ネイルの残像

有森崎あたる

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9. 誰?

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「さっきの、誰?」

オフィスの椅子の背もたれを前にしながら腕を回し、健人に詰めいるように隣に座り、興味津々に尋ねる近藤。

「えっとぉぉ…」

返す返事に戸惑う健人。

(なんて、説明しよう、お昼はバッチリ見られたもんなぁ)

ポリポリと頭をかく健人。

「お前、めっちゃ慌ててたけど…知り合い?」

「ええ、まあ、そんなとこっす…」

「ふぅ~ん、友達?仕事関係?この辺で働いてんの?どこで知り合ったやつ?」

近藤が矢継ぎ早に質問してくる。

「す、少し前に、し、知り合って…そ、そのぉ…友達?連絡先知らなかったもんで…そ、それでぇ…」

咄嗟にでた言葉に、健人の声もだんだんと力弱くなる。

(やべー、嘘ついた…いや、でも、ちょっと前に会った…ってのはほんとだし…で、でも、ライブんときとは言えねぇ…言ったら…)

「近藤さん、何そんな突っ込んでくるんすか?」

もう勘弁してほしい感の健人に近藤は、さらにグイグイ詰め寄り、

「だってさ、お前、一目散に駆け寄ってたじゃん、ダダダァーーーって、あん時、けっこう目立ってたぜ、周り、何だ何だって感じで見てたしな、お前、気づいてた?」

「そんな目立ってましたか?」

(カフェの中で走って人を捕まえに行ったら、そりゃ目立つよな…ハズィ…)

伏し目がちに、今更照れる健人に、

「まあ、会いたかったやつに会えたんなら、それはそれでよかったな」

ポンと肩に手を置くと、近藤は、あっさり自分のデスクに戻っていった。

(俺のこと、心配してくれる割には、深いとこまで踏み込んでこない…やっぱ近藤さん、そういうとこ尊敬するわ…)

歩く近藤の背中に、健人は心の中で手を合わせて謝った。

(恥ずかしくて、あんとき会ったこと、全部言えないで…ごめん、近藤さん)
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