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33 合宿初夜の巻

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「えと、私も何がどうなるのか良くわかっていませんが、色々とご迷惑お掛けしますっ!」

翌日の放課後、我が家のダイニングでは、陽子さんに挨拶する日野の姿があった。

「いえいえ、なんのお構いもしませんが、どっちの家も、好きに使ってね?」

「はい、お世話になりますっ!」

「今日は陽子さんが居るから、晩飯も期待していい。母さんしかいない日は自分達で作んないと酷い目に会う」

「もう、健人くん?ホントの事でも名誉毀損って成立しちゃうのよ?」

「知ってる。未成年だから訴えられたら親父が責任取るし。んじゃ取り敢えず部屋行って荷物置こう。勉強は・・・リコんちのダイニング使うか」

パタパタと階段を上がり、俺の部屋へ三人で入る。

「ここ、俺の部屋で、あっちがリコの部屋な。寝るのはリコの部屋に布団敷けばいい」

「うぉっ!?ほんとに真向かいっすわ!」

「あーリコ、日野もここから出入りさせていいか?っていうかダメって言い難いだろうけど、立場が逆だったら、俺は100%断わる自信がある。すまんっ!」

「うんっ!いいよっ!日野さんは特別!」

「えーっと、ありがと・・・ちょい、きまずい・・・っていうか写メっていい?クラス部屋に自慢したい!」

「リコ、いいか?」

「うんっ!大歓迎だよっ!」

「じゃっ!松橋さん、自分の部屋からこっちに手振ってくれる?」

カラカラカラ てとてとてとてと カラカラカラ 「いいよー!」

カシャ



[日野] スクープ!!!伝説の幼馴染設定ここに極まるっ!!!向かいの部屋は彼女の部屋っ!!! in 榊ルームなうっ!!!
※添付画像:窓越しに手を振るリコ

[川崎] なん・・・だ・・・と?
[五十嵐] それ、写ってんの、二組のいいんちょ?
[西郷] まじでそんなんあるんだ!?
[笹村] ちょいまち。ってことは今、凛子って、鬼畜ぼっちの部屋にいんの???ヤバくないっ?
[日野] うむ。エロ本はこれから探すっ!
[西郷] っていうかこれ、普通に同棲と変わんなくない?
[日野] 同棲っていうか既に一家?松橋さんのお母さん、普通に榊んちで晩御飯作ってたよ。
[川崎] 松橋さんに付き纏ってた二組のチャラ男、むちゃくちゃピエロっすねー



おっ?川崎、いい仕事してんな?あとで午後ティーおごってやろう。

「日野って普通にクラスチャット入ってんのな・・・そして俺、やっぱ鬼畜ぼっちなの?」

「アダ名までつけてもらって、人気者だなヲイ」

「はぁー、まぁいいや、あっち行くぞ」


#####



ケンタの部屋にわたし以外がいるなんて、たぶん中学の時以来だ。
高校生になってからの私達って、ほんと、ずっと二人っきりだったんだなぁ・・・。

「俺、下行ってっから、着替えちゃえば?」
「うん、そうするー」

わたしの部屋を素通りして、ケンタがダイニングに降りていく。

「うっわ、ほんと自分ち扱いなんだ!」
「ご飯はいつもあっちの家で食べるから、こっちの家はあんまり使ってないんだー。あっ、荷物適当に置いて?着替えちゃお」

日野さんは絶対ケンタの事が好き。
しかもキスまで、しちゃってる。
本当なら、絶対仲良くなんかなれない相手のはずなのに・・・嫌われちゃっても構わないって開き直ってるせいなのか、クラスの人達より気を使わないで居られる。
うん、正妻の余裕って事にしておこう。

「えっと、なんかごめんね?こんなのどんだけ図々しい奴ってわかってんだけど、気づいたらこんな話に・・・」

「ううん。わたし、日野さんの事は好きだよ。嫉妬もするけど。ケンタのやりたい事は一緒にやるって決めてるし、それに・・・卑怯な手で割り込んだの、わたしの方ってわかってるから・・・うん。だから、全部ひっくるめて、お互い様って事にしない?これまでも、これからも」

「なんつーか、松橋さん、ちょっとカッケー」

「ねっ?わたしたち、ほんとに友達になってみよーよ?そうしたら、奪い合うんじゃなく、分け合う感じになれるかも知れないし」

「あー、正直、自分がどうするつもりなのかもわかってないんだけど、宜しくお願いします」

「こちらこそ。じゃ、変な遠慮はもうナシにしよ?名前も呼び捨てでいいよね?」

「なんか、照れる。告白してるみたいじゃん?」

「えへへへっ。じゃ、凛子って呼ぶね?凛子も理子って呼んで!」

あれ?なんか変な方に話が進んだ。



「つーか二人とも、なんで突然名前呼びになってんの?」

「トモダチなった。つまり榊はもう用済みっ!」

「ズキンっ、そういう事いうなよ?割と本気で泣くぞ?」

「ふはははは。つーか榊も呼ぶか?名前?」

「んー、やめとく。なんか女子の事名前呼びにするのって、男子的には『俺、この女と名前呼びすっくらい仲いんだけど?』みたいに周囲に縄張り主張してる感じあるんだよ。なんかダサいじゃん?っていうか将来困るし」

「なんで困るの?」

「『日野弁護士っ!』って呼ぶべきシチュで『凛子弁護士っ!』とかゆっちゃったらカッコ悪いじゃん?」

「あー、榊って、本気でそこ、見据えてんのな?」

「当然だ。っていうか日野も見据えろ。ご両親にあんだけでかいこと、言ったんだ。実現できなかったらかっこ悪過ぎてしねる」

「あーい。まぁなんだ。マジ、がんばる」

交代で勉強教えて、ご飯を食べてまた勉強。
こんなに家で勉強したの、はじめてかも・・・。

「おっ?アイスがあるぞ!休憩すっか」

「うぃ~。つーかシンドイ。まじシンドイ」

「はははっ、夏休み中ほとんどこれで行くから、覚悟しとけ」

「まじすか・・・」

「因みにこれから俺達はそこでテレビを見る。日野は引き続き勉強だ」

「がーん!」

「安心しろ、音が聞こえても気が散らない奴だ。むしろ好きじゃない奴にとっては勉強の方がおもろいと思う。多少邪魔になるとは思うが、コレばっかりは譲れん!」

「あっ、そっか、今夜から山岳ステージだ!やった!やった!」

「つーか何みんの?」

「「ツール・ド・フランス!!!」」



ちょっと気になる、っていうすっげー気になってる男子の、その彼女の家で勉強させられてる。

しかも、二人はソファーでいちゃいちゃ。
嫌でも会話が耳に入るが、何話してんのか全然わかんねー。

「きたっ!きたっ!アホの子いけーっ!」

「うっわコレ最後まで行く気無いだろ?働きもんだなー」

「追えないっ!トーマス追えないっ!アタックきまったー!」

「ご歓談中のところすみません、ココ、全然わかんねー」

「今度ケンタだよー」

「うぃー。どれ、日野ちゃんは何がわからないのかなー?」

なんだこの榊?
むちゃくちゃ機嫌よくないか?
っていうかソレ、そんなおもろいの?

「おーっ?つーか、日野、無茶苦茶頑張ったな?今日予定してたとこ終わってんじゃん?エロいエロい」

「まじで?じゃあさ?私もちょっとソレ、見ちゃってもいい?」

「いいぞ。先は長い。スケジュールこなしたらのんびりしていい。よしっ、リコ!布教するぞ!」

「おー!」

うん。
勉強のがマシだった。
興味の無いスポーツの解説を延々と聞かされるって、しかも二人とも無茶苦茶嬉しそうで断れねーし!

はっ!まさか!私をサボらせない為の作戦っ!
っていうか、一緒に走ってる車のが速いじゃん?
なんでチャリで山のぼんの?Mなの?

でもまぁ、ここまで手放しではしゃぐコイツを見れたのはちょっと収穫。
また一つ、割り込めっこないって事も分かっちゃったけど。
つーかコイツと遊びに行くって、チャリで百キロとか走れないとダメらしいよ?
馬鹿でしょ!?

「よしっ、受験おわったら、凛子も自転車買おうよ!三人ローテ、やってみたかったんだー!」

「おっ、いいな!っていうか俺は七人くらいで回して、環七とか爆走してみたい!」

「楽しそー!凛子っ、楽しみだねっ!」

「おっ、おう・・・」

マジか?
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