5 / 53
遠征先でも楽しく食事が出来るのです。
しおりを挟む
屋外での食事と言ったらやっぱりこれでしょ!、という事で、カレー作りに励む。
約60名の食事の支度をするのは、5人でしていてもとても大変である。
ここ、東の森に着いてから7日。
ようやく魔物の討伐が終わり、明日は一度、残っている魔物がいないか確認してから帰還となる予定だ。
今回の魔物は力もそこそこあり、なんと言っても数が多かった。
最初の3日ほどは寝ずに動いていたような気がする。忙し過ぎて記憶も曖昧だ。
そんな日々から解放されると思うと嬉しくて、思わず夕食当番に名乗り上げたほどだ。
ただ一つ、残念だと思うのが、遠征中24時間ずっと同じ空間にいれたシャロン様と離れ離れになってしまうという事だろうか。
シャロン様は帰還後、2日ほどの休日があり、その後遠征に出かけてしまう。
それに私も、3日ほどしたら、北の鉱山近くに生える貴重な薬草を取りに10日ほど出かけてしまうのだ。次に会えるのは早くて2週間後だろうか?シャロン様不足で死んでしまうかもしれない。
「セシリアー、もうみんなにカレー配ったから、セシリアも自分の分ついで食べちゃいなさい。」
そんなことを本気で考えていると、今回遠征で一緒だった第4騎士団魔術師副団長のアリア・フランソワーズ様が声を掛けてきた。
いつもはおろしている栗色の髪を今は一つに結んでおり、緑色の瞳をこちらに向けている。
女性にしては高めの167cmの身長に、私が目指すボンキュッボンのスタイルが素晴らしい。
歳は26で、顔立ちはキツめの美人である。
ちなみに、私とノア団長のケンカを止めるのは、いつもこの人である。ご迷惑おかけしています…。
ちなみのちなみに、迷惑をかけている片割れであるノア団長は、うーん、東の森の魔物くらい君たちだけでいけるでしょー?と言って別の遠征に向かっている。
「はーい!アリア副団長のも一緒についでおきますねー?」
そう返事をすると、よろしくー!と少し離れたところから返ってくる。
お盆に二つのカレーと水をのせ、近くの空いている席に座る。
焚き火を囲むようになっているその席は、夜になり冷えてきた体を暖めるのにもちょうど良い。
少しして、仕事を終わらせたアリア団長が来る。
どうぞ、とカレーと水がのっているお盆を渡す。
ありがとう、と優しく微笑み受け取るアリア副団長の姿に、周りの視線が突き刺さる。
美人って大変ですね、と視線を送ると、生温い視線を送られた。
少し冷めてしまったカレーを談笑しながら食べていると、アレクサンダー団長が近くに来た。
「アリア副団長、セシリア、お疲れ様。」
カレーのおかわりの帰りに見かけたからと、わざわざ声を掛けてくれたらしい。
山盛りになっているカレーを確認し、男の人はよく食べるなーと思う。
アレクサンダー団長がいるなら、シャロン様もいるかな?と周りを確認するが、どうやらアレクサンダー団長1人のようだ。
そんな、キョロキョロしている私に気付いたアレクサンダー団長が、シャロンならあそこだぞ、と教えてくれる。
指差された方を見ると、二つ隣の焚き火の場所に座っていた。
私が視線を向けた時に、ちょうどシャロン様も視線をあげる。
食事中に突撃するのはいけないと思い、笑顔でシャロン様に手を振ると、私達の間の焚き火に座っていた剣士の男が、俺?と自分を指差す。
お前じゃねーよ!分かるだろ、どうみてもシャロン様だよ!という視線をその剣士に向け、改めてシャロン様を見ると、紫の瞳は、もうこちらを見ていなかった。
「シャロン様がこっちを見てくれない…。」
「はは、相変わらずだなー。」
「セシリアも何であんな無愛想が好きなの?」
「え?だってシャロン様は私の王子様ですもん!」
昔、出会った時から大好きなんです!と言うと、アレクサンダー団長が、シャロンは幸せ者だな、と笑う。
アリア副団長は、いやいや王子って!、いつも冷たくて酷い態度しか取ってないよ⁉︎と困惑気味だ。
誰になんと言われようと、シャロン様は私の想い人で王子様だ。
残りのカレーを食べながら、あとでシャロン様の所に行こう!と決める。
驚かそうとして後ろから近づき、剣を向けられるのは、そう遠くない未来である。
____________________
「ねぇ、昔って、いつシャロンと会ったの?」
「そうですね…私が5歳の時だから、12年前ですね。」
「へぇ!思っていたより前だね!」
「あの日は、兄であるノア団長と森に出かけたのです。」
「あ、出会いも話してくれるんだね。」
「そこで、ウサギを見つけ、追い掛けてたら、ノア団長とはぐれてしまいまして。」
「うん。」
「道に迷って泣いていたら、」
「あ、分かった!そこにシャロンが来たんだ!」
「いえ、あ、まぁそうなんですけど、先に魔獣と遭遇しまして、食べられそうになっている私をシャロン様が助けてくれたんです!」
「すごいね、シャロンもまだ10歳くらいでしょ?勇気あるわね。」
「そうなんです!シュバって一太刀で倒したんですよ!かっこいい!そのあと、魔獣の血塗れの私をノア団長に会わせてくれて、無事に帰れました!シャロン様のおかげです!」
「…良いお話だなと思ったら…貴方、なんでそんなに汚れているの⁉︎」
「え?あぁ、魔獣の近くにいたからですかね?その後の私を見たシャロン様の瞳が冷たくて、私の心は痺れました!そして気付いたのです!これが、噂の、恋!だと!」
「ねぇそれ絶対違う。それにシャロンの瞳はきっと汚いものを見る瞳だよそれ。」
約60名の食事の支度をするのは、5人でしていてもとても大変である。
ここ、東の森に着いてから7日。
ようやく魔物の討伐が終わり、明日は一度、残っている魔物がいないか確認してから帰還となる予定だ。
今回の魔物は力もそこそこあり、なんと言っても数が多かった。
最初の3日ほどは寝ずに動いていたような気がする。忙し過ぎて記憶も曖昧だ。
そんな日々から解放されると思うと嬉しくて、思わず夕食当番に名乗り上げたほどだ。
ただ一つ、残念だと思うのが、遠征中24時間ずっと同じ空間にいれたシャロン様と離れ離れになってしまうという事だろうか。
シャロン様は帰還後、2日ほどの休日があり、その後遠征に出かけてしまう。
それに私も、3日ほどしたら、北の鉱山近くに生える貴重な薬草を取りに10日ほど出かけてしまうのだ。次に会えるのは早くて2週間後だろうか?シャロン様不足で死んでしまうかもしれない。
「セシリアー、もうみんなにカレー配ったから、セシリアも自分の分ついで食べちゃいなさい。」
そんなことを本気で考えていると、今回遠征で一緒だった第4騎士団魔術師副団長のアリア・フランソワーズ様が声を掛けてきた。
いつもはおろしている栗色の髪を今は一つに結んでおり、緑色の瞳をこちらに向けている。
女性にしては高めの167cmの身長に、私が目指すボンキュッボンのスタイルが素晴らしい。
歳は26で、顔立ちはキツめの美人である。
ちなみに、私とノア団長のケンカを止めるのは、いつもこの人である。ご迷惑おかけしています…。
ちなみのちなみに、迷惑をかけている片割れであるノア団長は、うーん、東の森の魔物くらい君たちだけでいけるでしょー?と言って別の遠征に向かっている。
「はーい!アリア副団長のも一緒についでおきますねー?」
そう返事をすると、よろしくー!と少し離れたところから返ってくる。
お盆に二つのカレーと水をのせ、近くの空いている席に座る。
焚き火を囲むようになっているその席は、夜になり冷えてきた体を暖めるのにもちょうど良い。
少しして、仕事を終わらせたアリア団長が来る。
どうぞ、とカレーと水がのっているお盆を渡す。
ありがとう、と優しく微笑み受け取るアリア副団長の姿に、周りの視線が突き刺さる。
美人って大変ですね、と視線を送ると、生温い視線を送られた。
少し冷めてしまったカレーを談笑しながら食べていると、アレクサンダー団長が近くに来た。
「アリア副団長、セシリア、お疲れ様。」
カレーのおかわりの帰りに見かけたからと、わざわざ声を掛けてくれたらしい。
山盛りになっているカレーを確認し、男の人はよく食べるなーと思う。
アレクサンダー団長がいるなら、シャロン様もいるかな?と周りを確認するが、どうやらアレクサンダー団長1人のようだ。
そんな、キョロキョロしている私に気付いたアレクサンダー団長が、シャロンならあそこだぞ、と教えてくれる。
指差された方を見ると、二つ隣の焚き火の場所に座っていた。
私が視線を向けた時に、ちょうどシャロン様も視線をあげる。
食事中に突撃するのはいけないと思い、笑顔でシャロン様に手を振ると、私達の間の焚き火に座っていた剣士の男が、俺?と自分を指差す。
お前じゃねーよ!分かるだろ、どうみてもシャロン様だよ!という視線をその剣士に向け、改めてシャロン様を見ると、紫の瞳は、もうこちらを見ていなかった。
「シャロン様がこっちを見てくれない…。」
「はは、相変わらずだなー。」
「セシリアも何であんな無愛想が好きなの?」
「え?だってシャロン様は私の王子様ですもん!」
昔、出会った時から大好きなんです!と言うと、アレクサンダー団長が、シャロンは幸せ者だな、と笑う。
アリア副団長は、いやいや王子って!、いつも冷たくて酷い態度しか取ってないよ⁉︎と困惑気味だ。
誰になんと言われようと、シャロン様は私の想い人で王子様だ。
残りのカレーを食べながら、あとでシャロン様の所に行こう!と決める。
驚かそうとして後ろから近づき、剣を向けられるのは、そう遠くない未来である。
____________________
「ねぇ、昔って、いつシャロンと会ったの?」
「そうですね…私が5歳の時だから、12年前ですね。」
「へぇ!思っていたより前だね!」
「あの日は、兄であるノア団長と森に出かけたのです。」
「あ、出会いも話してくれるんだね。」
「そこで、ウサギを見つけ、追い掛けてたら、ノア団長とはぐれてしまいまして。」
「うん。」
「道に迷って泣いていたら、」
「あ、分かった!そこにシャロンが来たんだ!」
「いえ、あ、まぁそうなんですけど、先に魔獣と遭遇しまして、食べられそうになっている私をシャロン様が助けてくれたんです!」
「すごいね、シャロンもまだ10歳くらいでしょ?勇気あるわね。」
「そうなんです!シュバって一太刀で倒したんですよ!かっこいい!そのあと、魔獣の血塗れの私をノア団長に会わせてくれて、無事に帰れました!シャロン様のおかげです!」
「…良いお話だなと思ったら…貴方、なんでそんなに汚れているの⁉︎」
「え?あぁ、魔獣の近くにいたからですかね?その後の私を見たシャロン様の瞳が冷たくて、私の心は痺れました!そして気付いたのです!これが、噂の、恋!だと!」
「ねぇそれ絶対違う。それにシャロンの瞳はきっと汚いものを見る瞳だよそれ。」
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
弟に前世を告白され、モブの私は悪役になると決めました
珂里
ファンタジー
第二王子である弟に、ある日突然告白されました。
「自分には前世の記憶がある」と。
弟が言うには、この世界は自分が大好きだったゲームの話にそっくりだとか。
腹違いの王太子の兄。側室の子である第二王子の弟と王女の私。
側室である母が王太子を失脚させようと企み、あの手この手で計画を実行しようとするらしい。ーーって、そんなの駄目に決まってるでしょ!!
……決めました。大好きな兄弟達を守る為、私は悪役になります!
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる