見えない明日に揺れる僕たちは

多田莉都

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第7章

二学期の中間テスト 2

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 2日目のテストが終わった。基本的にもう部活動のない3年生は放課後となった。
 文化祭の準備がいよいよ進み始めることになり、この日は決起会というほど大げさでもないけれど、ファミレスで参加者で昼ご飯を食べに行った。

 蒼真と話していた僕のテーブルの横を彩夏が通りかかった。ドリンクバーのおかわりを取ってきたところだったらしい。

「今回は、なんだかすっきりした顔してるね。期末のときまでと違う感じ」

 その言葉に僕は「そうか?」と言いつつ、自分でもその感覚はあることを自覚していた。

「いまの実力分はできたなって感じがしてる。社会はマジで冴えてた」
「マジで? 私、歴史の並び替え間違えちゃったよ。国際連盟脱退と日中戦争んとこ」
「そこは大丈夫だった」
「いいなぁ。今回はちょっとヤバイかなぁ」

 珍しく自信なさげに彩夏は言った。

「それでもオレよりはすげーんだろ」

 と蒼真が自虐的な発言をしたので「さすがに負けないと思う」と笑った。場が和んだのでよかったが、実際に彩夏は一学期のときと少し様子が違うようにも見えた。単純に言えば、疲れているような感じがした。文化祭に向けて、彩夏はダンスの振りを考えたり、みんなへの指導もしている。衣装の打ち合わせや音響の打ち合わせにも参加していて、負担は相当なもののはずだ。僕以上にいろいろと抱えていたはずだ。
 
 それを指摘してもきっと彩夏は「そんなことないよ」とでも言うのだろうと思ったので僕は言わなかった。
 そして一週間後、テストの結果が発表された。

*
 掲示板の前が騒がしくなる放課後、僕はなんとなく間を空けて教室を出た。
 テストの結果が貼りだされているのはわかっているが、それを見るのが少しだけ怖いような気がした。結果には自信を持っているが、怖いような気がした。
 人だかりができている掲示板の前へと歩いていくと、美咲が僕を見ているのがわかった。喜びも怒りも悲しみもないような表情だった。なぜそんな顔をしている? それを問うにはまだ距離が少し遠かった。

「佑くん、すごい!」

 美咲の隣にいた絵理沙が僕が来たことに気づくと嬉々とした表情で叫んだ。

「1位だよ!」

 僕が掲示板を見るよりも先に絵理沙が言った。
 順位を聞いてしまったが、僕は自分の目でも確かめるために掲示板を見た。

 1 月島 佑 466点
 2 柴崎 彩夏 453点
 3 藤代 秀明 446点

 今回のテストは難しかった。5教科平均が90点を超えたことで僕はある程度、満足することができていた。
 そして、結果は1位だった。3年生になってから初の定期テストで1位の座を獲得することができた。

 しかし、一学期のときとは別の理由で、僕は眩暈がしそうだった。あのときは9位という結果に愕然としたからだった。しかし、いまは眩暈の理由が違っていた。

「佑」

 すぐ隣で美咲が小さな声で僕の名前を呼んだ。僕はちらりと美咲を見る。

「1位、オメデトウ」
「全く心がこもってないな」

 恐ろしいほどに美咲の言葉は棒読みだった。その理由も僕はわかっていた。

「佑が1位になったのはいいけど……彩夏はどうなるんだろう」

 前を向いたまま美咲は言った。
 僕は何も言えなかった。
 
 彩夏は、ダンスでメジャーデビューすることを夢見ていた。芸能界を反対する母親にダンスを辞めさせられた上、この学校に転校させられた。「成績で1位を取り続けること」がダンスを続ける条件だった。そして、実際に彩夏は一学期の2つのテストで彩夏は学年1位となった。二学期以降も女優・長瀬真衣でもある彼女の母には勉強とダンスを両立できることを見せる必要があった。
 しかし、いま中間テストでは僕が1位となり、彩夏は2位となった。

「彩夏、どこ行ったのかな」

 美咲の声に僕は何を言えばよいのかわからなかった。
 ざわざわとしている周囲の声がどこか他人事のように思えてきた。
 1位を取り返して嬉しいはずなのに、彩夏の夢を僕が止めてしまったんだろうかと思うと、僕は後ろめたさでいっぱいだった。

 その日の夜、いつもダンスの練習をしている地区センターの前に彩夏は現れなかった。
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