見えない明日に揺れる僕たちは

多田莉都

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第4章

夏休みに、横浜で(DAY 1) 9

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「なにそれ? 学年1位を取ればダンスは許可するって言ったじゃない!」

 彩夏が叫んだ。たじろぐことなく「そうね」と長瀬真衣は返した。

「そこは認めましょう。月島君……だったわね? 彼に勝てるほどまで勉強を頑張った。それは認めるわ」
「じゃあ……」
「じゃあ次の段階よ」

 次の段階? 彩夏と僕は顔を見合わせる。

「結局ダンスを始めて成績が落ちたら意味がないでしょう? 個人練習をして子供たちにダンスを教えるようになったぐらいで、ダンスも両立できるかは私には見えなかったわ。趣味で続けるならそれは続ければいい。でもプロレベルを目指すとしてやっていけるのかしら?」
「……どうしろっていうのよ?」
「私を納得させるしかないわね」
「その納得させる方法を聞いているんですが」
 僕が口をはさむ。
「それを提案してみなさい。勉強ができたのはわかったわ。じゃあダンスを続けていけるのか? というときに、私がこの子はダンスでもやっていけると思わせる何かを提案しなさい」

 提案ってそれこそコンサルかよ、と僕は心の中で突っ込む。もしくは就活の面談か?
 勉強を維持したままダンスもできることの証明? そんなことダンススタジオもない町でどうしろって言うんだ。東京のスタジオに週末だけ通って富山と往復? いやそんなこと経済的負担が大きすぎる。それならば――、頭の中でいくつか考えるが僕の中で「これは!」という案が出てこなかった。
 横目で見た彩夏も下唇を噛んでいる。「どうしろって言うのよ……」と彩夏が声を漏らした。ここで引き下がるわけにはいかない。
 なんとかしなければ。でも、どうする? 落ち着け――、
 
『一回、深呼吸して落ち着かれ、って言いたい』

 ふいに美咲の言葉が頭に浮かんだ。思わず僕の顔が綻んだのが自分でもわかった。長瀬真衣が怪訝そうな顔をした。

「わかりました」
 僕の言葉に彩夏が「え!?」と声を出した。何を受け入れてるんだって言いたいんだろう。

「まずは彩夏さんの一学期の努力を認めてくれた、と解釈しました。それで次のステップに進んだ。これは『前進』です」
「……つまり?」
「その提案とやらをさせていただいて、今度こそ納得してもらうようにしてみせます。なので……今日のとこは帰ります」

 僕は彩夏の顔を見た。彩夏は戸惑ったような表情をしていた。

「今日、提案をすぐに出せって言われてるわけじゃない。もう何をしてもダメって言われたわけでもない」
「……うん」
「ということは、前に進んでるんだ。次を考えよう。今日は帰ろう」
「あ……うん……わかった、OK、うん……そっか、次だね」
「うん、次だ」

 僕が笑いかけると彩夏も笑った。
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