ボスは1人でいいと、魔王軍の裏ボスなのに暗黒大陸に追放されたので、適当に開拓してたら最強領地と嫁を手に入れた

延野 正行

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7章

第42話 どわーふと こうしょうする(前編)

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~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


「ど、奴隷??」

 俺は反射的に後退った。
 自分の本能が訴えかけている。
 このドワーフに近づいてならぬ、と……。

 しかし俺が1歩下がれば、メーリンは2歩詰め、俺が2歩下がれば、メーリンは3歩詰めてくる。
 気が付けば、目をきらに輝かせたメーリンが、俺の足下に這いつくばっていた。
 はあ、はあ、と荒々しい息づかいが聞こえる。

「はあ……。はあ……。大魔王様、どうか奴隷にして下さいアル。足の裏を舐めますから」
「うわっ!」

 本当にメーリンは俺の足に舌を伸ばしてきた。
 完全に我を忘れている。
 如何にもお金にがめつそうなキャラみたいだけど、どうやらそのためなら自分でもプライドを捨てられるらしい。

 てか、自ら人の足の裏を舐めようとしてくるなんて、変態じゃないか。

「どうして逃げるアルか? 大人しくするアルよ!!」

 ついにメーリンが跳び上がった。
 バッタのように跳躍したドワーフの娘は、一直線に俺に襲いかかってくる。


 ガコンッ!!


 決まった。
 と俺は思わず呟いた。
 飛んできたメーリンの顔に、ルナの右ストレートがめり込む。
 そのままずるりという感じで地面に落ちた。
 失神している。
 完全にカウンターが決まったらしい。

 ルナ……いつの間に、そんなボクシング技術を……。

「ダイチ様に気安く触れないで下さい」

 ルナは撃墜したばかりのメーリンを見下ろす。
 声には殺気が込められ、睥睨する瞳は薄暗かった。

 怖ひ……。

 俺は苦笑するしかなかった。


 ◆◇◆◇◆


 その後、俺たちは客人としてドワーフの城に招かれた。
 中の作りも見事だ。
 華美であんまり装飾がない一方で、動線や籠城戦などを想定した工夫が随所に盛り込まれている。
 武骨ではあれど、機能美という点では美しいと言える。
 有名企業の工場でも見ているかのようだ。

「いたたたた……」

 その城の中にある救護室で、ルナから回復スキルを受けていたのはメーリンだった。

 ルナに叩きのめされたおかげで、正気に戻ったらしい。
 最初に出会った時の理知的な表情に戻ると、片眼鏡に傷が入っていないか、確かめていた。

「やりすぎアル。わたし、これでも女の子ヨ。謝罪するアルヨ」

 メーリンは声を荒らげた。
 だが、ルナの表情は変わらない。
 ドワーフたちの怪我を一瞬にして癒やした聖女だったが、いまだ不機嫌な様子だった。

「ダイチ様を困らせたあなたが悪いんですよ」
「そうみゃ。そうみゃ。メーリンが悪い」
「うん! ルナがやらなかったら、私がやってたヽヽヽヽ

 憤慨していたのは、ルナだけではない。
 ミャアも、ステノも同意する。

「わたし、奴隷になりたい――そう言っただけアル」
「それが唐突すぎるんだよ、メーリンさん。……いきなり奴隷なんて」
「どうしてアル? ミャアも、その2人の女も、大魔王様の性奴隷じゃないアルか?」
「せ、性奴隷!!」

 いやいやいやいや……。
 そんなわけないだろ!
 ていうか、ミャアたちに失礼だ。
 そもそも肉体関係なんてないし!

「性・奴・隷……。魅惑の響きみゃ。ダイチにミャアの……キャー! 恥ずかしいみゃ」
「私が性奴隷……………………。ダイチ様が望むなら(ポッ!)」
「何を言っているんですか、2人とも。そもそも私は――――」

「あ――――はいはい。そこまでそこまで!」

 俺は慌てて止めに入る。
 ミャアもステノも何を言ってるの。
 ルナもカミングアウトしようとしてたし。
 俺には微塵もそんな気持ちはないんだからな。ないんだからな。

 大事な事なので、2回念を押しておくと、気を取り直し俺は言った。

「3人とも暗黒大陸を再生させるために、手伝ってもらってるだけさ」
「ホントアルか? なんか信じられないアル? 女3人と旅して何もないなんて、大魔王様はもしかしてあっちのご趣味を持つアルか。じゃあ、ドワーフでもとっておきの――」
「やめろやめろ! そっちの趣味でもないから」

 ドワーフのとっておきって何だよ!

「それで? 大魔王様が、こんな地下まで何用アルか?」
「実はドワーフに武器を作ってほしいんだ」

 俺はメーリンに事情を話した。



※ 後編へ続く
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