I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

文字の大きさ
169 / 173
2nd season 第四章

165 バイミーファン

しおりを挟む
「いやぁ、カフィ豆のお土産まで貰っちゃったな~」
「アンタ・・・ベルガットさん、涙目だったわよ?」
「普通に仕事しただけなのに、関わった相手が不運だったかな?」
「主様っ!飯だろ?こんどこそ飯だろっ?」

ペルシラ大陸の食事も別に悪くは無い。
俺は海辺からを運べるし、種類は少ないながら香辛料もある。
だが、コーヒーがあり、これだけ洗練された文化を持つ新大陸。
おフランス料理的なソースとか普及しちゃってたりするんじゃまいか?

「しまった。名もなき補佐さんに旨い店を聞いておくんだった」
「その前に両替商を探さないとダメじゃない?」
「あー、そうだった。うん、両替商を探して、両替商に旨い店を聞こう」

潜入初日にして、この街のを頂いた。
『奴隷の人権を守る会』というのがどの程度のモノかはわからないが、役場の会議室を好き勝手に出来る程度の権威はあるんだろう。

昨日までのが早くもくらいまで難易度下がった。

「あー、みんな、基本指針。この大陸ではペルシラ大陸の存在は絶対に秘密だ。安全の為に命令を使うぞ?」
「「「「「はーい」」」」」
「命令。この大陸に居る時は、ペルシラ大陸の存在を口にしてはならない。向こうの話をするときは・・・そうだな、代わりの地名で『シシラル村』と言うように」

「ん?どういう事だ?」
「あー、フレッド、例えばだ?んー、『聖都にはカフィなんて無かった』って言ってみ?」
にはカフィなんて無かった」
「「「「「おー!」」」」」

「な?これで安心だろ?」
「結構便利ね?奴隷紋」

鉄、銅、銀、金という貨幣の価値順位は同じだった。
両替で1割ほど目減りするが、まぁ、納得できるレートと言ってよいだろう。

「主様っ!どの店にするんだ!?」

両替商では何軒かのオススメを聞き出した。

「あー、まずは南方の変わった料理を出す店だな。自分達の土地の料理を知らないと、何かとまずいだろう」
「どんな料理か楽しみですねー」
「だんだん旅行してる気分になってきたかな?」
「魔族と聞いて身構えてたが、もう少し気楽に旅を楽しむべきだよな」
「そうだぞ主様っ!おれっちを見習えっ!」

店の名は『チサン亭』というそうだ。
教えられた通りを曲がり、数歩進んだだけで俺にはわかった。
これは運命の出会い。いや。再開になる。

「みんな・・・期待していいぞ、俺は泣くかもしれん」
「「「「「???」」」」」

「匂いでわかるんだ、この香りは・・・26年振りだ」
「さっきのカフィとは違うわよね?」
「やばい、我慢できんっ!走るぞ!」

看板も確認せずに店に飛び込む。
赤と黒のコントラストがどぎつい店内。
だが高級感は皆無。

時刻は三時を少し回った頃だ。
店内に先客は一組だけ。
俺は迷う事なく店の奥へと突き進み、大きなの円卓へ腰掛ける。

「いらっしゃい。何にする?」

残念。
ウエイトレスさんの制服は普通だった。

「あー、そうだな。はあるか?」

言いながらも視線は円卓の中央、筒状の容器に無造作に突き立てられたの束に釘付けだ。

「コメ?はわからないな?」
「あー、白くて小さくて硬い穀物で、茹でて食べるやつだ。あるか?」
「あー、な?あるよ?」

「なら、そのバイミーファンを人数分と、お勧め料理をじゃんじゃん持ってきてくれ。予算は金貨までなら問題ない」
「お兄さん、1000リラ20万円も食べるのは無理ね」
「ああ、でも色々食べたいんだ。諸々任せる、茶も頼む!」
「あいよー」

食べ物でここまでテンションあがったのは初めてだ。
みんなちょっと引き気味である。

「アンタ、そんなに好きなの?そのミーファン?」
「好きっていうか大好きだ!むこうの世界では主食にしてた。っていうか後で市場行こう!買い占める!」

「旦那様が楽しそうで嬉しいです」
「ああ、やばい、メチャメチャあがるぅー!あっ、ライザすまんっ、あんまり肉肉しい料理は無いと思う。野菜が多いんだ。だが旨いぞ?」

「肉ないのかー。でもおれっちも楽しみに、なってきた!」

ウェイトレスさんが前菜とお茶を運んでくる。
茶碗が小さい。
これは期待できるっ!

「お茶持ってきたよー。これ食べて待ってろー」

急須から皆の茶碗に茶を注ぐ。
うん、甘い香りが素晴らしい。

日本では烏龍茶というと、、ペットボトルに入った奴が連想されるが、ホンモノをちゃんと淹れると、安い奴でもメチャメチャ旨い。
フルーティーな甘みが僅かにあって、ショットグラスサイズの茶碗でガンガン飲むんだ。

「みんな、このお茶は一口で飲むんだ。そしてまた飲むときに注いですぐに飲む」
「へぇー、だからカップが小さいのね?」
「ああ、これは俺の生まれた国とは違う国のお茶だけど、よく飲んでたんだ」

紅茶と緑茶が同じお茶の木から作られる事は有名だ。
違いは茶葉を醱酵させるかさせないか。
そして烏龍茶に代表される中国のお茶は、半醱酵させた物が多く、紅茶の強さと緑茶の柔らかさを併せ持っている。

「ほんのり甘くておいしいです」
「果物みたいな香りね?」
「主力が出てくるまで前菜を食べよう」

円卓の二段目、少し高くなった円台をガラガラと回転させて見せる。

「食卓が回った!?」
「こうしてテーブルを回せば、沢山料理が並んでも、食べたい物を取れるだろ?」
「おもしろいですー」

「ん?フォークが無いぞ?」
「この国の料理は二本の棒で食べるんだ。慣れないと使い難いから、言えばフォークも貸してくれるんじゃないか?」

言いながら前菜に添えられた菜箸を手に取る。
なんだかこう、グッとこみ上げるものがある。

「こうやって使う」

お手本代わりに皆の小皿に取り分け、ガラガラと円台を回し、送ってやる。

「くっ、難しいぞ!?」
「慣れると小さな物も掴めて、かなり使いやすいんだが、まっ、最初はな?」

前菜は瑞々しい生野菜のごま油あえと、ピータン的な謎卵だ。

「・・・うまい・・・醬油だ・・・醬油の味がする・・・もう俺、この家の子になるっ!」
「カイン様はこの調味料が好きなのですか?」
「ああ、全ての調味料の中で一番好きだ!」
「では市場で探して、この味の料理を覚えますね」
「ありがとうラティア、愛してる」

「おまちどー、チサン名物とオーク肉の辛ジャン炒めでーす」

麻婆豆腐と回鍋肉だ!
そしてお待ちかねの白飯だっ!
麻婆豆腐と一口に言っても、日本のご家庭で作られるアレは全然違う。ってういかアレは和食だ。豆腐のうま煮と言ったほうが適切だろう。
本物はまず香辛料の量が違う。
そしてネギと挽肉がしっかりと自己主張してくる。
赤くてうまいのもたまにあるが、基本的には黒い奴のが旨い!
鬼辛くて鬼うまいが、食べ終わったらもう当分食いたくないって思うくらい激しい。
そして半月も経つと、また食べたくてどうしようも無くなるんだ。

「まずは白飯を頂こう」

箸でつまむと少しパサパサしている。
そういう種類なんだろう。
逸る気持ちを抑えつつ、そっと口に運ぶ。

ふーふー、はふはふ

じんわり・・・

「うまい・・・泣きそう・・・って泣いてる」

やはり皆に箸は無理だった。
おこちゃまっぽくレンゲで口に運んでる。

「ちょっと甘みがあるのね?初めての食感だわ?」
「でも、泣くほどうまくは無いよなっ?」

「ふっ、それはどうかな?米の本領発揮はここからだ。この豆石のナントカを一緒に食べてみ?」

麻婆豆腐を白飯にぶっかけ、レンゲでガンガンかきこむ・・・感無量。

「全然違うっ!?」
「バイミーファンは他の料理と一緒に食べる事で旨さが引き出されるんだ!」

次々と運ばれてくる料理。
日本で有名な中華料理なんてほんの一部だ。
そしてココの料理がどれだけ地球に類似してるのかはもはやわからん。
だがコレだけは言える。

米、サイキョー!

「ふむ。他の料理と一緒に食べる為の食材、というのはなかなか新鮮だな。友よ、これはシシラルでも育つのだろうか?」

「あー、育つと思うぞ?是非とも育てたいところだが、なんでもかんでも持っていくのはダメだな。慎重に考えないと」

「ん?何故だ?」

「例えばこの食事、元はシシラルの金貨だよな?」

「うむ、そうだろう」

「じゃあ、俺がここで気に入ったものをガンガン買い続けるとどうなる?更にそれをシシラルで売って、また買いに来るような事を繰り返すとどうなる?」

「・・・わからぬな」

「あっ!主様っ!わっかた!シシラルのきんが無くなる!」

「おー、スージー、よくわかったな?」

「もう少し説明してよ」

「ああ。貿易の基本だ。何かを買うなら、代わりの何かを売り付けないとダメなんだ。バイミーファンは種籾を買って帰って育てれば、取り引きはその一回で済むからシシラルの金貨が無くなって、こっちの金貨が増え続けるような事にはならないが、もしもそれがこの大陸の人間に知られれば逆に、俺に物を売ってくれる奴が居なくなるかもしれない。一度売ったらソックリ真似されるんかもしれない。そんな相手には売りたくないだろ?」

「なるほど・・・奥が深いな」

「まぁ、自分達で食べる分は確保するけどな!」

いかに26年ぶりとはいえ、俺の胃にも限界がある。
食道を通過すると同時に亜空間送りにすれば・・・などと一瞬考えたが自重した。

「よしっ!次は市場だ!」







##### 作者コメント #####

すんまそん。隙を見て、無理やり書いたらこんな気の抜けた話に(血涙
しおりを挟む
感想 240

あなたにおすすめの小説

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...