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第1章
第3.5話 ギルドと冒険者(後編)
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「すみません、お話の途中で――」
「あ、いや……。で、俺の職業ですが、一般職で探してほしいんだけど」
「申し訳ありません。一般職の求人は、今の方に渡したのが最後でして」
「ええっ!!」
聞けば、王都は今就職難で、一般職はなかなか空きがないのだという。
なんてことだ……。
「冒険者なら大丈夫ですよ。初心者にも優しいクエストとか紹介しますし」
「危険じゃないんですか?」
「まあ、多少は……」
ネレムさんは苦笑する。
仕方ない。
これも巡り合わせだろう。
簡単なクエストなら、ルーナを守りながら戦っても問題ないはずだ。
本当ならどこかに預けたいところだが、今のところこの世界に、信用して彼女を預けられるところはない。
「じゃあ、冒険者になります」
「かしこまりました。では、こちらの書類に現在のステータスをご記入いただけますか?」
差し出された書類に、俺は記入していく。
ちなみに名前は「リック」と書いた。
その方が、この世界では通りがいいと思ったからである。
書き終わるとネレムさんに返した。
俺は若草色の瞳が、書類で目で追うのを見つめる。
するとネレムさんの顔が強張り始めた。
さっと、血の気が引いていく。
「す、すみません。リックさん、何かの間違いじゃないですか?」
「いや、間違っていないが……」
「え? あ、そうか。『スキル』……!」
初めは疑っていたネレムさんだが、何か得心したらしい。
俺と書類を交互に見始めた。
「そうか。黒い瞳と黒い髪……。リックさんは、もしかして勇者……様ですか?」
「ああ。そういうことになってる」
俺は頷く。
瞬間、周囲がざわついた。
いつの間にか、俺たちの存在は周りの興味を引いていたらしい。
「勇者だって?」
「もしかして、あの……?」
「ああ。きっとあいつだ」
「「「「外れ勇者だ!」」」」
突然、どっと笑い起こった。
たぶん、ほとんどが冒険者というヤツらだろう。
背中や腰に、武器を差している。
「あれだろ?」
「スキル『縛りプレイ』ってヤツ」
「ははは! ギルドに来るより、風俗街に行った方がいいんじゃねぇの」
「「「「ぎゃははははははははは!!」」」」
下品な笑い声が響き渡る。
すると、1人の戦士風の男が、ネレムさんから書類を取り上げた。
俺のステータスが書かれた紙をである。
「なんだ、この出鱈目な数字は? レベル1なのに、攻撃力140だってよ」
ヒラヒラと書類を振り、周りの冒険者に見せびらかす。
「ぎゃはははははは!」
「嘘を吐くなら、もっとマシな嘘を吐けよ、ゆうしゃさま」
「お! ちゃんと書かれてるぜ。スキル『縛りプレイ』って」
「マジかよ!」
「そこはちゃんと書くんだな」
「自信あるのかな、勇者様は」
「きゃああああ! 勇者さまぁ、ぼくも縛って! なんつってな!」
また下品な笑い声が響く。
ネレムさんは「ヴィンターさん、書類を返しなさい」と手を伸ばした。
だが、ヴィンターという男は無視し、仲間に見せびらかしている。
もう我慢ならん。
いっちょぶちのめしてやる。
勇者様の力ってヤツをな。
「嘘じゃないもん!!」
突然、小さな女の子の声が、ギルドに響いた。
ルーナだ。
目にちょっと涙を浮かべながら、自分よりも遙かに大きい男の前に立ちはだかる。
「リックお兄ちゃんは、ルーナを守ってくれた、勇者様だもん!!」
しんと静まり返る。
ルーナの迫力に、冒険者たちは言葉を忘れているようだった。
俺は微笑む。
ルーナ、それは違う。
たぶん、きっとこの場にいる全員の誰よりも、ルーナが勇者だ。
「ネレムさん」
「は、はい」
「もし、俺があの男に勝ったら、そのステータスを信用してくれますか」
「え? それは…………って待って下さい。あの方は、ああ見えてレベル10の」
「問題ありません」
俺はルーナを守るようにヴィンターの前に立ちはだかった。
「お兄ちゃん……」
「大丈夫だ。下がってろ、ルーナ」
「なんだ、勇者様? オレ様とやろうってのか?」
ヴィンターは凄んでくる。
俺も負けじと睨み返した。
「ああ。そっちがその気ならな」
「はっ! 威勢だけはいいじゃねぇか」
すると、俺はヴィンターの前に足を上げてみせた。
「ハンデだ」
「ハンデだと?」
「俺はお優しい勇者様だからな。足だけでお前を倒してみせる」
『縛り;足だけで男を倒す』を確認しました。
『縛り』ますか? Y/N
YES……。
「ふざけんなあああああああああああああああああ!!」
男は剣を抜いた。
そのまま大上段から振り下ろす。
相手の動きを見ながら、俺は微笑んだ。
「遅いな……」
バチィン!!
鋭い打撃音が響いた。
ヴィンターが剣を振り下ろす前……。
俺のハイキックが、ヴィンターの顔の側面を捉えた。
一瞬にして、意識を刈り取る。
さらに衝撃は収まらず、ヴィンターは吹っ飛ばされた。
哀れギルドの壁に突っ込む。
………………………………………………………………………………。
静まり返る。
俺は上げた足を下ろした。
「悪い……。手加減を忘れていたようだ」
その言葉は、ギルドに凛と響き渡った。
Pick Up!
名前 ヴィンター・ボルン
年齢 33
種族 人間
職業 戦士
――――――――――――――
レベル 10
攻撃力 98
防御力 96
素早さ 22
スタミナ 68
状態耐性 34
――――――――――――――
称号 ????
「あ、いや……。で、俺の職業ですが、一般職で探してほしいんだけど」
「申し訳ありません。一般職の求人は、今の方に渡したのが最後でして」
「ええっ!!」
聞けば、王都は今就職難で、一般職はなかなか空きがないのだという。
なんてことだ……。
「冒険者なら大丈夫ですよ。初心者にも優しいクエストとか紹介しますし」
「危険じゃないんですか?」
「まあ、多少は……」
ネレムさんは苦笑する。
仕方ない。
これも巡り合わせだろう。
簡単なクエストなら、ルーナを守りながら戦っても問題ないはずだ。
本当ならどこかに預けたいところだが、今のところこの世界に、信用して彼女を預けられるところはない。
「じゃあ、冒険者になります」
「かしこまりました。では、こちらの書類に現在のステータスをご記入いただけますか?」
差し出された書類に、俺は記入していく。
ちなみに名前は「リック」と書いた。
その方が、この世界では通りがいいと思ったからである。
書き終わるとネレムさんに返した。
俺は若草色の瞳が、書類で目で追うのを見つめる。
するとネレムさんの顔が強張り始めた。
さっと、血の気が引いていく。
「す、すみません。リックさん、何かの間違いじゃないですか?」
「いや、間違っていないが……」
「え? あ、そうか。『スキル』……!」
初めは疑っていたネレムさんだが、何か得心したらしい。
俺と書類を交互に見始めた。
「そうか。黒い瞳と黒い髪……。リックさんは、もしかして勇者……様ですか?」
「ああ。そういうことになってる」
俺は頷く。
瞬間、周囲がざわついた。
いつの間にか、俺たちの存在は周りの興味を引いていたらしい。
「勇者だって?」
「もしかして、あの……?」
「ああ。きっとあいつだ」
「「「「外れ勇者だ!」」」」
突然、どっと笑い起こった。
たぶん、ほとんどが冒険者というヤツらだろう。
背中や腰に、武器を差している。
「あれだろ?」
「スキル『縛りプレイ』ってヤツ」
「ははは! ギルドに来るより、風俗街に行った方がいいんじゃねぇの」
「「「「ぎゃははははははははは!!」」」」
下品な笑い声が響き渡る。
すると、1人の戦士風の男が、ネレムさんから書類を取り上げた。
俺のステータスが書かれた紙をである。
「なんだ、この出鱈目な数字は? レベル1なのに、攻撃力140だってよ」
ヒラヒラと書類を振り、周りの冒険者に見せびらかす。
「ぎゃはははははは!」
「嘘を吐くなら、もっとマシな嘘を吐けよ、ゆうしゃさま」
「お! ちゃんと書かれてるぜ。スキル『縛りプレイ』って」
「マジかよ!」
「そこはちゃんと書くんだな」
「自信あるのかな、勇者様は」
「きゃああああ! 勇者さまぁ、ぼくも縛って! なんつってな!」
また下品な笑い声が響く。
ネレムさんは「ヴィンターさん、書類を返しなさい」と手を伸ばした。
だが、ヴィンターという男は無視し、仲間に見せびらかしている。
もう我慢ならん。
いっちょぶちのめしてやる。
勇者様の力ってヤツをな。
「嘘じゃないもん!!」
突然、小さな女の子の声が、ギルドに響いた。
ルーナだ。
目にちょっと涙を浮かべながら、自分よりも遙かに大きい男の前に立ちはだかる。
「リックお兄ちゃんは、ルーナを守ってくれた、勇者様だもん!!」
しんと静まり返る。
ルーナの迫力に、冒険者たちは言葉を忘れているようだった。
俺は微笑む。
ルーナ、それは違う。
たぶん、きっとこの場にいる全員の誰よりも、ルーナが勇者だ。
「ネレムさん」
「は、はい」
「もし、俺があの男に勝ったら、そのステータスを信用してくれますか」
「え? それは…………って待って下さい。あの方は、ああ見えてレベル10の」
「問題ありません」
俺はルーナを守るようにヴィンターの前に立ちはだかった。
「お兄ちゃん……」
「大丈夫だ。下がってろ、ルーナ」
「なんだ、勇者様? オレ様とやろうってのか?」
ヴィンターは凄んでくる。
俺も負けじと睨み返した。
「ああ。そっちがその気ならな」
「はっ! 威勢だけはいいじゃねぇか」
すると、俺はヴィンターの前に足を上げてみせた。
「ハンデだ」
「ハンデだと?」
「俺はお優しい勇者様だからな。足だけでお前を倒してみせる」
『縛り;足だけで男を倒す』を確認しました。
『縛り』ますか? Y/N
YES……。
「ふざけんなあああああああああああああああああ!!」
男は剣を抜いた。
そのまま大上段から振り下ろす。
相手の動きを見ながら、俺は微笑んだ。
「遅いな……」
バチィン!!
鋭い打撃音が響いた。
ヴィンターが剣を振り下ろす前……。
俺のハイキックが、ヴィンターの顔の側面を捉えた。
一瞬にして、意識を刈り取る。
さらに衝撃は収まらず、ヴィンターは吹っ飛ばされた。
哀れギルドの壁に突っ込む。
………………………………………………………………………………。
静まり返る。
俺は上げた足を下ろした。
「悪い……。手加減を忘れていたようだ」
その言葉は、ギルドに凛と響き渡った。
Pick Up!
名前 ヴィンター・ボルン
年齢 33
種族 人間
職業 戦士
――――――――――――――
レベル 10
攻撃力 98
防御力 96
素早さ 22
スタミナ 68
状態耐性 34
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称号 ????
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