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★デビュタント〜準備編〜★
ルッスーリアの訪問
しおりを挟むあの朝食の後にそんな3人での家族会議があったとはいざ知らず、部屋でルカに身支度をしてもらっていたセイラ。
コンコンコンッ
「セイラお嬢様。奥様とクロエお嬢様がいらっしゃいました。」
「お通ししてちょうだい。」
ガチャッ
「失礼致しますわ。
あら、セイラちゃんまだ身支度中でしたのね。
出直した方がよろしいかしら??」
「いえ!!もうすぐ終わると思いますのでこのままお待ちいただいてかまいませんわ。」
「でしたらお言葉に甘えてこちらでお待ちさせていただきますわ。
ですが、いつも言っているけれど今回は私達だったからよかったものの身支度中に人を入れてはいけませんよ。
何があるか分からないのだから十分に用心なさい。」
クロエお姉様は凛とした美人顔のせいか、一見ツンケンした態度に見られやすい。
が、その実はセイラのことを心配し可愛がってくれているのが分かるため、セイラはクロエお姉様が大好きだ。
そんな大好きなクロエお姉様がもうすぐ結婚のため家を出てしまうというのが、セイラは許せないのだ。
シュンっと大人しくなってしまったセイラに焦り、クロエは「少し厳しく言いすぎたかしら….!?」と狼狽えていた。
ギャップ萌えというのか、その姿がなんとも愛らしい。
「ふふっ。クロエちゃん。落ち着いてちょうだい。
セイラちゃんは本当にクロエちゃんが大好きなのねえ。
姉妹仲が良いのはとってもいいことだわ。」
なんて、優雅にお茶を飲みながら微笑ましげに2人を見守るアリス。
そんなとき、
コンコンコンッ
「ご歓談中失礼致します。アラフランセーズよりデザイナーのルッスーリア様がいらっしゃいました。」
「あら!早いわね!!
通してちょうだい!!」
セイラが楽しみで仕方ない!と今にも飛び出していってしまいそうな勢いをなんとか双子が一生懸命止めていた。
アリスとクロエはこの男が大事なセイラに対し毒となるか薬となるか見極めてやろうと一層向ける視線を強くした。
そして、入ってきたルッスーリアを見てアリスとクロエだけでなく、ルリとルカまで目を見張った。
そんな皆にびくともせず、ルッスーリアは完璧ともとれる挨拶をした。
「失礼致します。
アラフランセーズより参りました。デザイナーのルッスーリアと申します。
この度は大事な御息女であらせられますセイラ様の晴れ舞台であるデビュタントでのドレスをお任せいただき大変光栄でございます。
セイラ様のご希望を取り入れつつ素晴らしいドレスが出来上がったと自負しております。
今一度ご確認いただければと思います。
また、皆様のご意見等ございましたら、ご遠慮なくお聞かせ願えればと思います。」
空気が固まる中、さすが辺境伯家の奥様。アリスが1番に正気に戻った。
「…ええ。ご丁寧にありがとう。
そころで…ルッスーリアでしたかしら??
そこについているものは、いったい…??」
「こちらでございますか??
こちらは前回セイラお嬢様にご教授いただきました、魔獣のホーリーバタフライ(きらきら輝く大きな蝶)を蝶ネクタイに仕立ててみました。
お嬢様は髪留めにとのことでしたが、今回は男性でも使えるように蝶ネクタイとして誂えてみました。
いかがでしょうか??とてもキラキラ輝いており、むしろ宝石よりも眩さを放っているかと思います。」
ルリはルカと、アリスはクロエとアイコンタクトをした。
そして、どちらともなくおもむろに首を振った。
「「「「絶対ない(わ)(です)」」」」
…と。
そのセリフにショックを受けるセイラとルッスーリア。
「どうしてでしょうか??どこがいけないのでしょうか??
とても綺麗かと思いますが。」
ルッスーリアの訴えるような目になんと答えたら良いか4人は再度視線を合わせた。
そして代表的するようにアリスは言った。
「人によっては綺麗なのかもしれませんが、形が魔獣のホーリーバタフライそのものですわよね。セイラちゃんみたいな魔獣好きの変態でなければ倦厭されるデザインですわ。
それにただ輝いていれば良いというものではないわ。そちらは輝いてはいてもギラギラとした下品な輝きだわ。
そんなんでは、宝石の価値のわからないセイラちゃんくらいにしか売れないわよ。
サイズも魔獣の大きさのまま使っているせいで合っていないわ。
気にしないのはセンスのないセイラちゃんくらいね。」
アリスの歯に布着せぬはっきりとした物言いに他の3人は大きく頷いて肯定している。
「…ねえ、どうして私今こんなにさんざんディスられたのかしら!!
私全く関係ないわよね!?」
「関係あるわよね??
だって、ホーリーバタフライ…セイラちゃんが教えたのでしょう??」
お母様の有無を言わさぬ黒い笑みを向けられ、セイラは震え上がった。
「…はい。申し訳ありませんでした。」
シュンっとして謝罪するセイラに対し、寂しげにそっとホーリーバタフライの蝶ネクタイを外すルッスーリアであった。
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