見えない明日に揺れる僕たちは

多田莉都

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第6章

二学期が始まり 1

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 一週間の夏期講習が終わり、僕は富山に帰ってきた。
 彩夏は僕より二日早く富山に戻った。もともと新幹線の予約がそうなっていたらしい。

 富山駅に到着したのは、午後三時ごろで新幹線を降りたときはまだまだ暑い時間だった。駅の北口から出ると蒸し暑い熱気が押し寄せてきて、横浜も富山も暑いには違いないなと感じた。
 何日か寝ていたい気分だったが、受験生にはそんな時間はなく、すぐにこっちで通っている塾の夏期講習の日々となった。
 ここでも集中できるべきなのだが、僕は少し上の空の部分もあった。別のことを考えていたというか。
 それでも問題を解くことはできたし、どちらかといえば別のことを考えたくて早く小テストを終わらせているぐらいだった。
 
 夕方に講習が終わり、塾のビルを出て、自転車に乗って帰っている途中で知っている人影を見つけた。美咲だった。
 美咲が僕に気づいて手を振った。僕も右手を挙げて、美咲の横で自転車を降りた。

「なんか久しぶりじゃん」
「夏休みになってから全然会わないしな、部活もないし」

 去年はまだ二年だったので学校に部活に行くと、美咲に会うことは時々あった。お互い引退しているいまとなっては、学校にそれほど行くこともないので美咲に会う回数も少なかった。
「美咲は夏休みを楽しんでる感じだな」

 どこかのアパレルブランドのお店の袋を下げた様子からして塾帰りには見えない。僕の視線が袋に向いていることに気づいた美咲が笑った。

「あ、これ? 絵理沙と買い物行ってたんだ。夏物セールだったし」

 篠田絵理沙しのだえりさは美咲や僕と同じ小学校の子だ。成績が割と上位の子だとは知っているが、僕はあまり話したことがない。美咲とよく一緒にいるところを見る。
 

「余裕だなぁ」
「私は佑みたいに堀園なんて届かんからね」
「堀園は無理だとしてどこら辺を狙ってんだよ?」
「雄山第一とか布道高とかかな?」

 どちらも県の真ん中よりは上の学校だった。

「そこは余裕なのか?」
「うーん、この間の模試でD判定だった」
「笑えねー」

 笑ってごまかす美咲に僕は突っ込んだ。

「塾、行かないとダメかなぁ。佑は塾に行っとんにか?」
「行けばいいってわけじゃないけどなぁ」
「でも…………」

 美咲は何かを言いたげにしていた。
「佑は、東京の塾にも行ってきたんでしょ?」
「え、あぁ……うん」
「彩夏とも会ったんでしょ? あっちで」

 そこで彩夏の名前が出てくるとは思わなかった。たしかに僕は美咲に彩夏が乗る新幹線の時間を聞いたけれど。

「一緒の新幹線だったんでしょ?」
「行きだけな」
「見られたっぽいよ? 『富山駅で二人でおって新幹線の改札口に入っていった』ってさ」
「誰がそんなことを……」
「私は絵理沙から聞いた。『あの二人ってつきあってるの?』とか言われてるみたいだけど」

 誰がそんなところを見ていたというのか、僕はがっくりと肩を落とした。いや、何もうしろめたいことはない。

 ただ、何もないのに噂をされているっていうのは気分のよいものではなかった。
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