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2××3.4.17.
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「部活見学に誘った!?」
ケータ達にスマホを見せ、自身の経緯を省き、鈴音を連れてきた事情を説明した。
「星さんって、“疳”が視えるの?」
未来の問いに、志保がハッとした様子を見せたため、勢いだったのかと周囲は察した。
「この部活自体特殊すぎるから、一般人が入部するってかなり難しいと思うけど…」
「いやッ! そんなことよりも━━」
ナベショーが話しを強制的に中断させ、一番気になっていることに触れ始める。
「なんで小賀坂さんがびしょ濡れなんだで!?
そこんとこ詳しく━━」
「ナベショー」
ここに来て、初めて声を出した直樹。
「しつこいと女子に嫌われるよ」
穏やかにそう言うと、まだ何か言いたげなナベショーに、 未来が軽く肩を叩く。
無言の彼や周りを見渡し、空気を悟ったのか、気持ちを抑える。
「━━それと、小賀坂さん」
直樹は、立ち尽くす志保に声をかける。
「重荷を背負うのも程々にね」
彼に対し、スマホを持ったまま、両手を合わせて軽く会釈する。
「━━でもすごいな。
初日でもう仲良くなったんだ」
そう言うと、志保は、照れながらにやけた口元をスマホで隠した。
「はいッ! それじゃ、気を取り直して、特設帰宅部のミーティング始めますかッ」
未来が手を叩き、ナベショーにペンを持たせると、戸惑いながらもホワイトボードに文字を記していく。
志保も開いている席に着き、荷物をテーブルの下に置いた。
“ミーティング”の下に活動内容を書き終え、ボードに手を当てる。
「はいッ、今月の“害虫駆除”の件数8件。
そのうちのほとんどは、ケータが怪我したり、ドジったりして、ボロボロになってきましたッ!」
「ケータらしいねェ」
「いいよッ!? 別にそんなこと言わなくったって!?」
イジられたことによって場は和んだが、本人はふてくされ出し、ぶつぶつ言い始める。
「だってしょうがないじゃんよ。
穏便に済ませようとしてんのに、話しかけた途端にぶん殴られるし、相手を捕まえようとしたら、取り逃がしちゃうし━━」
「そういえば、未来君、生徒会行かなくていいの?」
アレ? オレ、スルーですか!?
直樹によって強引に話題を変えられてしまい、流されてしまう。
「大丈夫ッ、今日はなんかめんどくさい内容だったはずだから」
そして、それでいいのか!? 未来君ッ!?
ガッツポーズをする未来に、動揺するケータだった。
「━━それで、今日は誰が福島行くの?」
ケータは不服だったが、改めて話を戻してみる。
「今日はバイトあっから無理」
「いや、俺だってあるし」
「良いべ~、どうせ今月4日しかバイト無ェんだべ?」
「いや、だからだろ。
それに、人の心の傷をつつくようなこと言うなや」
乗り気のないナベショーに、ケータは呆れてしまう。
「じゃあ、オレが代わりに行ってあげようか?」
そこで未来が軽く挙手し、名乗り出た。
「いや、未来君は駄目でしょ。
“副会長”の立場をオレ等のせいで危うくさせるわけにはいかないし。
つか、未来君、“駆除”できなくね?」
「ハッ! 未来君をなめんなよッ!
未来君がその気になれば、お前よりも状況をすぐに判断してッ、頭脳プレイでッ、秘めt●Ⅹ▲■━━、ッしゃあ! 噛んじまったッ!!」
「━━大丈夫、お前の言いたいことは、だいたい分かったから」
感情的になったナベショーを、ケータが落ち着いて眺める。
「よしッ」
すると、いきなり直樹が口を開いた。
「ケータ君で行こうッ」
「ちょっと待てッ!?」
ケータが強引な決定を瞬時に止めるが、直樹は無表情のまま引こうとしない。
「ケータ君で行こうッ」
「いやッ、だから━━」
「ケータ君で行こうッ」
「あのッ━━━━━━」
「ケータ君で行こうッ」
「…はい」
折れた━━。
畜生━━━!
テーブルに顔を伏せると、ナベショーが身を乗り出し、彼の肩にそっと手を置いた。
「大丈夫だって。
バイト終わったら、多分すぐに行くと思うから」
「“多分”ッ!?」
追い打ちをかけるナベショーに、志保は、こらえきれず吹いてしまう。
「━━仕方ない、みんなで行こうか」
盛り上がっている中、直樹がやれやれとそう呟くと、場の空気が止まった。
…はい?
━━陽は沈んで暗くなり、時計の針が20時を指す。
春の夜は気まぐれで、冷たい風が肌を刺した。
1日の労働に疲弊した者達が、酒や娯楽を求めて駅から散っていく。
そんな中、特設帰宅部は、福島駅西口に集合していた。
「━━それでは、“害虫駆除”しに来たわけですが、気を引き締めて行きましょう~」
直樹は、覇気のない棒読みで部員に声かけをする。
昼間と違い、全身黒の印象が強く、マスクを着用し、薄いタートルネックに袖を少し上げ、 革バンドの時計が左腕に映えている。
細めのスキニーに、マーティンブーツを履いて立っていた。
「お~ッ!」
未来が軽い返事をしながらガッツポーズをする。
彼はカーキのミリタリージャケットを着て、ファスナーを胸元まで下げている。
下は、暗めのデニムに、ブラウンのローカットブーツを履いていた。
隣に並ぶ志保は、ロングカーディガンに紺のシャツ。
デニムにスニーカー姿で、未来につられて控えめに片腕を上げて見せる。
それよりも、目の前のベンチに座ってる彼らが気になり、気まずくてならなかった。
━━結局、俺バイト休む羽目になったし。
━━オレ、バイト始めて一週間ちょいしか経ってねェのに。
どうやら強制的にサボる羽目になったらしい。
ケータは、赤と黒を強調した服装をしていた。
薄生地の黒いコットン帽子を深くかぶり、赤チェックシャツの上にファー付きダウンベスト。
左手に腕時計、細身のズボンに、ワインレッドのマウンテンブーツを履いている。
ナベショーは、 赤パーカーに黒の V ネック、ダボダボ感のある暗いカーキのカーゴパンツに、スニーカーを着用していた。
二人は、重い空気を漂わせ、揃って深い溜息を吐く。
「それじゃあ、2組に分かれるよ」
直樹は、そんな二人を無視して話を進める。
一組目、直樹、未来、ナベショー、志保。
二組目、ケータ。
「よしッ! オッケィッ!!」
「うおィッ!!」
ケータは、理不尽な組み分けに異議を唱えた。
「なんだで?」
「おかしくね!? オレだけっておかしくね!?」
「おかしくねェで。
バランス良く分かれたべした」
「え"ッ!? 二組ってそういう━━!?」
ケータは、てっきり2:3で分かれると勘違いしてしまっていたようだ。
「せめて未来君と一緒にさせてッ!」
「何言ってんだで、未来君は、なっくんのサポートに決まってッペしたァ」
ケータが必死になってナベショーに訴えかける姿に、直樹は呆れてため息をこぼす。
「━━わかったケータ君、寂しい気持ちは分かったから。
じゃあ、こうしよう」
ケータ×志保ペア。
「ちょっと待てッ!?」
ケータは、再度異議を唱えた。
「なんだで? まさかお前、小賀坂さんを足手まといだとでもいうのかで!?」
「別にそういうわけじゃ━━」
「だったら良いべした」
さらに物申そうとしたが、横にいる志保が目に入り、気まずくなったため、喉の奥に止めた。
「それじゃよろしくね。
何かあったら、いつも通りすぐに行くから」
そう言って直樹達は、二人を残して二手に分かれたのだった。
とりあえずケータと志保は、線路に沿って歩き出した。
街灯の少ない夜道、所々に駐車している車を通り過ぎる中、沈黙に耐え切れず志保がスマホを見せてきた。
『私って足手まとい?』
「ッ! いや、そんなこと思ってないよ」
ケータは、焦って誤解を解こうとした途端、志保の目に明かりが消えた。
「ただ、俺のそばにいると━━ッ」
次の瞬間、後頭部に激痛が走り、景色が一気に暗転してしまったのだった。
ケータ達にスマホを見せ、自身の経緯を省き、鈴音を連れてきた事情を説明した。
「星さんって、“疳”が視えるの?」
未来の問いに、志保がハッとした様子を見せたため、勢いだったのかと周囲は察した。
「この部活自体特殊すぎるから、一般人が入部するってかなり難しいと思うけど…」
「いやッ! そんなことよりも━━」
ナベショーが話しを強制的に中断させ、一番気になっていることに触れ始める。
「なんで小賀坂さんがびしょ濡れなんだで!?
そこんとこ詳しく━━」
「ナベショー」
ここに来て、初めて声を出した直樹。
「しつこいと女子に嫌われるよ」
穏やかにそう言うと、まだ何か言いたげなナベショーに、 未来が軽く肩を叩く。
無言の彼や周りを見渡し、空気を悟ったのか、気持ちを抑える。
「━━それと、小賀坂さん」
直樹は、立ち尽くす志保に声をかける。
「重荷を背負うのも程々にね」
彼に対し、スマホを持ったまま、両手を合わせて軽く会釈する。
「━━でもすごいな。
初日でもう仲良くなったんだ」
そう言うと、志保は、照れながらにやけた口元をスマホで隠した。
「はいッ! それじゃ、気を取り直して、特設帰宅部のミーティング始めますかッ」
未来が手を叩き、ナベショーにペンを持たせると、戸惑いながらもホワイトボードに文字を記していく。
志保も開いている席に着き、荷物をテーブルの下に置いた。
“ミーティング”の下に活動内容を書き終え、ボードに手を当てる。
「はいッ、今月の“害虫駆除”の件数8件。
そのうちのほとんどは、ケータが怪我したり、ドジったりして、ボロボロになってきましたッ!」
「ケータらしいねェ」
「いいよッ!? 別にそんなこと言わなくったって!?」
イジられたことによって場は和んだが、本人はふてくされ出し、ぶつぶつ言い始める。
「だってしょうがないじゃんよ。
穏便に済ませようとしてんのに、話しかけた途端にぶん殴られるし、相手を捕まえようとしたら、取り逃がしちゃうし━━」
「そういえば、未来君、生徒会行かなくていいの?」
アレ? オレ、スルーですか!?
直樹によって強引に話題を変えられてしまい、流されてしまう。
「大丈夫ッ、今日はなんかめんどくさい内容だったはずだから」
そして、それでいいのか!? 未来君ッ!?
ガッツポーズをする未来に、動揺するケータだった。
「━━それで、今日は誰が福島行くの?」
ケータは不服だったが、改めて話を戻してみる。
「今日はバイトあっから無理」
「いや、俺だってあるし」
「良いべ~、どうせ今月4日しかバイト無ェんだべ?」
「いや、だからだろ。
それに、人の心の傷をつつくようなこと言うなや」
乗り気のないナベショーに、ケータは呆れてしまう。
「じゃあ、オレが代わりに行ってあげようか?」
そこで未来が軽く挙手し、名乗り出た。
「いや、未来君は駄目でしょ。
“副会長”の立場をオレ等のせいで危うくさせるわけにはいかないし。
つか、未来君、“駆除”できなくね?」
「ハッ! 未来君をなめんなよッ!
未来君がその気になれば、お前よりも状況をすぐに判断してッ、頭脳プレイでッ、秘めt●Ⅹ▲■━━、ッしゃあ! 噛んじまったッ!!」
「━━大丈夫、お前の言いたいことは、だいたい分かったから」
感情的になったナベショーを、ケータが落ち着いて眺める。
「よしッ」
すると、いきなり直樹が口を開いた。
「ケータ君で行こうッ」
「ちょっと待てッ!?」
ケータが強引な決定を瞬時に止めるが、直樹は無表情のまま引こうとしない。
「ケータ君で行こうッ」
「いやッ、だから━━」
「ケータ君で行こうッ」
「あのッ━━━━━━」
「ケータ君で行こうッ」
「…はい」
折れた━━。
畜生━━━!
テーブルに顔を伏せると、ナベショーが身を乗り出し、彼の肩にそっと手を置いた。
「大丈夫だって。
バイト終わったら、多分すぐに行くと思うから」
「“多分”ッ!?」
追い打ちをかけるナベショーに、志保は、こらえきれず吹いてしまう。
「━━仕方ない、みんなで行こうか」
盛り上がっている中、直樹がやれやれとそう呟くと、場の空気が止まった。
…はい?
━━陽は沈んで暗くなり、時計の針が20時を指す。
春の夜は気まぐれで、冷たい風が肌を刺した。
1日の労働に疲弊した者達が、酒や娯楽を求めて駅から散っていく。
そんな中、特設帰宅部は、福島駅西口に集合していた。
「━━それでは、“害虫駆除”しに来たわけですが、気を引き締めて行きましょう~」
直樹は、覇気のない棒読みで部員に声かけをする。
昼間と違い、全身黒の印象が強く、マスクを着用し、薄いタートルネックに袖を少し上げ、 革バンドの時計が左腕に映えている。
細めのスキニーに、マーティンブーツを履いて立っていた。
「お~ッ!」
未来が軽い返事をしながらガッツポーズをする。
彼はカーキのミリタリージャケットを着て、ファスナーを胸元まで下げている。
下は、暗めのデニムに、ブラウンのローカットブーツを履いていた。
隣に並ぶ志保は、ロングカーディガンに紺のシャツ。
デニムにスニーカー姿で、未来につられて控えめに片腕を上げて見せる。
それよりも、目の前のベンチに座ってる彼らが気になり、気まずくてならなかった。
━━結局、俺バイト休む羽目になったし。
━━オレ、バイト始めて一週間ちょいしか経ってねェのに。
どうやら強制的にサボる羽目になったらしい。
ケータは、赤と黒を強調した服装をしていた。
薄生地の黒いコットン帽子を深くかぶり、赤チェックシャツの上にファー付きダウンベスト。
左手に腕時計、細身のズボンに、ワインレッドのマウンテンブーツを履いている。
ナベショーは、 赤パーカーに黒の V ネック、ダボダボ感のある暗いカーキのカーゴパンツに、スニーカーを着用していた。
二人は、重い空気を漂わせ、揃って深い溜息を吐く。
「それじゃあ、2組に分かれるよ」
直樹は、そんな二人を無視して話を進める。
一組目、直樹、未来、ナベショー、志保。
二組目、ケータ。
「よしッ! オッケィッ!!」
「うおィッ!!」
ケータは、理不尽な組み分けに異議を唱えた。
「なんだで?」
「おかしくね!? オレだけっておかしくね!?」
「おかしくねェで。
バランス良く分かれたべした」
「え"ッ!? 二組ってそういう━━!?」
ケータは、てっきり2:3で分かれると勘違いしてしまっていたようだ。
「せめて未来君と一緒にさせてッ!」
「何言ってんだで、未来君は、なっくんのサポートに決まってッペしたァ」
ケータが必死になってナベショーに訴えかける姿に、直樹は呆れてため息をこぼす。
「━━わかったケータ君、寂しい気持ちは分かったから。
じゃあ、こうしよう」
ケータ×志保ペア。
「ちょっと待てッ!?」
ケータは、再度異議を唱えた。
「なんだで? まさかお前、小賀坂さんを足手まといだとでもいうのかで!?」
「別にそういうわけじゃ━━」
「だったら良いべした」
さらに物申そうとしたが、横にいる志保が目に入り、気まずくなったため、喉の奥に止めた。
「それじゃよろしくね。
何かあったら、いつも通りすぐに行くから」
そう言って直樹達は、二人を残して二手に分かれたのだった。
とりあえずケータと志保は、線路に沿って歩き出した。
街灯の少ない夜道、所々に駐車している車を通り過ぎる中、沈黙に耐え切れず志保がスマホを見せてきた。
『私って足手まとい?』
「ッ! いや、そんなこと思ってないよ」
ケータは、焦って誤解を解こうとした途端、志保の目に明かりが消えた。
「ただ、俺のそばにいると━━ッ」
次の瞬間、後頭部に激痛が走り、景色が一気に暗転してしまったのだった。
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