縛り勇者の異世界無双 ~腕一本縛りからはじまる異世界攻略~

延野 正行

文字の大きさ
6 / 48
第1章

第3話 ギルドと冒険者(前編)

しおりを挟む
 ちょうど夜更けとともに、俺たち王都の中心部へ戻ってきた。
 人はまだまばらで、馬車の往来も少ない。
 露天商が開店準備を始め、次々と商品が並んでいく。
 その中には、果物や野菜、肉などもあった。

 それを見ながら、俺は――。

 ぐぅぅぅううう……。

 腹音を鳴らす。

 マジでお腹と背中がくっつきそうだ。
 すると、呼応するかのようにまた音が鳴った。

 きゅぅううぅぅう……。

 俺と比べれば随分と控えめ腹の音らしきものが聞こえる。
 ルーナがお腹を隠していた。
 顔を真っ赤にして照れてる姿が、また可愛い。

 何にしても、腹を膨らませるのが先決である。
 腹を膨らませるためにはお金が必要で、そのためには働かなければならない。
 今から王宮に戻って、俺が強くなったことを話せば、路銀ぐらいは出してくれるかもしれないが、王様以下――王宮のヤツらに頭を下げるのだけは、絶対にイヤだ。

 思い出すだけでも腹が立つ。

「リックお兄ちゃん、どうしたの? 顔が怖いよ」

「な、なんでもないよ。ごめん、怖がらせてしまって。ところで、ルーナ」

「ん?」

「俺、働きたいんだ。ルーナの両親を捜すためにも、お金は必要だろ。この世界で働き口を教えてくれる場所とか知らないかな」

「うーんと。だったら、ギルドがいいんじゃないかな」

「ギルド……?」

 聞いたことがない単語だが、おそらく職業斡旋所みたいなものだろう。

 俺は人に聞いて、王都にあるギルドへと赴いた。
 スイングドアを開いて、中に入る。
 やたらと屈強なおっさんや、魔法使いっぽい服装をしたお姉さんが、真剣な顔で壁に張り出された紙を見つめていた。
 たぶん、仕事の案内状か何かだろう。

 ともかく、俺はルーナを連れ立って、受付に行く。

 カウンター越しに立っていたのは、年上のお姉さんだった。
 若緑の瞳に、亜麻色の長い髪を後ろで束ねている。
 白のブラウスに、紺色の上着がビシッと決まっていて、如何にも出来る女感を醸し出していた。

 あと、結構魅力的な胸をしている。
 俺はちょっと目のやり場に困った。

「ようこそ、ギルドメシェンド支部へ。今日はどういったご用件でしょうか?」

「仕事を探しにきたんだけど……」

「一般職と、冒険者の2つがございますが」

「冒険者?」

「魔物を倒す人だよ、リックお兄ちゃん」

 俺の袖を引っ張りながら、ルーナが教えてくれた。
 すると、どうやら俺たちが超初心者だと悟ってくれたらしい。
 受付嬢は懇切丁寧に教えてくれた。

 冒険者というのは、おもに王都外にある依頼をこなす職種の1つらしい。
 貴重な魔草を取りに行ったり、ダンジョンに入って調査をしたり、護衛任務などもあるそうだ。

 その仕事に全般的に関わるのが、魔物である。

 王都や街の外には、たくさんの魔物がうようよしている。
 それらを討伐するのも、冒険者の役目だった。

「ご理解していただけましたか?」

「ああ。冒険者が危険な仕事だということが」

 戦闘に関しては問題ないだろうが、出来れば危険は避けたい。
 万が一、俺が死んだら、またルーナは独りぼっちになる。

「じゃあ――」

 一般職を、と言いかけた瞬間、男が割り込んできた。
 額に玉のような汗を掻き、息を切らしている。
 焦っているのか、受付嬢にまくし立てた。

「ネレムちゃん、急ぎなんだ! 何かいい仕事がないか? どうしても、今日お金が必要なんだ」

 ほほう、この受付嬢はネレムというのか。
 いい情報を聞いた。
 覚えておこう。

 そのネレムさんはちょっと気圧されながらも、1枚の書類を差し出す。
 男は内容確認し、「これでいい」と言って、サインするとまたすっ飛んでいった。


(※ 後編へ続く)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...