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7章

第42.5話 どわーふと こうしょうする(後編)

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「……ふーん。暗黒大陸の領主にねぇ。大魔王様は欲がないアルね。こんな大陸、鉄貨1枚でも安いアルよ」
「大丈夫。今は鉄貨1枚かもしれないけど、俺が金貨1万枚以上の価値にしてみせるよ」
「…………」
「どうした? メーリン」
「……な、なんでもないアル」

 一瞬、メーリンの顔が赤くなったような気がしたが……。
 気のせいかな?
 まさかまた奴隷にしてくれ、とか言い出すんじゃ。
 ちょっと距離を置いた方がいいかな。

「お金さえ出してくれれば、こっちは何も文句はないアル。協力するアル」
「武器を作ってくれるの?」
「そう聞こえなかったアルか?」

 やった!
 ドワーフたちに約束を取り付けることができたぞ。
 急にメーリンがしおらしくなったことが、ちょっと気にかかるけど、どうやら協力してくれるようだ。

「やりましたね、ダイチ様」
「ああ。これでルナに武器を作って上げられるな」
「ダイチ、ミャアにも! ミャアにも!!」
「もちろん! ステノも作ってもらおう」
「はい。ありがとうございます」

 皆が喜ぶ。
 とりあえず次戦への第1歩だ。
 このままメーリンたちドワーフも、協力して、村に来てくれるとありがたいな。
 いや、この城を根城にするのも悪くないかもしれない。

「ありがとう、メーリン」

 俺はそっとメーリンに手を差し出す。
 だが、メーリンは俺の手を見ることなく、言葉を続けた。

「話はまだ終わってないアル」
「え?」
「実は今、武器を作ろうにも作れないアルよ」
「みゃ! なんでみゃ、メーリン。さてはまた値上げを」
「違うアル。貧乏の獣人はともかく、大魔王様は踏み倒すようなことしないアル。大魔王様とは末永い取引を希望するアル」
「じゃあ……。他に何か事情があって、武器が作れないってこと?」
「その通りアル」

 メーリンはドワーフ用の小さなベッドの上で頷いた。

「実は、ここ最近武器を作る材料が不足してるアル」
「鉄鉱石とか。魔法鉱石ミスリルとか」
「そうアル」
「なんだ、そんなことか」

 俺は一旦救護室を出て、城の中庭に出る。
 落ちていた小石を大岩にし、さらに【言霊ネイムド】を使用する。


 【言霊ネイムド】――――鉄鉱石。


 ずんっと音を立てて現れたのは、巨大な鉄鉱石の塊だ。
 周りで見ていたドワーフからどよめきが起こる。

「これで武器が作れるか?」

 俺は振り返った。

「だ~~い~~ま~~お~~う~~さ~~ま~~!」

 メーリンが飛び込んでくる。
 その目にすでに血走っていた。
 ギュッと俺に抱きつく。
 一瞬のことで、ルナたちも反応できなかった。

「ちょ! メーリン!!」
「はあ……。はあ……。大魔王様! メーリンを、大魔王様の玩具にして下さいアル」

 目に金貨を浮かべて、メーリンはとんでもない事言い出す。

 ぎゃあああああ!!
 奴隷の次は玩具かよ!
 というか、欲望がダダ漏れなんだよ。

「やめろ! メーリン落ち着け!!」
「いやアル。一生離さないアル。こんな金づる、死んでも離すわけにはいかないアル!」

 おい! 言った! 今、言った。
 金づるっていったぞ。


 ゴンッ!!


 再びルナの鉄拳がメーリンの顔面を襲う。
 ようやく俺から離れたメーリンは地面に倒れ込んだ。

「忠告しましたよね。ダイチ様に気安く触れないでくださいって」

 ルナはゴキゴキと拳を鳴らしながら、倒れたメーリンを見下ろす。
 怖い……。俺の中で完全に某世紀末アニメの処刑BGMが流れてるんだが……。

 しかし、ひどい目に遭った。
 本当にメーリンは見境ないなあ。

 俺は倒れたメーリンを見下ろす。
 左頬が腫れ上がっていた。
 なのに、その乙女の顔は何故か幸せそうだった。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

神は言っている……。まだ死ぬ定めではないと……。
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