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たまにするお出かけは、時間を忘れてしまうものです。
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ルシヨン副団長に、手紙を貰ってから数日。
間にあった、4日間の遠征を終えた今日は休日。
ルシヨン副団長とのお出かけの日である。
顔を洗い、着替え終わると兄の元に行く。髪を結ってもらうためだ。
手先の器用な兄は、私を見るなり、その服、この間作ったポーションみたいな色だねぇ、と言った。褒めているのかいないのか。きっと褒めているのだろう、そういうことにした。
この世界では、女性が素足を見せるのは恥である、という風習から、今回私は、足首まである淡い水色の、ふわっとしたワンピースである。
ワンピースの裾と手首までの長さがあるその服の袖口には、ピンクの糸で刺繍がされており、ちょっと良いところのお嬢様、街にお出かけ☆風である。
それに、淡いピンクのあまりヒールがない靴を履き、小ぶりなネックレスとピアスを着け、両サイドで編み込み、後ろで纏められた髪を確認し、おぉ、と声が出る。
おいでぇ、せっかくのおでかけだしー、お化粧しようかぁ、と言う兄にわーい!お願いしまっす!と席に着いた。
「うんうん、かわいーよぉ、セシリー!さすが僕だねぇ!」
薄く、しかし化粧をしていると分かる顔は、いつもより大人びて見える。
これなら、コルセットでもあまり目立つことが出来なかった体の凹凸をカバーできそうだ、と思う。
鏡を見る私に、ね、かわいいでしょー?と笑顔の兄は、どうしてか機嫌が良い。
そんな私の視線に気づいた兄は、ふふっ、だってぇ、セシリアをかわいくできるんだもーん、とよくわからないことを言っていた。
兄の部屋で色々と準備をしていると、約束の時間が迫っていた。
慌てて部屋を出て、待ち合わせ場所であるこの敷地の入り口に向かう。
皆、仕事なのだろうか、いつも通るより遅い時間の今、すれ違う人はいなかった。
待ち合わせ場所に着くと、先に着いていたルシヨン副団長がこっちだよ、と笑顔で手を振る。
少し癖のある、首半ばまでの長さの髪を、いつもはそのままにしているが、今日はスズメの尻尾みたいに後ろで結んでいる。
目にかかりそうな長さの前髪を横に流し、結べなかった横髪は垂らされている。
服装は、焦げ茶色のショートブーツにベージュのパンツとベスト、白のシャツを着ている姿はとても爽やかで、彼に良く似合っていた。
「おはようございます、ルシヨン副団長。」
「おはよう、セシリア。とても綺麗だね。」
そう言って微笑むルシヨン副団長に、え?ありがとうございます、この服、朝兄にも褒められたんです、と返すと、うん、服もなんだけどね、と苦笑いされる。
ルシヨン副団長も素敵ですね、と言うと、ありがとう、と微笑まれた。
「ねぇ、セシリア、今日はお互い休日なんだし、その、副団長呼びやめない?」
王都まで降りる道のり、馬車に乗って少しした時、ルシヨン副団長が、ほら、なんか副団長呼びされてると、休んでいる気分になれなくて…、と言う。
「あ、そうですよね。…じゃあ、ルシヨン様、とお呼びしても?」
「…あぁ、うん、それで良い。」
私がそう呼びかければ、少し横を向いたルシヨン副団長…もとい、ルシヨン様から返事が来た。
十数分程して着いた王都の街は、人々でとても賑わっている。
ルシヨン様のエスコートで馬車から降りた私は、久しぶりの街に心が弾む。
目的地であるカフェにはお昼頃行くとして、私達はお店を見て回ることにした。
「あ、見てください!このブレスレットも可愛いですよ!」
「あ、本当だね、すごく可愛い。」
「ね!あっ、あっちの髪留めも…。」
三つ目に寄ったお店は、今、とても人気があると評判のアクセサリーショップ。
歩いていて見かけた、女性ばかりのその場所に、ルシヨン様を連れて行くのを戸惑ったのだが、どうしたの?行かないの?と手を引かれ、呆気なく入店してしまった。
店中の女性の視線を一人占めしているルシヨン様は、あ、これとかどう?と全く気にしていないようだ。
うん、やっぱりかわいい、と微笑むルシヨン様に店内がざわつくが、私ばかりがそれを気にしているのもバカらしくなり、一緒に楽しむことにした。
一通りお店を見て回っていると、いつの間にか、お昼時間を過ぎていたらしい。
わぁ!すみません、ルシヨン様!お腹空きましたよね⁉︎と焦る私に、ふふっ、大丈夫だよ、…それに、楽しそうなセシリア見てて俺も楽しいし、と微笑んでいた。
こう言う風にできるから、この人は人気があるんだな、と感心してしまった。
気を取り直して、カフェに向かうと、ちょうど人も空いてきた時間だった様で、すぐに席に座ることができた。
メニューを確認し、料理を決める。
ルシヨン様も決まった様で、店員さんに料理と、お目当てである食後のデザートを頼んだ。
「んー!美味しい!」
話題になるだけあって、本当に沢山の果物がのったデザートは味もとても美味しい。
ルシヨン様の頼んだケーキも一口もらったりあげたりしながら、楽しくすご過ごすことができた。
「今日はありがとうございました。」
「いえいえ、俺の方こそありがとうね。」
久しぶりのお出かけは、とても楽しく、美味しいものまで食べれて大満足だ。
今まではライバルとして見ていたが、今日でだいぶ印象が変わってきた気がする。
「あ、セシリア。」
じゃあ、と部屋に戻ろうかとする私を、ルシヨン様が呼び止める。
「これ、今日のお礼ね。」
そう言って、手のひらサイズの箱を手渡してきた。
「え!そんな、お礼だなんて!」
いっぱい食べれましたし、楽しかったですし!と遠慮する私に、セシリアがいなかったら、今日こんなに楽しく出かけることもなかったから、ね?と言われると、受け取るしかなかった。
開けていいですか?という私に、うん、どうぞ、と微笑む彼を確認し、リボンを解く。箱を開けると、綺麗なマゼンタ色の石が埋め込まれた花の形をしたネックレスだった。
「あ、これ…。」
「あそこのアクセサリーショップの。気に入ってたみたいだから…。」
髪留めと迷ったんだけどね、と言うルシヨン様に、このネックレス、とても素敵です!と言うと、良かった、と微笑んだ。
「それでさ、セシリア、俺、」
「あっ、セシリーだぁ!おかえりー。」
何かを言おうとするルシヨン様の声を遮る様に、後ろから名前を呼ばれる。
ただいま、と言えば、うんうん、ぴったり17時だったねぇ、とうなずいていた。
_____________________
「…なんであと少し待ってくれなかったんですか。」
「まぁまぁ、そんなに怒らないでー?」
「絶対ワザとだったでしょう。」
「ふふっ、まぁねぇ。だって、最初に言ったでしょー?セシリーは17時までしかお貸ししませーんって。」
「はぁ…。もういいです。…それより、あれどうにかしてください。」
「んー?あれってぇ?」
「…カフェに行った時、これ美味しいですよって、あーんってされると思いませんでしたし、あ、美味しそうですね、ってあーん待ちされるとは思いませんでした。…すっごくかわいかった!」
「あー、ごめんねぇ、よくしてるからセシリー的には普通だったのかもぉ。一応言っておくよぉ。」
「え?よくしてる…?……まぁ、俺のためにも、本当によろしくお願いします。」
間にあった、4日間の遠征を終えた今日は休日。
ルシヨン副団長とのお出かけの日である。
顔を洗い、着替え終わると兄の元に行く。髪を結ってもらうためだ。
手先の器用な兄は、私を見るなり、その服、この間作ったポーションみたいな色だねぇ、と言った。褒めているのかいないのか。きっと褒めているのだろう、そういうことにした。
この世界では、女性が素足を見せるのは恥である、という風習から、今回私は、足首まである淡い水色の、ふわっとしたワンピースである。
ワンピースの裾と手首までの長さがあるその服の袖口には、ピンクの糸で刺繍がされており、ちょっと良いところのお嬢様、街にお出かけ☆風である。
それに、淡いピンクのあまりヒールがない靴を履き、小ぶりなネックレスとピアスを着け、両サイドで編み込み、後ろで纏められた髪を確認し、おぉ、と声が出る。
おいでぇ、せっかくのおでかけだしー、お化粧しようかぁ、と言う兄にわーい!お願いしまっす!と席に着いた。
「うんうん、かわいーよぉ、セシリー!さすが僕だねぇ!」
薄く、しかし化粧をしていると分かる顔は、いつもより大人びて見える。
これなら、コルセットでもあまり目立つことが出来なかった体の凹凸をカバーできそうだ、と思う。
鏡を見る私に、ね、かわいいでしょー?と笑顔の兄は、どうしてか機嫌が良い。
そんな私の視線に気づいた兄は、ふふっ、だってぇ、セシリアをかわいくできるんだもーん、とよくわからないことを言っていた。
兄の部屋で色々と準備をしていると、約束の時間が迫っていた。
慌てて部屋を出て、待ち合わせ場所であるこの敷地の入り口に向かう。
皆、仕事なのだろうか、いつも通るより遅い時間の今、すれ違う人はいなかった。
待ち合わせ場所に着くと、先に着いていたルシヨン副団長がこっちだよ、と笑顔で手を振る。
少し癖のある、首半ばまでの長さの髪を、いつもはそのままにしているが、今日はスズメの尻尾みたいに後ろで結んでいる。
目にかかりそうな長さの前髪を横に流し、結べなかった横髪は垂らされている。
服装は、焦げ茶色のショートブーツにベージュのパンツとベスト、白のシャツを着ている姿はとても爽やかで、彼に良く似合っていた。
「おはようございます、ルシヨン副団長。」
「おはよう、セシリア。とても綺麗だね。」
そう言って微笑むルシヨン副団長に、え?ありがとうございます、この服、朝兄にも褒められたんです、と返すと、うん、服もなんだけどね、と苦笑いされる。
ルシヨン副団長も素敵ですね、と言うと、ありがとう、と微笑まれた。
「ねぇ、セシリア、今日はお互い休日なんだし、その、副団長呼びやめない?」
王都まで降りる道のり、馬車に乗って少しした時、ルシヨン副団長が、ほら、なんか副団長呼びされてると、休んでいる気分になれなくて…、と言う。
「あ、そうですよね。…じゃあ、ルシヨン様、とお呼びしても?」
「…あぁ、うん、それで良い。」
私がそう呼びかければ、少し横を向いたルシヨン副団長…もとい、ルシヨン様から返事が来た。
十数分程して着いた王都の街は、人々でとても賑わっている。
ルシヨン様のエスコートで馬車から降りた私は、久しぶりの街に心が弾む。
目的地であるカフェにはお昼頃行くとして、私達はお店を見て回ることにした。
「あ、見てください!このブレスレットも可愛いですよ!」
「あ、本当だね、すごく可愛い。」
「ね!あっ、あっちの髪留めも…。」
三つ目に寄ったお店は、今、とても人気があると評判のアクセサリーショップ。
歩いていて見かけた、女性ばかりのその場所に、ルシヨン様を連れて行くのを戸惑ったのだが、どうしたの?行かないの?と手を引かれ、呆気なく入店してしまった。
店中の女性の視線を一人占めしているルシヨン様は、あ、これとかどう?と全く気にしていないようだ。
うん、やっぱりかわいい、と微笑むルシヨン様に店内がざわつくが、私ばかりがそれを気にしているのもバカらしくなり、一緒に楽しむことにした。
一通りお店を見て回っていると、いつの間にか、お昼時間を過ぎていたらしい。
わぁ!すみません、ルシヨン様!お腹空きましたよね⁉︎と焦る私に、ふふっ、大丈夫だよ、…それに、楽しそうなセシリア見てて俺も楽しいし、と微笑んでいた。
こう言う風にできるから、この人は人気があるんだな、と感心してしまった。
気を取り直して、カフェに向かうと、ちょうど人も空いてきた時間だった様で、すぐに席に座ることができた。
メニューを確認し、料理を決める。
ルシヨン様も決まった様で、店員さんに料理と、お目当てである食後のデザートを頼んだ。
「んー!美味しい!」
話題になるだけあって、本当に沢山の果物がのったデザートは味もとても美味しい。
ルシヨン様の頼んだケーキも一口もらったりあげたりしながら、楽しくすご過ごすことができた。
「今日はありがとうございました。」
「いえいえ、俺の方こそありがとうね。」
久しぶりのお出かけは、とても楽しく、美味しいものまで食べれて大満足だ。
今まではライバルとして見ていたが、今日でだいぶ印象が変わってきた気がする。
「あ、セシリア。」
じゃあ、と部屋に戻ろうかとする私を、ルシヨン様が呼び止める。
「これ、今日のお礼ね。」
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「え!そんな、お礼だなんて!」
いっぱい食べれましたし、楽しかったですし!と遠慮する私に、セシリアがいなかったら、今日こんなに楽しく出かけることもなかったから、ね?と言われると、受け取るしかなかった。
開けていいですか?という私に、うん、どうぞ、と微笑む彼を確認し、リボンを解く。箱を開けると、綺麗なマゼンタ色の石が埋め込まれた花の形をしたネックレスだった。
「あ、これ…。」
「あそこのアクセサリーショップの。気に入ってたみたいだから…。」
髪留めと迷ったんだけどね、と言うルシヨン様に、このネックレス、とても素敵です!と言うと、良かった、と微笑んだ。
「それでさ、セシリア、俺、」
「あっ、セシリーだぁ!おかえりー。」
何かを言おうとするルシヨン様の声を遮る様に、後ろから名前を呼ばれる。
ただいま、と言えば、うんうん、ぴったり17時だったねぇ、とうなずいていた。
_____________________
「…なんであと少し待ってくれなかったんですか。」
「まぁまぁ、そんなに怒らないでー?」
「絶対ワザとだったでしょう。」
「ふふっ、まぁねぇ。だって、最初に言ったでしょー?セシリーは17時までしかお貸ししませーんって。」
「はぁ…。もういいです。…それより、あれどうにかしてください。」
「んー?あれってぇ?」
「…カフェに行った時、これ美味しいですよって、あーんってされると思いませんでしたし、あ、美味しそうですね、ってあーん待ちされるとは思いませんでした。…すっごくかわいかった!」
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