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★デビュタント〜準備編〜★
家族との朝食②
しおりを挟むあれから毎日トレーニングを続け、セイラとルカは筋肉痛になっていた。
そのせいか心なしかセイラのいつもの奇天烈な行動が抑えられた気がするのはなんとも皮肉なものだ。
そんなセイラにルリから今日の予定が告げられた。
「お嬢様、本日は先日依頼されましたデビュタント用のドレスが完成致しましたので、ルッスーリア様がドレスの最終確認をしていただきたいそうです。
朝食を召し上がりましたら、ご準備を致しますので、すぐにお部屋に戻られるようにしてください。」
「あら。もうできあがったのね!!
わかったわ。どんなドレスが出来上がったのか楽しみだわ!!」
セイラは機嫌が良くなりルンルン気分で鼻歌を口ずさみながら食堂へ向かった。
エトワール家は最近ベルナールが仕事で忙しかったり、アリスが社交のため慌ただしくしていたたり、クロエが嫁入りの準備のため不在だったりしたため家族全員が揃うのは久しぶりだ。
皆、今回もセイラは遅れてくるだろうと思い、優雅に各々コーヒーを飲みながら待っていた。
しかし、今回は珍しく遅れることなく朝食に現れたセイラに皆目を見開いて驚いていた。
クロエにいたっては、驚きすぎてコーヒーカップを落としそうになっていたくらいだ。
そんな中でも、やはりさすが辺境伯領主。すぐに落ち着きを取り戻した。
「おはよう。セイラ。
今日は随分と早いね。
何か良いことでもあったのかな??」
微笑みをたえながら、ベルナールがセイラに優しく問いかける。
「おはようございます!!
実は、最近ルリの地獄のシェイプアップトレーニングのせいで気分が沈んでいたのだけれど…この後ルッスーリアがデビュタント用ドレスを見せに来てくれるらしいのよ!!」
「ルッスーリアというと…アラフランセーズのデザイナーだったね。
たしか…ジャケットの襟にあのクジャークの羽を使っていたという…??」
「ええ!そうよ!!
あのクジャークの羽をふんだんに使っていたわ。
ドレスを作るのなんて面倒と思っていたけれど…ルッスーリアとはとっても話が合うし、何よりセンスがいいのよ!!
今ではドレスの出来上がりが楽しみなくらい!!」
「そ…そうか。セイラが楽しみにしているようで何よりだよ。」
ベルナールはセイラの勢いとクジャークの羽のジャケットというパワーワードに引き気味になっていた。
そんな中、アリスが口元を引き攣らせながら問いかけた。
「…ねえ。セイラちゃん。セイラちゃんはいったいどんなドレスをオーダーしたのかしら??」
「それは出来てからのお楽しみですわ。」
セイラは目を輝かせながら答えた。
皆は目を見合わせた。
皆きっと思っていることは同じだろう。
こういうときのセイラはろくなことをしでかさない。
むしろ、なにもないわけがないのだ。
「セイラ。たしか今日、完成したドレスを見せに来てくれるのよね??」
落ち着きを取り戻したクロエが静かにセイラに問いかける。
「はい。お姉様。この後ルッスーリアがドレスを見せに来てくれる予定ですわ。」
「そう。」
アリスとクロエはお互い見合わせながら、頷いた。
「セイラちゃん。ドレスの確認なのだけど、この後私とクロエちゃんもご一緒してもよろしいかしら??」
「お母様とお姉様がですか??
できれば当日のお楽しみにしたかったのですが…」
そう歯切れの悪い返事をするセイラ。
ルリとルカが一緒にいたため、それほど奇抜なドレスは出来上がらないとは思うが、何しろ、あのクジャークの羽をふんだんに使ったジャケットのデザイナーとセンス最悪のセイラの組み合わせだ。
万が一ということもある。
もし、とんでもないものだった場合、今ならまだ修正が効く。
そのため、なんとしてでも2人はドレスを見ておく必要があった。
「あら。ドレスが出来上がったらヘアスタイルやメイクも考えないとでしょう??
今から一緒に3人で考えるのも楽しいわよ。
そのためには、どんなドレスか確認しないといけないわ。」
咄嗟に考えたクロエの最もらしい意見に単純なセイラは「たしかにそれもそうね…」と納得し、2人が同席することを認めた。
「それでは、朝食の後、ルッスーリアが来ますので私のお部屋までいらしてくださいね!!」
そう言うとセイラは来た時と同じルンルン気分で戻って行った。
ルリとルカも少し気まずそうな顔をしながらセイラに続いて行った。
セイラがいなくなったあと、残った3人で家族会議がされていた。
「お父様とお母様はセイラがどのようなドレスをオーダーされたと思います??」
「そうだね…クジャークの羽を全身に纏ったドレスだったり…??」
ベルナールの答えにアリスとクロエはカラフルな羽のもふもふドレスを来たセイラを想像した。
「ありえる…。あの子ならやりかねない…。」とさらに不安が募った。
「お母様はどう思われます??」
「デビュタントということで白いドレスにするようあらかじめ伝えていましたし、おそらく色は白でしょう。
ただ、セイラちゃんのことだから…どこかに魔獣の何かを使ってそうよね…。」
アリスの答えにベルナールとクロエは「間違いない。あの子なら使いかねない。」と妙に納得してしまった。
「…今回のデビュタントはセイラの婚約者候補探しをかねておりますよね??
そんな装備を固めて何しに行くつもりなのでしょう??
婚約者と魔獣を間違えていませんよね??
婚約者といって魔獣を連れてきたりしませんよね??
私…魔獣が義弟だなんて絶対に嫌ですわ!!」
そう言い青い顔をするクロエに対し、ベルナールとアリスも「私達だって義息子が魔獣なんて嫌だ(よ)」と青褪めた。
そうならないためにも、なんとしてでもちゃんとしたまともなドレスを着させようと3人は密かに決心した。
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