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番外編
落ち葉降る6
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行きつけの洋食店『 Jolie Mante』で料理と雨上がりブレンドを楽しみ、後はマンションに帰るのみとなる。
「この道を歩くのも慣れてきたなぁ」
「『 Jolie Mante』くらいだったら良いけど、『雨上がり』だと結構遠いよね。自転車買った方がいいんじゃない?」
「ん~、別に歩けない距離でもないからなぁ近くに自転車買える店はないし」
アパートからこちらへ引っ越して2ヶ月。
『雨上がり珈琲店』はこの道をまっすぐ歩いて徒歩15分弱となるが、苦になるわけではないのでまだ購入は躊躇っていた。
「えっ?! 自転車屋なかったっけ?」
朝香の「自転車買える店はない」に亮輔は驚き
「えっ?! あったっけ?? 商店街にはないよ」
と、朝香も目を大きく開かせる。
「えっマジで?? 昔、この辺りで俊哉くんのお父さんに買ってもらった記憶あるけどなぁ……」
「えっそうなの??」
「うん、確か『長岡金物店』より何軒か離れたところの」
そう言いながら後ろを振り返り、朝香と一緒に後戻りしながら見回してみたのだが
「あぁ~そっかぁ……閉店したんだっけ」
シャッターが降りた古い店構えを前にして、亮輔は残念そうに表情を歪めた。
「そっかぁ……『雨上がり珈琲店』が出来る前には閉店してたんだね」
それならば朝香が知らないのも当然だ。
「うん……自転車買ってもらってさ、その奥にある小さな公園で練習してたんだよ」
亮輔の実家はこの地域でなくとも、上原家が古くから所有しているので親戚として遊びに来ていたから記憶に深く刻まれているのであろう。朝香も知らない裏道を入っていくと、言われた通りに公園へ辿り着いた。
「へぇ……こんなところに公園があったんだぁ」
遊具も少なくて特にこれといった特徴もないが、子どもが自転車を乗り回す程度のスペースくらいならある。感心しながら朝香が周囲を見回していると
「あっ、イチョウがあるよ! りょーくん」
街灯に照らされ黄色が際立っている一本の銀杏の木を見つけ、亮輔の顔をそちらへ向かせた。
「本当だ……しかも結構大きい」
これだけ存在感があるのに「自転車の練習場」としての記憶しかなかったらしく、亮輔も一緒になって驚いている。
「りょーくん地面見てみて! 黄色い絨毯みたいだよ! りょーくんが私を紅葉デートに誘う時に言ってくれたのと一緒!!」
朝香は足元を指差し、亮輔が紅葉デートプランを伝えるべく黄色で埋め尽くされてるイチョウの画像を見せてくれたのを思い出しながら声を上げてみせた。
「俺があーちゃんにプレゼンしたのは、もっと規模のデカいヤツなんだけど」
りょーくんはクスリと笑ったものの……
「確かに、子どもの頃の思い出がある公園へあーちゃんと来れたのは嬉しいかも。
ここのところだけ見ると、黄色い絨毯みたいで綺麗だし」
朝香の意見に同調し、ウンウンと頷いてくれた。
「有名な紅葉スポットもいいけれど、こういう観賞もなかなか良いもんだよね♪ りょーくん」
「そうだね♪ ふふっ♪」
朝香と亮輔はニコニコしながら一緒にその場にしゃがみ込み、ほんの1メートル四方の黄色い絨毯をジーっと見つめ、しばらくクスクスと微笑み合った。
「本当にこの公園……私達以外誰も居ないよね」
ふと、朝香は左右を見渡しながら彼にポツリと呟く。
「誰も居ない……ね」
亮輔も同意して、スッと立ち上がり更にぐるりと全方向を見渡した。
「……」
「……」
ヒュウッと吹く冷たい秋風だけが2人を見守っている気分に駆られ、ふわりと舞い上がる亮輔の黒髪が余計に朝香の全身をときめかせて……
(わぁ……私今、凄くドキドキキュンキュン、ムラムラってしてるぅ)
ハラハラと舞い落ちる黄色の落ち葉の美しさと反する気持ちが湧き上がり、彼の指と唇の温もりを求めてしまった。
「……あーちゃん疲れてるだろうし、そろそろマンション戻ろうっか」
それなのに亮輔は秋風をその身に受けながら帰り道の方向を向いたものだから
「りょーくん待って!」
彼の腕を掴んで朝香も立ち上がる。
すると、銀杏の葉が2人の周りを舞うように持ち上がり……ハラハラと黄色の葉がゆっくり舞い落ちてくのを見届ける間もなく
「りょーくん」
朝香は彼の大きな体を求め大胆にギュウゥッと強く抱き締め……
「キスして」
突然のお願いをした。
「んっ」
朝香の願いに疑問を持つことなく、亮輔は背伸びした朝香に位置を合わせ……強く抱き締めながら熱い舌を絡ませる。
「んんっ」
亮輔の体温は衣服の布越しからでも熱さを感じられ、空気や風の寒さを融かしてしまうんじゃないかと朝香が錯覚しつあしまうくらいの情熱さを持つ。
長くとろけるようなキスが終わり、互いの唇から細く透明な糸が伝う。
「あーちゃん……可愛いけど、外はダメだよ」
街灯に照らされた亮輔の顔はいつも以上にセクシーで、優しく諭してくれているのは分かっているのに
「ごめぇん」
「嬉しいんだけどね、我慢出来なくなるから」
ドキドキムラムラが抑えられずギュウッとハグして密着を試みようとしてしまう。
「ごめん。だけどね、したくなったんだ。
黄色い葉っぱが沢山舞い上った時に陸橋から観たオレンジが綺麗だったなぁとか色々と思い出してたらキュンときて……それから、りょーくんに言いたくなったから」
「言いたくなったって……何を?」
朝香は亮輔の腰に腕を回して
「いつまでもいつまでも、りょーくんとずっと一緒に居たい。りょーくんといろんな体験したいし、季節的なイベントもたくさんやっていきたい」
ドキドキキュンキュンムラムラきた根本となる言葉を彼に向かって告げた。
「えっ」
行きつけの洋食店『 Jolie Mante』で料理と雨上がりブレンドを楽しみ、後はマンションに帰るのみとなる。
「この道を歩くのも慣れてきたなぁ」
「『 Jolie Mante』くらいだったら良いけど、『雨上がり』だと結構遠いよね。自転車買った方がいいんじゃない?」
「ん~、別に歩けない距離でもないからなぁ近くに自転車買える店はないし」
アパートからこちらへ引っ越して2ヶ月。
『雨上がり珈琲店』はこの道をまっすぐ歩いて徒歩15分弱となるが、苦になるわけではないのでまだ購入は躊躇っていた。
「えっ?! 自転車屋なかったっけ?」
朝香の「自転車買える店はない」に亮輔は驚き
「えっ?! あったっけ?? 商店街にはないよ」
と、朝香も目を大きく開かせる。
「えっマジで?? 昔、この辺りで俊哉くんのお父さんに買ってもらった記憶あるけどなぁ……」
「えっそうなの??」
「うん、確か『長岡金物店』より何軒か離れたところの」
そう言いながら後ろを振り返り、朝香と一緒に後戻りしながら見回してみたのだが
「あぁ~そっかぁ……閉店したんだっけ」
シャッターが降りた古い店構えを前にして、亮輔は残念そうに表情を歪めた。
「そっかぁ……『雨上がり珈琲店』が出来る前には閉店してたんだね」
それならば朝香が知らないのも当然だ。
「うん……自転車買ってもらってさ、その奥にある小さな公園で練習してたんだよ」
亮輔の実家はこの地域でなくとも、上原家が古くから所有しているので親戚として遊びに来ていたから記憶に深く刻まれているのであろう。朝香も知らない裏道を入っていくと、言われた通りに公園へ辿り着いた。
「へぇ……こんなところに公園があったんだぁ」
遊具も少なくて特にこれといった特徴もないが、子どもが自転車を乗り回す程度のスペースくらいならある。感心しながら朝香が周囲を見回していると
「あっ、イチョウがあるよ! りょーくん」
街灯に照らされ黄色が際立っている一本の銀杏の木を見つけ、亮輔の顔をそちらへ向かせた。
「本当だ……しかも結構大きい」
これだけ存在感があるのに「自転車の練習場」としての記憶しかなかったらしく、亮輔も一緒になって驚いている。
「りょーくん地面見てみて! 黄色い絨毯みたいだよ! りょーくんが私を紅葉デートに誘う時に言ってくれたのと一緒!!」
朝香は足元を指差し、亮輔が紅葉デートプランを伝えるべく黄色で埋め尽くされてるイチョウの画像を見せてくれたのを思い出しながら声を上げてみせた。
「俺があーちゃんにプレゼンしたのは、もっと規模のデカいヤツなんだけど」
りょーくんはクスリと笑ったものの……
「確かに、子どもの頃の思い出がある公園へあーちゃんと来れたのは嬉しいかも。
ここのところだけ見ると、黄色い絨毯みたいで綺麗だし」
朝香の意見に同調し、ウンウンと頷いてくれた。
「有名な紅葉スポットもいいけれど、こういう観賞もなかなか良いもんだよね♪ りょーくん」
「そうだね♪ ふふっ♪」
朝香と亮輔はニコニコしながら一緒にその場にしゃがみ込み、ほんの1メートル四方の黄色い絨毯をジーっと見つめ、しばらくクスクスと微笑み合った。
「本当にこの公園……私達以外誰も居ないよね」
ふと、朝香は左右を見渡しながら彼にポツリと呟く。
「誰も居ない……ね」
亮輔も同意して、スッと立ち上がり更にぐるりと全方向を見渡した。
「……」
「……」
ヒュウッと吹く冷たい秋風だけが2人を見守っている気分に駆られ、ふわりと舞い上がる亮輔の黒髪が余計に朝香の全身をときめかせて……
(わぁ……私今、凄くドキドキキュンキュン、ムラムラってしてるぅ)
ハラハラと舞い落ちる黄色の落ち葉の美しさと反する気持ちが湧き上がり、彼の指と唇の温もりを求めてしまった。
「……あーちゃん疲れてるだろうし、そろそろマンション戻ろうっか」
それなのに亮輔は秋風をその身に受けながら帰り道の方向を向いたものだから
「りょーくん待って!」
彼の腕を掴んで朝香も立ち上がる。
すると、銀杏の葉が2人の周りを舞うように持ち上がり……ハラハラと黄色の葉がゆっくり舞い落ちてくのを見届ける間もなく
「りょーくん」
朝香は彼の大きな体を求め大胆にギュウゥッと強く抱き締め……
「キスして」
突然のお願いをした。
「んっ」
朝香の願いに疑問を持つことなく、亮輔は背伸びした朝香に位置を合わせ……強く抱き締めながら熱い舌を絡ませる。
「んんっ」
亮輔の体温は衣服の布越しからでも熱さを感じられ、空気や風の寒さを融かしてしまうんじゃないかと朝香が錯覚しつあしまうくらいの情熱さを持つ。
長くとろけるようなキスが終わり、互いの唇から細く透明な糸が伝う。
「あーちゃん……可愛いけど、外はダメだよ」
街灯に照らされた亮輔の顔はいつも以上にセクシーで、優しく諭してくれているのは分かっているのに
「ごめぇん」
「嬉しいんだけどね、我慢出来なくなるから」
ドキドキムラムラが抑えられずギュウッとハグして密着を試みようとしてしまう。
「ごめん。だけどね、したくなったんだ。
黄色い葉っぱが沢山舞い上った時に陸橋から観たオレンジが綺麗だったなぁとか色々と思い出してたらキュンときて……それから、りょーくんに言いたくなったから」
「言いたくなったって……何を?」
朝香は亮輔の腰に腕を回して
「いつまでもいつまでも、りょーくんとずっと一緒に居たい。りょーくんといろんな体験したいし、季節的なイベントもたくさんやっていきたい」
ドキドキキュンキュンムラムラきた根本となる言葉を彼に向かって告げた。
「えっ」
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