3 / 240
「お伽話はどうして、結婚式で終わりを迎えるのでしょう?」
3
しおりを挟む「今日の1人目はカスミさん……ご新規さんかぁ久しぶりだなぁ」
12月6日
時刻は17時40分を回っている。
僕はタブレット端末の画面を眺め、そこに表示されている本日の予約者リストの中から初見のユーザーネームを呟いた。
「霞草をイメージするんだ……なるほどね」
貴重品を仕舞うロッカーの鍵をかける直前に、今度はスマホに手を持ち替え画面を操作して御守り画像を表示させると、親指のはらで大好きな一文に触れてみた。
この後すぐに手指を洗浄し消毒までしないといけないから、この「御守りに触れる数秒間」はとても大切にしている。
「……よし、僕も『リョウ』になりますか!」
仕事への士気を高めた僕は御守り画像をスワイプしてデータフォルダを閉じ、スマホをロッカーの中に押し込めた。
ヴー……
ロッカーの扉を閉めて鍵をかけようとしたその時、中から小さな通知音が僕の耳を捉え、再び扉を開けて確認する。
「誰からだろ?」
スマホを持ち上げ、ロック画面に表示された通知を確認し
「ああ……そっかぁ」
自然と僕の口角は持ち上がった。
「ようやく出来たんだ……良かった」
———[届《とどけ》を提出したよ]
その7文字で僕は全てを理解し、ロッカーの鍵をしっかりとかけた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる