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挑戦に失敗は付き物です。
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ボフンっ
そんな音と共に、奇抜な色をした煙があがった。
「うぅ…失敗した…。」
先日王宮からいただいた薬草を使い、新しいポーションを作成している。
配合は完璧だったはず…。何がいけなかったのだろうか、と首をかしげる。
「あらぁー、セシリー、まぁた失敗しちゃったんだねぇ。」
3回、今、私は失敗している。
植物園に薬草を採りに行っていた、ノア団長が研究所に入ってきた。
「ここで採れる物とは違うからね、もう少し魔力を抑えてみたら?」
少し離れた場所で、同じくポーション作りをしていたアリア副団長も声をかけてくる。
私は魔力を注ぎ過ぎていたのか…。次は抑え気味にしよう、と失敗した鍋を洗った。
それから50分程。
「で、きたー!」
保存容器に入れた、綺麗な水色をしたポーションを持って、アリア副団長の元に行く。
アリア副団長!出来ました!と話しかけると、うん、良かったわ、とても綺麗ね、と微笑んでくれた。
周りにいた魔術師の人たちからも褒められて、少し照れる。
ふっふーん、とちょっと得意げに鼻を鳴らし、ノア団長の元へも行く。
「ノア団長、見てください、この、出来上がったポーションを!」
「ふふっ、上手にできたねぇ。」
「そうでしょう!そうでしょう!さぁ、もっと私を褒め称えても良いのですよ!」
そう言えば、はいはい、すごいすごーい!ね、もうわかったからぁ、僕の邪魔はしないでねぇ、とシッシッと追い払う仕草をされた。
冷たい男だ、と踵を返し、使った鍋たちを洗う。
時刻はお昼を少し過ぎた頃。
みんな、ポーション作りに励んでいるため、私は一人、食堂に向かった。
「お、セシリア!」
もうすぐ食堂に着くという時に、ちょうど食堂から出てきたアレクサンダー団長に呼びかけられる。
「こんにちは、アレクサンダー団長。…シャロン様も!」
アレクサンダー団長に挨拶をすると、食堂から新たに人が出てきた。今日も素敵なシャロン様だ。
眉間に皺を寄せ、険しい顔をしたシャロン様は、アレクサンダー団長の隣に並んだ。
「今日午前中に王宮に行ったんだが、そこでコレを預かったんだ。」
そう言って、アレクサンダー団長は懐から一枚の封筒を取り出す。
かわいい薄ピンクのその封筒には、ルシヨン・カストューシュの名前が記されていた。
「ルシヨンが手紙って珍しいなと思ったが、お前達、仲良かったのか?」
「仲が良い…というと違う気がしますね…。」
私達はライバルですから、と言うと、何のライバルだよ、とアレクサンダー団長は笑った。
じゃあ、渡したからな、と去って行くアレクサンダー団長に、ありがとうございました、とお辞儀をした。
「……。」
「…あ、あの、シャロン様?」
いつものようにアレクサンダー団長と行くだろうと思っていたシャロン様が、目の前から動かない。
いや、私は一緒にいれて嬉しいんですけどね。
ただ、無言で見つめられると、さすがの私も困っちゃう☆みたいな…?
「…………。」
「…え、えーと……。」
食堂から出てきたままの険しい表情で見つめられる事数分。
いつにない状況にどうしたものかと視線をチラつかせる。
周囲の人が、どうしたんだ?とチラ見して行く中、シャロン様がようやく口を開いた。
「ルシヨンとは…どう言う関係なんだ?」
「あ、え?ルシヨン副団長ですか?」
あれ、さっきも言ったはずだが、と思いつつ、もう一度ライバルです、と答える。
何の?と聞かれ、口を閉ざしてしまう。
私だけの事なら言っても良いが、ルシヨン副団長は多分、秘密にしているだろう。
妹と極限られた一部の人に言われる私であるが、そこまでアホでもバカでもない。
「…すみません、シャロン様でもそれは言えません。」
あ、でも、危険な事じゃないですよ?と言えば、そうか、と小さく呟かれた。
それから、2、3個似たような質問をされ、シャロン様は去って行った。
去り際に、その手紙は燃やして捨てろと言っていたが、その言葉の意味がわからず、首をかしげる。
今日は首をかしげることが多いいなぁ、と思いながら、私は食堂に入った。
____________________
「アレクサンダー団長!」
「おっ、ルシヨンじゃないか、久しぶりだな。」
「お久しぶりです。…それに、シャロン副団長も。」
「あぁ。」
「どうしたんだ、何か用事があるんだろう?」
「はい、すみません、今日自分が王宮から出ることが叶わず、この手紙をセシリアに渡していただけませんか?」
「なぜセシリアに?」
「こらこらシャロン、凄むな。…すまない、ルシヨン。この手紙をセシリアに渡せば良いんだな。分かった、預かろう。」
「いえ、…ありがとうございます。」
「それにしてもお前が手紙とは珍しいな。」
「まぁ、そうですね…。」
「ははっ、ま、とりあえずセシリアにちゃんと渡しとくよ。」
「よろしくお願いします。」
「…………。」
そんな音と共に、奇抜な色をした煙があがった。
「うぅ…失敗した…。」
先日王宮からいただいた薬草を使い、新しいポーションを作成している。
配合は完璧だったはず…。何がいけなかったのだろうか、と首をかしげる。
「あらぁー、セシリー、まぁた失敗しちゃったんだねぇ。」
3回、今、私は失敗している。
植物園に薬草を採りに行っていた、ノア団長が研究所に入ってきた。
「ここで採れる物とは違うからね、もう少し魔力を抑えてみたら?」
少し離れた場所で、同じくポーション作りをしていたアリア副団長も声をかけてくる。
私は魔力を注ぎ過ぎていたのか…。次は抑え気味にしよう、と失敗した鍋を洗った。
それから50分程。
「で、きたー!」
保存容器に入れた、綺麗な水色をしたポーションを持って、アリア副団長の元に行く。
アリア副団長!出来ました!と話しかけると、うん、良かったわ、とても綺麗ね、と微笑んでくれた。
周りにいた魔術師の人たちからも褒められて、少し照れる。
ふっふーん、とちょっと得意げに鼻を鳴らし、ノア団長の元へも行く。
「ノア団長、見てください、この、出来上がったポーションを!」
「ふふっ、上手にできたねぇ。」
「そうでしょう!そうでしょう!さぁ、もっと私を褒め称えても良いのですよ!」
そう言えば、はいはい、すごいすごーい!ね、もうわかったからぁ、僕の邪魔はしないでねぇ、とシッシッと追い払う仕草をされた。
冷たい男だ、と踵を返し、使った鍋たちを洗う。
時刻はお昼を少し過ぎた頃。
みんな、ポーション作りに励んでいるため、私は一人、食堂に向かった。
「お、セシリア!」
もうすぐ食堂に着くという時に、ちょうど食堂から出てきたアレクサンダー団長に呼びかけられる。
「こんにちは、アレクサンダー団長。…シャロン様も!」
アレクサンダー団長に挨拶をすると、食堂から新たに人が出てきた。今日も素敵なシャロン様だ。
眉間に皺を寄せ、険しい顔をしたシャロン様は、アレクサンダー団長の隣に並んだ。
「今日午前中に王宮に行ったんだが、そこでコレを預かったんだ。」
そう言って、アレクサンダー団長は懐から一枚の封筒を取り出す。
かわいい薄ピンクのその封筒には、ルシヨン・カストューシュの名前が記されていた。
「ルシヨンが手紙って珍しいなと思ったが、お前達、仲良かったのか?」
「仲が良い…というと違う気がしますね…。」
私達はライバルですから、と言うと、何のライバルだよ、とアレクサンダー団長は笑った。
じゃあ、渡したからな、と去って行くアレクサンダー団長に、ありがとうございました、とお辞儀をした。
「……。」
「…あ、あの、シャロン様?」
いつものようにアレクサンダー団長と行くだろうと思っていたシャロン様が、目の前から動かない。
いや、私は一緒にいれて嬉しいんですけどね。
ただ、無言で見つめられると、さすがの私も困っちゃう☆みたいな…?
「…………。」
「…え、えーと……。」
食堂から出てきたままの険しい表情で見つめられる事数分。
いつにない状況にどうしたものかと視線をチラつかせる。
周囲の人が、どうしたんだ?とチラ見して行く中、シャロン様がようやく口を開いた。
「ルシヨンとは…どう言う関係なんだ?」
「あ、え?ルシヨン副団長ですか?」
あれ、さっきも言ったはずだが、と思いつつ、もう一度ライバルです、と答える。
何の?と聞かれ、口を閉ざしてしまう。
私だけの事なら言っても良いが、ルシヨン副団長は多分、秘密にしているだろう。
妹と極限られた一部の人に言われる私であるが、そこまでアホでもバカでもない。
「…すみません、シャロン様でもそれは言えません。」
あ、でも、危険な事じゃないですよ?と言えば、そうか、と小さく呟かれた。
それから、2、3個似たような質問をされ、シャロン様は去って行った。
去り際に、その手紙は燃やして捨てろと言っていたが、その言葉の意味がわからず、首をかしげる。
今日は首をかしげることが多いいなぁ、と思いながら、私は食堂に入った。
____________________
「アレクサンダー団長!」
「おっ、ルシヨンじゃないか、久しぶりだな。」
「お久しぶりです。…それに、シャロン副団長も。」
「あぁ。」
「どうしたんだ、何か用事があるんだろう?」
「はい、すみません、今日自分が王宮から出ることが叶わず、この手紙をセシリアに渡していただけませんか?」
「なぜセシリアに?」
「こらこらシャロン、凄むな。…すまない、ルシヨン。この手紙をセシリアに渡せば良いんだな。分かった、預かろう。」
「いえ、…ありがとうございます。」
「それにしてもお前が手紙とは珍しいな。」
「まぁ、そうですね…。」
「ははっ、ま、とりあえずセシリアにちゃんと渡しとくよ。」
「よろしくお願いします。」
「…………。」
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