朝のひだまりの中、君の隣で

有森崎あたる

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お詫びは、休日のある朝突然に ~結局、俺は逆らえない~

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※「さよならは、真夜中の車の助手席で」の後日談です。



予定も何も決めていない休日。

俺の部屋には、昨日から泊まりにきているあいつ。

アラームをかけずに、ゆっくりと朝寝坊。

そんな穏やかで静かな休日の始まりは、キッチンに立つのが俺のルーティン。



俺が作った野菜たっぷりのミネストローネスープ。

こんがり焼いたベーコンとスクランブルエッグに、チーズをたっぷりのせて焼いたトースト。

大好きなコーヒーショップで買った俺のお気に入りのレギュラーコーヒーをドリップする。

立ち込めるコーヒーの芳醇なアロマの香りに、俺は思わず鼻歌を歌う。



リビングで、2人で食べるための遅めのブランチ。

今日は、一昨日買ったばかりの真新しいテーブルクロスをガラスのテーブルに敷いてみる。

俺は、そのテーブルクロスの上に食事を並べると、ベッドでゴロゴロ寝転んでるあいつを呼ぶ。

「飯、できたぞぉーーー!」

コーヒーサーバーから、並々と漆黒のコーヒーをマグカップに注ぐ。

おいしい食事と、たわいもないTV番組でも見ながら、恋人と過ごす休日。

スカイブルーとダークブルーのお揃いのマグカップを両手に持ち、俺がそれをテーブルに置いた瞬間、リビングに来たあいつが口を開いた。

「あのさ、聞きたいことあるんだけど」

不意に、突然、尋ねてきたあいつの表情は、めっちゃ不満げ。

「え?」

愛くるしい表情からは程遠い、ムスッとした、しかめっ面。

せっかくの平穏な休日が…と、朝からガラガラと音を立てて崩れてゆく…。


(え?俺、なんか?ヤラかした?)

コーヒーを飲もうと思ったマグカップを片手に、俺の脳内がフルマックスで記憶を稼働させる。

チッチッチッ…

(え?昨日の夜の嫌がるあいつを縛ったことか?

え?え?それとも痛がるあいつの乳首をつねったことか?

え?え?え?ま…!まさかっ!!!無理矢理!5ラウンドに突入したことか?!!)

「覚えてるよね???まだ!」

プクッとほっぺを膨らませて、あいつは俺を睨みつけてる。

も、その怒った顔も愛くるしくて、俺は思わず、デレッてしまう。

(か…可愛い…)

「ちょっとここに座って!!!」

と、あいつがバンバンバンッと、リビングに敷かれた毛並みの長いカーペットを叩く。

チョコンと座るあいつの隣に、俺もストンと腰を降ろし、あぐらを組む。

「で?…な…に…かな?」

俺は、刺激しないように聞いてみる。

「わからない???!!!」

腕組みしながら、俺の顔をじっと見つめるあいつ。

普段は、物静かで優しいあいつなのに、変に我慢強くなったり強情になったりする。まあ、それも含めて俺は好きになったんだが…。

(だが、この怒りっぷりは、どうしたんだ???昨晩のセックスがそんなイヤだったのか???)

「ご…ごめん…つい、調子に乗っちゃって…ハハ…」

俺は、両手を合わせて謝りながら、

「悪いっ!!!もう二度とやらないから!!!」

「当たり前だよ!!!寒かったんだから!!!」

(…え?さむ…い???)

プンスカ!怒ったままのあいつがまくしたてる。

「そうだよ!暗くて寒くて!あんな誰もいない駐車場に置き去りにされて!!!」

「え?」

俺は、あいつの言葉をよ~~~く噛みしめながら、記憶を呼び起こし、頭の中で整理する。

「……」

俺は、恐る恐る聞いてみた。

「あのぉ…さ…もしかして?酔っ払ったお前を迎えに行ったあの夜のこと?」

すると、あいつは堰を切ったように喋り出す。

「そうだよ!僕、ほんと寒かったんだから!地面は冷たいし!周りは真っ暗だし!そこがどこなのかも知らないし!どう帰ったらいいのかもわかんないし!」

「いや、だからぁー!ちゃんと大通りで待ってたじゃん、俺、それにもう終わったことだよ?俺も謝ったし、お前も…」

「自分は車の中にいたくせに!それに待つくらいなら、僕んとこまでもっと早く来てよ!」

「いやいや…お前がさ、追いかけてくるかなぁ~?って…」

「ほんと!1人ぼっちにされて、僕どうしようかと…」

と、顔を赤らめながら、うつむきだし、あいつの肩が、フルフルと震え出した。

俺は、慌てて、

「ごめん!ごめん!!!もう1人にしないから!機嫌直して!ほら料理も冷めるよ」

あいつの震える肩を抱きしめて、

「ね、今日は休みだし、この後2人でどこかデートでもしよう!ね?」

すると、震えた肩がピタリと止まり、下を向いたままのあいつがボソッと呟いた。

「行きたいとこがある」

「え?」

「デートしてくれるんでしょ???」

振り上げた顔からは、お願いと言わんばかりに目を潤ませていた。

「ああ…そ、そう…デート行きたいとこ?あるの?」

というと、さらにその目を輝かせて、あいつはバッ!!!と俺の目の前に、とある情報誌を出してきた。

「実はねー!すごく大きなレモン農園があってさ!一面レモン畑が広がってて!僕、レモンが実ってる木ってまだ見たことなくて!」

「レ…レモンの…木???」

(え?レモン?あのレモン?果物の?酸っぱい?レモン??レモン好きなのは知ってるけど…レモンしかないんだよね?山奥だよね?遠いよね???)

あいつは、うれしそうに声を弾ませながら、続ける。

「なんかこの前、金賞受賞した最高級のレモンがあるみたいでさ、その農園で搾りたてのレモンスカッシュが飲めるみたいなんだよ!最高級だよぉー!!!」

(え?せっかくの休みだから、俺ほんとはお前と一日中イチャイチャしたいんだけど…だからゴムも1箱新しく買ってきてるんだけど…)

「あと!レモンの収穫体験とかできるんだって!」

と、情報誌のページに乗っている地図を、バァーーーンと俺の目の前に突き出すと、

「車で片道2時間半」

「へ?…2…2時間…半??????」

力なさげに声を出す俺を、あいつはジトッと見つめると、

「ほんと、1人でさみしかったんだから」

「……」

「連れてってくれるよね???デートしてくれるんだよね???」

(そ…それ?デート???ただのお前の要望じゃん…!!!)

「いいんでしょ?」

と、しっぽを振っておねだりするワンコのような目つきで縋るあいつに、俺は拒むことなどできるはずもなく!!!

「はい…」

肩を落として返事した。

「やったぁーーー!!!」

目を輝かせ、満面の笑みを見せて喜ぶあいつ…。

(…うっ…次からは、す…すぐに迎えにいこ…)

「そしたら、早くご飯食べよ!ね!コーヒー冷めるよ」

(…き…君が話し始めたんだろ…とっくに冷めてるんですけど…!!!)


※片道2時間半・往復5時間の運転で、お疲れの俺はその夜は爆睡でした…ZZZ








The End.



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