I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第四章

166 暗中模索

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「アンタ、言ってることとやってることが全然逆よね?」
「ふっ、わが妻よ、理想と現実は違うのだよ!」

市場はまさに宝の山だった。
あちらの世界で見たことあるっぽい物から、二つの人生で初めて見るものまで。
日本のものとは微妙に違うが、米と醤油は爆買いした。
こういうのはアレだ、食べ続ければ慣れるもんだ。

「主様っ!酒もっ!酒も買ってくれっ!見たこと無いのがいっぱいあるぞ!」
「おう、買え買え!今日は無礼講じゃ!」

ドンッ!

「おうニイチャン!どこに目ぇつけてやがんだっ!」

なんだかお約束っぽいのに捕まった。
だが米を手に入れた俺に死角は無いっ!
キャストオフ マイフーーーードッ

バサリッ

「ひっ!?」

ふむ、悪は逃げ去って行った。

「アンタのそれ、こっちの人から見たら随分アレな感じみたいね?」
「ああ。超絶技巧防御術を超える、じつに宗教家らしい、平和的ソリューション解決策を手に入れたようだ」

それにしても魔族というのは随分と雑多な種族が入り乱れてるもんだ。
向こうの大陸で出会ったら問答無用で攻撃しちゃいそうな異形も居れば、傍目には人族と区別がつかない奴もいる。

「主様、実は魔王だったんじゃ・・・」
「まぁ、殺害件数的には資格があるかもな」

人族と魔族には決定的な違いがある。
魔石の有無だ。
おそらくモンスターと同じで、魔族を殺せばレベルが上がる気がする。
魔族にもレベルやギフトがあるのかはわかっていない。

「よし、今日はこの辺にして宿に戻ろう。色々相談もしたいしな」
「「「「「はーい」」」」」

宿へ戻る道すがら、雑踏の声に耳を傾ける。
どこにでもあるつまらない会話、そこからこの大陸を学ばねばならない。

「ほんと魔族って、想像と全然違いましたねー」
「ああ。だが油断するのはもう少し事情がわかってからだな。まだ何があるか予想もつかない」

宿へ着くと既に夕の刻。
両替もした事だし、とりあえず五日分くらい部屋を借りておこう。

「あー、オヤジさん。両替して来たんだが・・・今は忙しそうだな?」
「わりぃな。明日にしてくれるか?」
「構わんよ。あと五日ほど泊まりたいから、明日まとめて払おう」

「宿にいると、なんだか昔が懐かしくなりますね」
「そうだなー。白兎亭も今じゃ大企業みたいだな」

階段を上がり、それぞれの部屋に別れる。
が、数瞬の後には全員が聖都神殿に集まっていた。

「はいっ、それでは『第一回、魔族って思ったより良い人っぽいけど、マジどうやって洗脳すんの会議~』拍手~」

ぱちぱちぱちぱち

「はいっ、これ迄の会議と大きく違うところが一つあるぞー、なんだかわかるかー?」

「えっ、何かしら?」
「うーん、あっ!主様っ!おれっちわかったぞ!」
「はい、ライザ、言ってみたまえ」
「ズバリっ!眉毛が無いっ!」

「・・・フレッド。嫁の躾は夫の役目だ」
「ははは、部下の躾は上司の役目でもあるぞ?」

「ふぅ・・・みんなわかんないみたいだな?正解は、俺が答えを持ってない初めての会議って事だ。『コツコツやろう』以外に何も浮かばんっ!」

「ねぇ?向こうにも神殿ってあるんじゃないの?こっちのときみたくプレイオス様に降臨お願いしたら?」

「仮にプレイオス様が降臨されたとしても、今回は難しいだろうな。何しろ俺達に、魔族を率いる力が無い」

「「「あー・・・」」」

「そもそも私達って、魔族とやりあって勝てるんですか?」

「ニェリーザの言ったとおりの強さなら、少なくとも平均的な魔族を三人がかかりくらいならいけると思う。ユリアは逆に三人くらいなら殺れるんじゃないか?俺だと10人とかそんな感じか?」

「うーん、十人殺れるくらいじゃ魔王にはなれないわわね?」
「そうだな。っていうかなりたくないぞ」

「うーん、ねぇ?そろそろあたしらにも教えてくれていんじゃないの?アンタがなんでこんな必死に神理教の布教してんのか?」

・・・ふむ。確かに、最初は隠す事にしてたけど、むしろ皆の方が大丈夫なのかもしれないな、追加要件は悩むところだけど、こっちはそもそも隠す理由が無い。
ちょっとこっ恥ずかしいだけだ。

「あー、そうだな。コレを知った時、俺、めちゃくちゃショックで、だから皆には言わない事にしてたんだが、俺達も随分図太くなった。だからもういいな?」

「まぁ、この中で一番メンタル弱いのって、主様ですからね?」

「うん。自覚はある。で、俺が必死になり始めた理由なんだが、前の教皇に呼びだされた時、ホルジス様が軍団連れてきたろ?覚えてるよな?」

銀色の天使軍団?」

「そう、アレ。多分こんだけ強くなった俺達が全員でかかっても、一体倒す事も無理だろ?アレは?」

「そうですねー。そもそもなんて考えが浮かぶ相手じゃ無かったです」

「軍団があるって事は相手が想定されてる。つまり、アレと化け物が存在するわけだ。俺達の敵側に」

「「「「あっ・・・」」」」

「そんなんどう考えても無理だろ?ホルジス様達が負ければ、俺達に成すすべは無い。だから俺達に出来ることと言えば、神力というエネルギーを提供しまくるしかない」

「どんな、敵なの?」

「それはわからん。だが、頭の中を覗けるホルジス様が否定しない。しかも400年ぶりに降臨するくらいだ、それなりに焦った方がいいんだと思う」

「やっと合点がいったわ」

「しかも俺が新大陸に行くのも歓迎された。つまり、それが必要だって事なわけだ」

「結構プレッシャーですね?」

「まぁ、義務じゃ無いが、俺達しか動いてないんだ。しくじれば、世界が終わるかもしれない・・・と、実はもう一つ、こっちは後からだが、理由が出来た」

「・・・アベルさん・・・ね?」

「ああ・・・そのな?アベルの魂は、転生の輪に戻さず、ホルジス様に保管して貰ってる。肉体は滅んだから、生き返らせるのは無理だ。でも、神界全体が満場一致で『あいつら頑張ったから何か褒美をやろう』ってくらいの結果が出せれば、何かしら出来る事があると思うんだ。大勢殺してきた俺が、自分だけ一人の死に執着するなんて虫のいい話だが、俺は我を通す」

「それで・・・あんまり落ち込んで無かったんですね」
「主様の性格だったら、もう立ち直れなくなるのが自然だもんね」
「なんで教えてくれなかったのですか?」

「あー、まぁ、確信があるわけじゃないし・・・なんていうか、ちょっと言い出しにくかった。こっ恥ずかしいし」

「バカね?」

「そっかー。たいちょーのこと、諦めてなかったかー」
「まぁ、ベタな手だが、例えば誰かの子に、アベルの魂を入れて貰うくらいの願いなら、実績次第で頼めそうだろ?理を曲げるわけじゃないし?」

「そうですよっ!新大陸制覇、ちょっとやる気出てきました!」

「よしっ、じゃ、すぐに解決策は見つからないだろうが、根気よくアイデア出してくぞー」

予想通り、コツコツ情報集め以外の結論は出なかった。
だが、皆と目的を共有した事で、グッとゴールが近づいた気がした。

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