあえばそんなことで喜んで、
求めあえば幸せな気持ちで満たされる。
そういう幸せな恋愛に憧れたこともあった。
だけれども、ティアナに手を出した罪悪感。
そして、クレハを忘れていく自分を憎く思う。
だから、出てきてからようやく、クレハのお墓に着くことが出来た。
ここのお墓は、火葬はしない。
掘り起こせば、彼女に会えるなんてそんな空想がよぎる。
クレハの長い髪を撫でるのが好きだった。
彼女の綺麗な唇にキスするのが好きだった。
そうして、それ以上の事を求めあったとき、他の男ともそうしてると知って、いら立ちが憎しみに変わり、彼女を殺した。
彼女がもし生きてくれたら-…俺はティアナを好きにならなかったんだろうか。
今さらながらに、自分のしてきた事を悔い改めねばと思う。
彼女が好きだったワイン。
彼女が好きだった花
わがままで気まぐれな子猫みたいだった。
そんな彼女が好きだったよ。
切なさに身を焦がしながら、墓場に抱き着いて、俺は一人で泣いた。
「クレハだけを愛して忘れないのが俺の罪だよな?」
墓前から聞こえてくる声がないことは分かってる。
それでも、訊かずにはいられない。
「俺はどうして生き残ったんだ?」
だって。
「逆だったら…俺は幸せだったのに」
悲しい。
それ以上に虚しい。
そして、切ない。
「何でだよ」
彼女のお墓が目の前にあるの?
その瞬間、後ろから何か暖かくて柔らかい物が当たる。
「まさか」
そう思って、振り返ろうとするけれど、長い銀髪が肩から流れてるのを見て、
「ティアナ?」
何も言わない。
「クレハ?」
何も言えない。
「好きだよ」
どちらが?
「私はレアの事が大好き」
「ティアナ?」
心の奥に溜まった考えが吹き飛んでいく。
風になって心を浚われた。身を持っていつも教えてくれるティアナ。
心でさえも綺麗なのが分かるから、大事にしなくてはと誓ったのに。
「ねぇ、私がレアの事一生守ってあげる。だから」
いつも笑顔をくれた。
泣きそうな時に抱きしめて忘れさせてくれた。
素敵な女性。
結局子供なのは、自分。
どちらを愛せばいいのか、悩んだ俺の負け。
クレハを愛し受け入れられなかった、俺の負けだ。
どちらの恋愛も俺は敗者だった。
そんな中、手を差し伸べて光をくれた。
「ティアナ、俺は…お前が好きだよ」
何故だか震えが伝わって伝染する。
彼女の息が耳元に当たりくすぐったい。不自然な事にも気付かず、俺は次の言葉を待つ。お互いの心臓が高鳴り、どんな返事が待っているのか想像できなかった。伝わる心音。近づく声。抱きしめる手に力が入る。
「キスして、レア。」
だから、その言葉がとても嬉しくて。
「いいのか?」
何も言わないのを「YES」と受け取り、彼女から近づく顔を横目に見てた。
俺は、耳元に手を掛けると目を瞑り、そのまま、二人は一つの影になる。
唇から伝わる暖かい熱が、
幸せで幸せで、眩い。
こんなにも幸せなことがあっていいのか?
余韻に浸りながら、目を開けると既に彼女は居なかった。
ああ、白昼夢だったのかと思いながら、
俺はあれは夢だったんだと思った。
本当はクレハが怒っていて、「幸せになるな」と言いたいのかと思い、寂しい気持ちに駆られる。ティアナに会いたい。
でも、許して貰えるのだろうか?
「貴方は許してくれますか?」
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俺は、ティアナを抱くよ。
もう逃がさない。
好きだって伝えて、ライバルに勝って、そしていつか手に入れて、クレハを認めさせて、そうして愛おしい彼女を狂うほどに愛したい。
多分彼女は色んな男と付き合って。
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その横でささやかに支えになりたい。
それが本当の俺の願い。
ずっと、次はティアナだけをきちんと愛して、
どんな邪魔があってももう離さない。
だから、応援してくれよ。
クレハ。
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