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第1章
第17話 薬と新たなスキル(前編)
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「すげぇ……」
「オークロードを――」
「本当に倒しちまいやがった!」
「すげぇぞ、兄ちゃん!」
俺の方に飛び込んできたのは、絶世の美女……なんかではなかった。
頭のはげ上がったおっさんである。
俺をギュッと抱きしめると、子どものように抱え上げた。
「デレクーリさん、ちょ、ちょっと……!」
「ただ者じゃねぇのは、店に入ってきた時から薄々わかってたけどよ。まさかオークロードを倒しちまうなんて」
デレクーリさんは、我を忘れて喜ぶ。
嬉しかったのだろう。
結果的に圧勝した訳だけど、強敵であったことは間違いない。
九死に一生を得て、完全にデレクーリさんは舞い上がっていた。
「それだけじゃないよ」
目の前に現れたのは、ウォルナーさんだった。
少し神妙な顔をしている。
何かあったのか、と思ったが、牙を剥きだし笑った。
「リック、胸を張っていい。あんたは、間違いなく勇者だよ」
「え?」
「あんたが倒したオークロードは、名前付きだ」
「「「「な、名前付き!!」」」」
俺の代わりに驚いたのは、周囲の冒険者たちである。
名前付きということは、普通のオークロードよりもさらに強かったということだ。
ウォルナーさんは証拠を見せる。
倒れたオークロードの脇の部分を指差した。
そこに書かれていたのは、ヴァズーという文字である。
名前付きの魔物のどこかには、このように名前が書かれていると、ウォルナーさんは教えてくれた。
確かにギレルにも似たような痣があったっけ。
「間違いねぇ……」
「オークロードの名前付きなんて初めて聞いたぜ」
「一体、どれぐらいのレベルなんだ」
「レベル40は下らないだろう」
「そりゃ強いわけだ……」
皆の視線が、オークロードが開けた大穴に向く。
穴は深く、底が見えない。
凄まじい威力を、ヴァズーが死した今も物語っていた。
「ウォルナーさん、1つ聞いていいですか?」
「なんだい?」
「名前付きって、どうして現れるんですか?」
「そうか。あんたは、まだ知らないんだね」
「何か理由があるんですか?」
「小難しいことじゃない。名前付きが何故、生まれるのか……。それは魔族の洗礼を受けた魔物だからさ」
「魔族の洗礼?」
魔族というのは、人類よりも決して多いわけではない。
異世界マーゴルドの全種族の中でも少ないほうなのだという。
その戦力を埋めるべく、力を持った魔物に自分の力を与える。
それが名前付きなのだと、ウォルナーさんは教えてくれた。
「勝手気ままにできるものでもないらしいけどね。何せ自分の力の一部を分け与えるんだ。自分が気に入り、認めたものにしか名前は与えないらしい」
「愛犬に名前を付けるようなものですか?」
「はは……。そんな可愛いものじゃないけどね」
でも……。
翻せば、この近くに魔物に名前を付けることができる魔族がいるってことじゃないのか?
それなら、最近あちこちで名前付きが出現するっていう情報も、あながち間違っていない。
いずれにしろ、まだ王都への脅威は去っていないということだ。
とにかく、今は帰ろう。
王都へ……。
「あの……」
冒険者の俺たちに声をかけたのは、村の村長だった。
オークは討伐されたというのに、浮かない顔である。
「みなさんにお願いがあります。薬を分けていただけないでしょうか?」
頭を下げた。
(※ 後編へ続く)
「オークロードを――」
「本当に倒しちまいやがった!」
「すげぇぞ、兄ちゃん!」
俺の方に飛び込んできたのは、絶世の美女……なんかではなかった。
頭のはげ上がったおっさんである。
俺をギュッと抱きしめると、子どものように抱え上げた。
「デレクーリさん、ちょ、ちょっと……!」
「ただ者じゃねぇのは、店に入ってきた時から薄々わかってたけどよ。まさかオークロードを倒しちまうなんて」
デレクーリさんは、我を忘れて喜ぶ。
嬉しかったのだろう。
結果的に圧勝した訳だけど、強敵であったことは間違いない。
九死に一生を得て、完全にデレクーリさんは舞い上がっていた。
「それだけじゃないよ」
目の前に現れたのは、ウォルナーさんだった。
少し神妙な顔をしている。
何かあったのか、と思ったが、牙を剥きだし笑った。
「リック、胸を張っていい。あんたは、間違いなく勇者だよ」
「え?」
「あんたが倒したオークロードは、名前付きだ」
「「「「な、名前付き!!」」」」
俺の代わりに驚いたのは、周囲の冒険者たちである。
名前付きということは、普通のオークロードよりもさらに強かったということだ。
ウォルナーさんは証拠を見せる。
倒れたオークロードの脇の部分を指差した。
そこに書かれていたのは、ヴァズーという文字である。
名前付きの魔物のどこかには、このように名前が書かれていると、ウォルナーさんは教えてくれた。
確かにギレルにも似たような痣があったっけ。
「間違いねぇ……」
「オークロードの名前付きなんて初めて聞いたぜ」
「一体、どれぐらいのレベルなんだ」
「レベル40は下らないだろう」
「そりゃ強いわけだ……」
皆の視線が、オークロードが開けた大穴に向く。
穴は深く、底が見えない。
凄まじい威力を、ヴァズーが死した今も物語っていた。
「ウォルナーさん、1つ聞いていいですか?」
「なんだい?」
「名前付きって、どうして現れるんですか?」
「そうか。あんたは、まだ知らないんだね」
「何か理由があるんですか?」
「小難しいことじゃない。名前付きが何故、生まれるのか……。それは魔族の洗礼を受けた魔物だからさ」
「魔族の洗礼?」
魔族というのは、人類よりも決して多いわけではない。
異世界マーゴルドの全種族の中でも少ないほうなのだという。
その戦力を埋めるべく、力を持った魔物に自分の力を与える。
それが名前付きなのだと、ウォルナーさんは教えてくれた。
「勝手気ままにできるものでもないらしいけどね。何せ自分の力の一部を分け与えるんだ。自分が気に入り、認めたものにしか名前は与えないらしい」
「愛犬に名前を付けるようなものですか?」
「はは……。そんな可愛いものじゃないけどね」
でも……。
翻せば、この近くに魔物に名前を付けることができる魔族がいるってことじゃないのか?
それなら、最近あちこちで名前付きが出現するっていう情報も、あながち間違っていない。
いずれにしろ、まだ王都への脅威は去っていないということだ。
とにかく、今は帰ろう。
王都へ……。
「あの……」
冒険者の俺たちに声をかけたのは、村の村長だった。
オークは討伐されたというのに、浮かない顔である。
「みなさんにお願いがあります。薬を分けていただけないでしょうか?」
頭を下げた。
(※ 後編へ続く)
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