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番外編
朝に香る8
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義郎は驚く朝香達にニヤリ顔を見せつけて
「知っとるも何も、わしゃあ一時期亮輔くんの様子見に行っちょったけぇのう」
「えっ??!!」
と得意げに言ってきたものだから、朝香は更にビックリし亮輔とと顔を見合わせる。
(私の知らないうちにお父さんはりょーくんの様子をわざわざ見に行ってたの??!)
義郎の口から出た衝撃発言に面喰らっていたのだが
「夕紀ちゃんの珈琲店の準備をしていた頃だから、今から5年前の事よ。あの頃はパパ、夕紀ちゃんの代わりに開店準備に向けてここと東京を行ったりきたりしてたでしょ?」
裕美から補足説明を受け、朝香は瞬時に納得する。
「そういえば皐月さんの件のすぐ後から開店に向けての準備をお父さんが手伝っていたんだっけ」
「思い出した」とばかりに手を叩きながら朝香がそう言うと
「えっ? そうなの?」
亮輔は目を丸くして驚く。
「うん、りょーくんは知る筈ないよね。『雨上がり珈琲店』がオープンしたのは5年前の11月……りょーくんが16歳のお誕生日を迎えて少し経った頃なの。
オープンの8ヶ月前に皐月さんの事があったから、夕紀さんは東京に行けるような状況じゃなくなっちゃって、そこからはお父さんが代理で準備を進めていたんだよ」
「そうだったんだ……」
具体的な時期を伝えると、彼はゆっくりと息を吐いてしんみりとした表情になる。
「皐月さんの葬式の時に、夕紀が本当に申し訳ないことしてしもうたと儂も責任を感じていてのぉ。店の準備を進めている合間をぬって笠原家へ謝りに行こうとしたことがあったんじゃ。まぁそん時は追い返されてしもうたんじゃが」
義郎が謝りに行こうとしたという話に亮輔の頭は更に下がって
「俺の実家がすみません。俺、その頃は既に実家を出ていて従兄と生活してたんです。
お父さんがいらっしゃった際、きっと父と母は無礼にあしらったのではないかと」
申し訳なさそうに謝り、膝の上でギュッと拳に力を込めている。
「……いや、ご両親は在宅しよらんで家政婦さんが『上原俊哉さんへ連絡してくれぇ』言うて連絡先をサッと書いたメモを渡してくれての。それですぐに上原俊哉さんとこへ話をしに行ったんじゃ」
「そうだったんですか……」
「亮輔くんが上原姓に変わったと知ったのもその時でのぉ」
笠原家の家政婦がどのような人物なのか亮輔から詳しい話を聞いた事がなかった朝香であったが、恐らく家政婦も彼を心配していたんじゃないかと想像した。
(家政婦さんのお立場上、普通なら主人であるりょーくんのお父さんの指示に従ったままにしちゃうよね。
サッとメモを書いてお父さんに上原さんの連絡先を渡しちゃうなんて、家政婦さんは絶対にりょーくんを心配してたんだ……)
「上原俊哉さんのところへ行ったら、即座に土下座されて謝られての。こっちが謝るつもりでおったけぇ拍子抜けしたわいね」
「従兄は……土下座したんですか?」
義郎の「上原さんが土下座して謝った」の件にりょーくんはハッとして顔を上げ
「ほうよ、ビックリしたんじゃけぇ。あの土下座は皐月さんの事っちゅうよりは亮輔くんのご実家の態度にって感じじゃったの。儂ゃまだ笠原家でどう扱われたんか話とらんかったのに、上原さんは全てを悟った様子じゃった」
「……そう、ですか」
次いで出た義郎のセリフに亮輔は驚いている様子ではあったが
「実はの、上原さんが『むらかわ』へ来た事も一度あるんじゃ」
「従兄は……ここに来たことがあるんですか……っ」
更に、あの忙しい俊哉が時間を作って山口まで足を運んだという話にも目を見開いて驚き言葉を詰まらせる。
「『亮輔くんがいかに皐月さんを救いたいと望んでいたのか』『高校生になった亮輔くんは現在、どれほどに自分の行動を悔いているのか』とまぁ……そういう説明が主じゃった。説明を聞いたのは夕紀と儂で、夕紀は上原さんの話を聞くのも顔を見るのも辛そうにしとったんじゃが、儂はそれをきっかけに上原さんと密に連絡を取り合うようになって夕紀の店の準備がてら亮輔くんの様子見をするのがルーティンとなっての。亮輔くんがコンビニで働いてるところを上原さんに見せてもらったりしよったんよ」
「えっ? お父さん、りょーくんが仕事してる様子を見に行ってたの?」
「俺、知らないうちにお父さんに見られてたんすか?」
義郎の口から初めて明かされるエピソードは驚き以外の反応が出来ないくらい、朝香達にとっては衝撃的な内容の連続だ。
「ほうよ、亮輔くんは気付いとらんかったじゃろうが買い物して会計してもろうたこともある」
「え!! 知らないうちにお父さんと顔合わせて接客までしていたんですか??!」
驚きすぎて亮輔の声も大きくなり……それから
「えっ?……ちょっと待って下さい、皐月さんのお葬式が落ち着いた頃っていつ頃?? 俺、まさかその時金髪じゃなかったですかね?」
顔を青ざめたり
「おお! 3ヶ月でここまで変わったんかと驚いたのう!」
「やっぱり……ヤバい、恥ずかしくなってきた……」
恥ずかしそうに頬を赤らめたりと、顔色がクルクルと変化する。
「知っとるも何も、わしゃあ一時期亮輔くんの様子見に行っちょったけぇのう」
「えっ??!!」
と得意げに言ってきたものだから、朝香は更にビックリし亮輔とと顔を見合わせる。
(私の知らないうちにお父さんはりょーくんの様子をわざわざ見に行ってたの??!)
義郎の口から出た衝撃発言に面喰らっていたのだが
「夕紀ちゃんの珈琲店の準備をしていた頃だから、今から5年前の事よ。あの頃はパパ、夕紀ちゃんの代わりに開店準備に向けてここと東京を行ったりきたりしてたでしょ?」
裕美から補足説明を受け、朝香は瞬時に納得する。
「そういえば皐月さんの件のすぐ後から開店に向けての準備をお父さんが手伝っていたんだっけ」
「思い出した」とばかりに手を叩きながら朝香がそう言うと
「えっ? そうなの?」
亮輔は目を丸くして驚く。
「うん、りょーくんは知る筈ないよね。『雨上がり珈琲店』がオープンしたのは5年前の11月……りょーくんが16歳のお誕生日を迎えて少し経った頃なの。
オープンの8ヶ月前に皐月さんの事があったから、夕紀さんは東京に行けるような状況じゃなくなっちゃって、そこからはお父さんが代理で準備を進めていたんだよ」
「そうだったんだ……」
具体的な時期を伝えると、彼はゆっくりと息を吐いてしんみりとした表情になる。
「皐月さんの葬式の時に、夕紀が本当に申し訳ないことしてしもうたと儂も責任を感じていてのぉ。店の準備を進めている合間をぬって笠原家へ謝りに行こうとしたことがあったんじゃ。まぁそん時は追い返されてしもうたんじゃが」
義郎が謝りに行こうとしたという話に亮輔の頭は更に下がって
「俺の実家がすみません。俺、その頃は既に実家を出ていて従兄と生活してたんです。
お父さんがいらっしゃった際、きっと父と母は無礼にあしらったのではないかと」
申し訳なさそうに謝り、膝の上でギュッと拳に力を込めている。
「……いや、ご両親は在宅しよらんで家政婦さんが『上原俊哉さんへ連絡してくれぇ』言うて連絡先をサッと書いたメモを渡してくれての。それですぐに上原俊哉さんとこへ話をしに行ったんじゃ」
「そうだったんですか……」
「亮輔くんが上原姓に変わったと知ったのもその時でのぉ」
笠原家の家政婦がどのような人物なのか亮輔から詳しい話を聞いた事がなかった朝香であったが、恐らく家政婦も彼を心配していたんじゃないかと想像した。
(家政婦さんのお立場上、普通なら主人であるりょーくんのお父さんの指示に従ったままにしちゃうよね。
サッとメモを書いてお父さんに上原さんの連絡先を渡しちゃうなんて、家政婦さんは絶対にりょーくんを心配してたんだ……)
「上原俊哉さんのところへ行ったら、即座に土下座されて謝られての。こっちが謝るつもりでおったけぇ拍子抜けしたわいね」
「従兄は……土下座したんですか?」
義郎の「上原さんが土下座して謝った」の件にりょーくんはハッとして顔を上げ
「ほうよ、ビックリしたんじゃけぇ。あの土下座は皐月さんの事っちゅうよりは亮輔くんのご実家の態度にって感じじゃったの。儂ゃまだ笠原家でどう扱われたんか話とらんかったのに、上原さんは全てを悟った様子じゃった」
「……そう、ですか」
次いで出た義郎のセリフに亮輔は驚いている様子ではあったが
「実はの、上原さんが『むらかわ』へ来た事も一度あるんじゃ」
「従兄は……ここに来たことがあるんですか……っ」
更に、あの忙しい俊哉が時間を作って山口まで足を運んだという話にも目を見開いて驚き言葉を詰まらせる。
「『亮輔くんがいかに皐月さんを救いたいと望んでいたのか』『高校生になった亮輔くんは現在、どれほどに自分の行動を悔いているのか』とまぁ……そういう説明が主じゃった。説明を聞いたのは夕紀と儂で、夕紀は上原さんの話を聞くのも顔を見るのも辛そうにしとったんじゃが、儂はそれをきっかけに上原さんと密に連絡を取り合うようになって夕紀の店の準備がてら亮輔くんの様子見をするのがルーティンとなっての。亮輔くんがコンビニで働いてるところを上原さんに見せてもらったりしよったんよ」
「えっ? お父さん、りょーくんが仕事してる様子を見に行ってたの?」
「俺、知らないうちにお父さんに見られてたんすか?」
義郎の口から初めて明かされるエピソードは驚き以外の反応が出来ないくらい、朝香達にとっては衝撃的な内容の連続だ。
「ほうよ、亮輔くんは気付いとらんかったじゃろうが買い物して会計してもろうたこともある」
「え!! 知らないうちにお父さんと顔合わせて接客までしていたんですか??!」
驚きすぎて亮輔の声も大きくなり……それから
「えっ?……ちょっと待って下さい、皐月さんのお葬式が落ち着いた頃っていつ頃?? 俺、まさかその時金髪じゃなかったですかね?」
顔を青ざめたり
「おお! 3ヶ月でここまで変わったんかと驚いたのう!」
「やっぱり……ヤバい、恥ずかしくなってきた……」
恥ずかしそうに頬を赤らめたりと、顔色がクルクルと変化する。
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