見えない明日に揺れる僕たちは

多田莉都

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第6章

ダンスイベント 5

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 昼休みに教室で蒼真と話した。

「律樹に話したらさ、この学校の音響とか知ってるし、変わってないなら当日も手伝えるって」
「おお」

 律くんはこの中学を卒業している。中学のときも体育館でライブをやっていたはずだから、この学校の音響もわかるのだろう。

「なんかわかるかなぐらいで聞いたんだけど、すっげー乗り気だった」
「マジで? 超嬉しいな、律くん、さすが」
「高校に行ってから覚えた音響とかを試したかったのもあるらしい」
「そうかぁ、上に兄弟がいるっていいなぁ……」

 僕が言うと蒼真は「そうか?」と首を傾けた。

「自分より先に何かを経験してる人が前にいるって羨ましいよ」
「あ、それ私もわかるわ、ガチでわかる」

 隣の机で寝てるのかと思っていたさくらが身体を起こし、僕たちの話に入ってきた。

「一番上ってだけで何でもやらされちゃうのはヤダよねー」
「さすが、さくらはわかってくれるよなぁ」

 さくらも妹はいても上の兄姉はいない。

「そういうもんかぁ?」
「蒼真はいつも前例がいるからわかんないんだよ」
「あのなぁ、いつもお下がりだった気持ちもわからないだろ」
「えー、いいじゃん。自分で買わんでも服がある程度、回ってくるんだし」

 そんなことを話していると教室のドアが開いた。入ってきたのは絵理沙だった。

「なに? なんか珍しい組み合わせで話してるね」

 絵理沙は僕たちに話しかけてきた。
 同じ小学校つながりではあるけれど、たしかにこの三人での組み合わせは珍しいかもしれない。なぜなら――、

「えー、美咲がいればこれでリレーメンバーだし」

 さくらが言った。
 そう、あと美咲がいればリレーメンバーだ。四人で話しているなら今までも何度かある。美咲がいないので珍しい組み合わせに思えるのかもしれない。
 蒼真が「いやいや」と左手を横に小さく振りながら突っ込む。

「いや、今年オマエ走っとらんやろ」
「仕方ないでしょ、騎馬戦で足捻っちゃったし。あのときはガチで焦ったんだよ?」
「リレ選なら気をつけろよなぁ」
「代わりに彩夏が走ってくれてなんとかなったからいいの」

 六月の体育大会で、さくらが怪我をしてリレーに出れなくなったとき、代わりに走ったのは彩夏だった。その彩夏を指名したのは美咲だった。その二人はいま教室にいない。

「さっき柴崎さんが美咲に声かけて出てくとこ見たなぁ」

 絵理沙が顎に左手を当てながら思い出したように言った。

「ダンスイベに誘うとかそんな感じじゃない?」

 さくらが言った。さくらは最近の美咲と彩夏の関係を知らないようだ。蒼真も同じらしく、

「あれ? 美咲は参加しねぇの? 普通に出るがんだと思ってた」

 そんなことを言った。

「二学期になってからあんまり一緒にいない気もするけど。美咲もなんかいつもと違うし」

 僕をチラッと見ながら絵理沙は言った。そういえば、夏休みの後半に美咲と会ったとき、絵理沙と買い物をしていたと言っていた。絵理沙も噂程度は知っているのかもしれない。敢えて聞いたりはしないけれど。
 小学校から何度かクラスが一緒になっている絵理沙だが、実はあんまり考えていることが読めない。

「そうかぁ? まだ二学期始まったばっかりだろ。第一、いま話してんだろ?」

 空気を読まない蒼真の言葉に僕は笑みがこぼれる。そう、二学期は始まったばかりだ。

 そして、いま彩夏と美咲は何かを話しているはずだ。彩夏と美咲がうまくいけばいいんだけどな、と僕は窓の向こうを見た。午後の日差しが強そうだった。何もできない自分が少し歯がゆかった。
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