I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第三章

151 シリア暗殺計画(14)

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「改めて、ユリア。たすけてくれてありがとう。ユリアが居なかったら、全滅だったわ」
「ようやっとお役に立てて、嬉しいですっ!でも・・・アベルさんが・・・」
「・・・」

ユリアが行方不明になっていなければ、俺は、俺達は、もっと深く傷ついていただろう。
ガムシャラになってユリアを探すことで、俺達はそのから目を反らすことができた。
だが、言いようの無い喪失感が、次第に現実味を帯びる・・・。

「それじゃぁ?首謀者たちはもう死んでるってこと?」
「はい。奥様たちを追いかけないように、最初に一番偉そうな人たちをまとめて倒したので、たぶん、生き残ったのは傭兵の人しかいないと思います」
「そう・・・でもユリア?本当に、よく無事だったわね?」

「最初は・・・なんとか足止めが出来ればって・・・帰ってこれるなんて思ってませんでした。でも、旦那さまの真似をして、岩の代わりに氷を使って、結構うまくいって、だんだん欲が出て、もしかしたら帰れるかもって、そうしたらとっても強い人が居て、コキュートスも効かなくって、やっぱり帰れない・・・って思ったとき、新しい技を覚えたんです!」
「新しい技?」
「はいっ!魔法名を声に出さなくても、魔法が発動できるようになったんです!」

「無詠唱かっ!?」
「? 旦那様? 無詠唱って何ですか?」

「あー、そうだな。俺の知識は物語りの中の話だから、正しいかはわからないけど、この世界の魔法は『詠唱破棄』っていうものなんだ。本来は長い詠唱・・・呪文だな、それを唱えないと魔法は発動しない。その詠唱をしないで、魔法名だけで発動できるようにするのが詠唱破棄。詠唱しない分、威力も落ちる。そして魔法名すら発声しないで、思っただけで発動できるのが『無詠唱』、詠唱破棄よりも更に威力が落ちるけど、恐ろしく速いし、いつ攻撃されるかわからないから避けるのが殆ど無理だ」

「それですっ!」
「どうやって覚えたんだ?」

「旦那さまの恒久命令です。その、すごく強い敵に殴られ続けて、自動反撃で魔法の発動体制に入ってるのに、魔法名を発声してる間にまた殴られて、何度も何度も、強制キャンセルさせられ続けたんです。それで頭がぼーっとして、もうだめだーって思ったら、奴隷紋の呪いで強制覚醒させられて、カラダの中で暴れてる、発動できなかったマナをなんとか制御しようとしたら、アイスジャベリンになって、敵に突き刺さったんです!」

「残念・・・真似できなそう・・・」

「無詠唱が実現できるって事は、本来の詠唱型も存在してるのかもな・・・いずれにしても接近戦最強の、非常識な魔法使いが誕生したわけだ」

「で、ユリア?そのあとどうなったの?」

「はい、その人を倒した直後に立ち止まっちゃったら、弓矢が次々刺さって、だんだん痛くなくなって、そこで意識が途切れました」

「・・・」

「次に目が覚めたときは、何も着て無くて、封魔の首輪と手枷をされてて、檻に入って馬車に乗せられてました」

「ユリア・・・」

「わたしの事を知ってる傭兵が居たんです。白金貨十枚20億円で売れると思って、戦場で倒れてるのをこっそり運び出して、矢を抜いて治療したようです・・・旦那様にはもう話したんですけど、その、傭兵団の人達に・・・汚されました」

「ユリアちゃん・・・」

「大丈夫です。旦那様にちゃんと慰めて貰いましたから。身代金なら旦那様がいくらでも出してくれるからってお願いしたんですが、教皇の正妻を襲撃しておいて許されるはずが無いって全然聞いてもらえなくて、だから奴隷商なら、かえってお金で助けてくれるかもって思って、でも、奴隷紋が有効な商品は買い取れないって断られて、そうしたら偶然出てきたんです、リッチモンド子爵が・・・」

「リッチモンドってあのリッチモンド?」

「はい。それで、その場で金貨200枚四千万円払ってわたしを買い取って、転移門があるところまで送ってくれました」

「・・・あの男が?・・・信じられないかな?」
「その前に、なんでアイツが居やがったんだ?」

「旦那様が偉くなっちゃったから、グラム王国での出世が絶望的になって、遠く離れたハルバナ王国に移ったって、わたしを助けるのは、旦那様に恩を売っておいたほうがマシだからって言ってました・・・でも、おかしかったんですよ?」

「なにが?」

「転移門のあるニスリラ村に向かう途中で、野盗が出たんです。それで、諦めて引き返すって言うから、わたしが一人で倒したんです。そうしたら、なんか急に態度が小さくなって、馬車の中でも隅っこの方で大人しくなっちゃって・・・胸がスカッとしました!」

「ぷっ・・・あの尊大な男がねぇ?」
「それは見たかったかな?」

「あー、ってことは?子爵が命の恩人?って事になるのか?」
「はい。子爵さんが助けてくれなかったら、たとえ逃げ出せても、地図すら買えなくて、転移門のあるところまで間に合わなかったと思います」

「・・・どうすんだ?これ?」
「まぁ、お礼にいかないわけには・・・いかないわね?」

恨みが無いかと言われれば当然ある。
だが、あれからもう六年・・・怒りは既に無い。
ユリアの命を救ってくれたのだから、感謝することもできると思う。

「よし、その件は先送りにしよう。俺からもみんなに報告がある。今回の件で、たぶんアベルを失ったショックが大きすぎたんだと思うが、PTSDが直った。それはもう、完璧に・・・」

「「「「「ほんとに!?」」」」」

「・・・なんだか、アベルさんに申し訳ないわね?」

「シリアには言ってあったんだけど、みんなにも伝えておくよ。俺、アベルと約束してたんだ、順番はシリアが先になるけど、子供つくっていいって・・・とかいうとアレだけど、俺、子供嫌いだし・・・いい父親にはなれないけど、ギリギリ怒られないくらいは頑張るって・・・でも、まもれなくなった・・・約束」

「「「「主様(旦那様)・・・」」」」

「で、俺、ずっと引きずると思うんだ、忘れて乗り越えるとか無理だし・・・だから、いっそ開き直って、徹底的に女々しく引きずろうと思う」

「えーと?どゆこと?」

「うん。アベルってさ?めちゃくちゃ人間好きじゃん?それも、立場の弱い人とか。相手が嫌がろうとお構い無しで、どこまでも親切の押し売りするし・・・でも俺、卑怯じゃん?みんな以外の事とかどうでもいいし。だから、俺は変われないけど、国を変えようと思う。アベルの国葬に合わせて、国名を変える。『神殿国家アベル』。んで、なるべく『アベルが生きてたらこうしたいんだろうなー』って事をしようと思う。まぁ、やり方はどう転んでも俺のやり方になっちゃうだろうけど。いいかな?」

「この国を、あんたとアベルの子にしたいのね?」
「うん、そういうことなんだと思う」
「いんじゃない?このメンツだと・・・ほっといたら『詐欺師国家カイン』とかなっちゃいそうだし?」
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