縛り勇者の異世界無双 ~腕一本縛りからはじまる異世界攻略~

延野 正行

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第1章

第17.5話 薬と新たなスキル(後編)

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 ◆◇◆◇◆


 俺たちは現地に向かう。
 そこには、怪我をした村人たちが倒れていた。
 すでに数人の冒険者たちが、忙しそうに立ち回っている。
 傷薬や回復の魔法を与えていたが、まるで追いついていなかった。

「よし! 手伝うよ」

 ウォルナーさんは手慣れた動きで、怪我人を介抱していく。
 俺もルーナが作った回復薬を握りしめ、野戦病院と化した現場を忙しそうに動き回る。
 あっという間に、薬の瓶が1本だけになった。

 すると突然、袖を引かれる。
 振り返ると、戦場で出会ったあの少女が立っていた。

「お兄ちゃん、お父さんを助けて!」

 切実な叫びに、俺は少女の後をついていく。
 少女の父親が地面に寝転がり、腹の辺りを押さえて埋めていた。
 「あなた、しっかり!」と母親は呼びかける。
 だが、半ば意識を失いかけている父親が、応答することはない。
 ただうめき声を上げるだけである。

 事情を母親に尋ねると、元々少女の父親は胃痛持ちだったそうだ。
 毎日薬を飲んで、痛みを和らげていたのだが、その薬は家を焼け出された時に、全部失ってしまったらしい。

 胃痛に効果がある薬か。
 他の冒険者に尋ねてみたが、そんな都合良く持っている物ではない。
 俺が持っているのも、回復薬である。
 胃に効くとは思えない。

 その時だった。

『がああああああああああああ!!』

 突如、オークが顔を出した。
 どうやら1匹、打ち損じていたらしい。
 俺は再びカタナを抜く。

 シャッ!!

 一瞬にして、薙ぎ払った。
 とりあえず事なきを得る。
 だが、魔物よりも胃痛の方が問題だ。

 どうしたらいい。
 せめて、『縛る』ことによって、薬の効果を上げることできたら……。

 その時だった。

 てれててってってて~~。

 この緊迫した場面で、気が抜けるような音が鳴る。
 一体誰だ、と振り返ったが、誰も音を聞いていなかった。
 あんなに特徴がある音にも関わらずである。

 すると、文字が浮かんだ。


 リックはレベルが上がった。
 スキル『物体縛り』を覚えた。
 スキルの説明を受けますか? Y/N


 レベル?
 あ、そうか。
 俺、ずっとレベル1だったんだ。
 それでようやく上がったのか。

 ところで『物体縛り』ってなんだ?
 とりあえず、説明を聞いてみることにした。

 YES!



 『物体縛り』
 物体にデメリットを与えることによって、その効果を上昇または性質を変性させることができます。
 目的に対して、デメリットをご指示下さい。
 ただし、生き物に使うことはできません。



 なるほど。
 行動の制限ではなく、物体にデメリットを付加して、効果を上昇・変性させるスキルか。
 デメリットってのが、厄介だな。
 もっとまともなスキルがほしいものである。
 てか、こういう説明ってあったんだな。
 『縛りプレイ』も、最初からこういう風に教えてほしかったんだけど……。

 今は嘆いていても仕方ない。
 多少ご都合主義のような気もするが、幸いそのスキルを使う絶好のチャンスが、目の前にある。

 俺は回復薬を握りしめた。

「胃痛をなくすため、この薬を苦くする」

 すると、例の文字が浮かんだ。


 『縛り;胃痛をなくすため、薬を苦くする』を確認しました。
 『縛り』ますか?  Y/N


 YES!


 確認しました。『物体縛り』を開始します。


  名前    リック
  年齢    22
  種族    人間
  職業    勇者
 ――――――――――――――
  レベル      2
  攻撃力   1080
  防御力    320
  素早さ    400
  スタミナ   440
  状態耐性   810
 ――――――――――――――
  スキル   縛りプレイ
        物体縛り
        居合い Lv5
 ――――――――――――――
  現在の縛り 武器『カタナ』縛り(永続)
        胃痛をなくすため、薬を苦くする
 ――――――――――――――
  称号    ギルドマスター
        呪解マスター
        達人 Lv3
 ――――――――――――――
  補正    武器強度  +Lv80
        武器切れ味 +Lv70



「この薬を飲んでみてくれませんか?」

 俺はルーナが作ってくれた回復薬を差し出す。
 少女の母親は少し訝りながら、父親の口元に薬瓶を近づけた。
 痛みに耐える父親に、なんとか呑ませる。

 横の少女が手を合わせて祈った。
 母親も心配そうに見つめる。

 その時だった。


「にっっっっっっっがぁああああああああ!!」


 突然、父親は起き上がった。
 喉を押さえながら、そこら中をぴょんぴょんと飛び跳ねる。
 とてもさっきまで、胃痛に苦しんでいた患者とは思えなかった。

「あなた、胃痛は?」

 母親は尋ねる。
 父親はぺっと口の中に残る薬を吐き出しながら、俺たちの方を向いた。
 すると、お腹をさする。

「あれ? 痛くない……。治ってる!」

 みるみる少女の父親の顔に、生気が宿っていく。
 やったやった、と子どものように喜び始めた。

「パパ! 元気になったの!?」

 少女は不思議な顔で父親に近付いていく。
 その我が子を抱き上げた。

「ああ。奇跡だ。奇跡が起こったんだよ」

「パパ、元気になってよかった!」

 少女は父親に抱きついた。

「お兄ちゃん、ありがとう!」

「どう致しまして……」

 ルーナが作ってくれた薬を苦くしてしまったのは、申し訳なかったけど、たぶん今の少女の嬉しそうな顔を見たら、きっと許してくれるだろう。

 村人たちを救った俺と冒険者たちは、いよいよ王都へと凱旋した。



 PickUp!

  名前    ヴァズー
  呼称    オーク
  系統    魔物
  種族    人獣族
 ――――――――――――――
  レベル    42
  攻撃力   866
  防御力   890
  素早さ    90
  スタミナ  934
  状態耐性  139
 ――――――――――――――
  称号    統率者 Lv10
 ――――――――――――――
  補正    怪力 +Lv11
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