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遠征前の一日。
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「体力回復のポーションが足りないよー?」
「テント備品積んだ?」
「あっ!その荷物こっちにお願いしまーす!」
明日の遠征に伴い、必要な資材を荷馬車に積んでいく。
今回の遠征先は、西の鉱山を少し過ぎた森の中。
鉱山で働く村人から、夜な夜な雄叫びのようなものが聞こえるとの情報が入り、今回私達が確認に行くことになった。
第3騎士団からはまだ情報が入ってきていないとの事だが、あまり村人やそこで働く兵士たちを不安にさせたままではいけないだろうと言う事で、私にとっては初めての、魔物の情報が全くない遠征となる。
西の方面に行くのは、あのとき以来だと、記憶が呼び起こされる。
あまり考えないようにしてはいるが、ふとした瞬間に思い出のだ。
今回は第4騎士団の者しかいないとは言え、本当は行きたくないな…と、はぁ…とため息をつけば、セシリアー!これ持って行ってー!とアリア副団長に呼ばれた。
はーい!と返事をした私は、駆け足で向かったのだった。
「よいしょっ…と、…これで最後ですか?」
「うん、それで終わりだよ。」
周りで一緒に積んでいた者たちと、お疲れさま、と言って荷馬車の幌を閉める。
朝から働き詰めだったためか、お腹がグゥーと鳴った。
隣でそれを聞いていたアリア副団長が、ふふっと笑い、少し早いけどお昼にしようか。と私の手を引いた。
食堂に着いた私達は、皿を手に取り料理を取っていく。
ちなみに、誰も気にしてはいないと思うが、ノア団長はアレクサンダー団長とオギンスキ団長と一緒に、明日の遠征出発の報告に王宮に行っている。
団長が3人共揃っての遠征は久しぶりだなーと思っていると、アリア副団長に料理をどんどんのせられていた。
「わわっ!そんなに食べれません!」
「もう、何言ってるの?明日から遠征よー?食べられる時に食べなきゃ!」
「せっかくノア団長もいないのに…。」
「ダメよ、セシリア。私はそのノア団長からくれぐれもよろしくってお昼のこと頼まれてるんだから。」
私のためにも食べてよねー。と言ってアリア副団長は笑う。
眉間に皺を寄せる私の頭を撫で、ほら、内緒だけど果物も食べよ?と言って、料理が盛られている皿より一回り小さな皿をヒラヒラさせるアリア副団長は、私の扱いをよくわかっていらっしゃる。
ふっふーんと鼻歌を歌いながらアリア副団長に近付く。
まさかその皿に半分以上アリア副団長のケーキが乗り、あまりのっていない果物に私が愕然とするのは、きっと確信犯だったと思う。
食事も終わり、遠征に行く前に終わらせられる仕事をしようと研究所に向かう。
「わぁっ!」
あと少しで研究所だというとき、角を曲がると誰かとぶつかった。
思わずよろければ、腕を掴まれる。
「す、すみません…!…ぁ、シャロン様⁉︎」
私がぶつかった人物は、最近避けてしまっていた私の想い人で。
「あ、あの…。」
私をジッと見つめるその瞳に、居心地の悪さを感じるが、私は決めたのだ!と気合いを入れる。
今までのように出来るか分からなかったが、私は、シャロン様と話したいし、今までみたいに会いに行きたい。
あれは酔ったシャロン様からのご褒美だったのだ。
それに、自分のここ数日の行動は、恋する乙女としては失格だ。
そう思って、出来る限りの笑顔を浮かべ、話しかける。
「シャロン様!こんにちは!私ですね、」
「…今、お前と話している暇はない。」
「…え、シャロン様……?」
思わず、離された腕を見つめ、シャロン様を見る。
わたしの話を遮る様に話したその人は、別の角を曲がり、姿が見えなくなる。
「シャロン様……。」
今までも、こんなことあったではないか。
…でも、あんな風に、シャロン様が話を遮っていなくなるなんて……あっただろうか…?
誰もいないその場所を、ただ呆然と眺める。
最後に見た、冷たい色をした紫色が、わたしの目に焼き付いて離れなかった。
あれ、セシリア、ここで何してるの?と突っ立ていた私に声をかけてくれたのは、植物園帰りのアリア副団長だった。
アリア副団長ー!と青い顔で話し出す私に、とりあえず研究所に行こうか、と言って手を引いてくれる。
椅子に座り、アリア副団長がいれてくれたミルクティーを目の前に話し出した私に、聞き終わった彼女が言った。
「それって、怒っているんじゃない?」
「やっぱり、そうなんですかね…。」
最近、避けまくっていたものな…と反省する。
「明日から遠征なんだから、そんなに気になるなら早く謝っておいで。」
「はい…行ってきます。」
そう言って研究所を出た私は、シャロン様を探す。
しかしその日、目的の人物は見つかることなく、私は暗い気持ちのまま遠征に出発することになったのだった。
____________________
「セシリー?どうしたのぉ?元気ないねー?」
「ノア団長…シャロン様見かけませんでしたか?」
「んー?シャロン?見なかったよぉ?」
「そうですか……。」
「なにー?喧嘩でもしたぁ?」
「……。」
「…そっかぁ。じゃぁちょっとお兄ちゃんお仕事できたから行ってくるねぇ。」
「…行ってらっしゃい。」
「いやいやいや!行かしちゃいけないよ⁉︎セシリア!このノア団長止めて!お願いだから!」
「テント備品積んだ?」
「あっ!その荷物こっちにお願いしまーす!」
明日の遠征に伴い、必要な資材を荷馬車に積んでいく。
今回の遠征先は、西の鉱山を少し過ぎた森の中。
鉱山で働く村人から、夜な夜な雄叫びのようなものが聞こえるとの情報が入り、今回私達が確認に行くことになった。
第3騎士団からはまだ情報が入ってきていないとの事だが、あまり村人やそこで働く兵士たちを不安にさせたままではいけないだろうと言う事で、私にとっては初めての、魔物の情報が全くない遠征となる。
西の方面に行くのは、あのとき以来だと、記憶が呼び起こされる。
あまり考えないようにしてはいるが、ふとした瞬間に思い出のだ。
今回は第4騎士団の者しかいないとは言え、本当は行きたくないな…と、はぁ…とため息をつけば、セシリアー!これ持って行ってー!とアリア副団長に呼ばれた。
はーい!と返事をした私は、駆け足で向かったのだった。
「よいしょっ…と、…これで最後ですか?」
「うん、それで終わりだよ。」
周りで一緒に積んでいた者たちと、お疲れさま、と言って荷馬車の幌を閉める。
朝から働き詰めだったためか、お腹がグゥーと鳴った。
隣でそれを聞いていたアリア副団長が、ふふっと笑い、少し早いけどお昼にしようか。と私の手を引いた。
食堂に着いた私達は、皿を手に取り料理を取っていく。
ちなみに、誰も気にしてはいないと思うが、ノア団長はアレクサンダー団長とオギンスキ団長と一緒に、明日の遠征出発の報告に王宮に行っている。
団長が3人共揃っての遠征は久しぶりだなーと思っていると、アリア副団長に料理をどんどんのせられていた。
「わわっ!そんなに食べれません!」
「もう、何言ってるの?明日から遠征よー?食べられる時に食べなきゃ!」
「せっかくノア団長もいないのに…。」
「ダメよ、セシリア。私はそのノア団長からくれぐれもよろしくってお昼のこと頼まれてるんだから。」
私のためにも食べてよねー。と言ってアリア副団長は笑う。
眉間に皺を寄せる私の頭を撫で、ほら、内緒だけど果物も食べよ?と言って、料理が盛られている皿より一回り小さな皿をヒラヒラさせるアリア副団長は、私の扱いをよくわかっていらっしゃる。
ふっふーんと鼻歌を歌いながらアリア副団長に近付く。
まさかその皿に半分以上アリア副団長のケーキが乗り、あまりのっていない果物に私が愕然とするのは、きっと確信犯だったと思う。
食事も終わり、遠征に行く前に終わらせられる仕事をしようと研究所に向かう。
「わぁっ!」
あと少しで研究所だというとき、角を曲がると誰かとぶつかった。
思わずよろければ、腕を掴まれる。
「す、すみません…!…ぁ、シャロン様⁉︎」
私がぶつかった人物は、最近避けてしまっていた私の想い人で。
「あ、あの…。」
私をジッと見つめるその瞳に、居心地の悪さを感じるが、私は決めたのだ!と気合いを入れる。
今までのように出来るか分からなかったが、私は、シャロン様と話したいし、今までみたいに会いに行きたい。
あれは酔ったシャロン様からのご褒美だったのだ。
それに、自分のここ数日の行動は、恋する乙女としては失格だ。
そう思って、出来る限りの笑顔を浮かべ、話しかける。
「シャロン様!こんにちは!私ですね、」
「…今、お前と話している暇はない。」
「…え、シャロン様……?」
思わず、離された腕を見つめ、シャロン様を見る。
わたしの話を遮る様に話したその人は、別の角を曲がり、姿が見えなくなる。
「シャロン様……。」
今までも、こんなことあったではないか。
…でも、あんな風に、シャロン様が話を遮っていなくなるなんて……あっただろうか…?
誰もいないその場所を、ただ呆然と眺める。
最後に見た、冷たい色をした紫色が、わたしの目に焼き付いて離れなかった。
あれ、セシリア、ここで何してるの?と突っ立ていた私に声をかけてくれたのは、植物園帰りのアリア副団長だった。
アリア副団長ー!と青い顔で話し出す私に、とりあえず研究所に行こうか、と言って手を引いてくれる。
椅子に座り、アリア副団長がいれてくれたミルクティーを目の前に話し出した私に、聞き終わった彼女が言った。
「それって、怒っているんじゃない?」
「やっぱり、そうなんですかね…。」
最近、避けまくっていたものな…と反省する。
「明日から遠征なんだから、そんなに気になるなら早く謝っておいで。」
「はい…行ってきます。」
そう言って研究所を出た私は、シャロン様を探す。
しかしその日、目的の人物は見つかることなく、私は暗い気持ちのまま遠征に出発することになったのだった。
____________________
「セシリー?どうしたのぉ?元気ないねー?」
「ノア団長…シャロン様見かけませんでしたか?」
「んー?シャロン?見なかったよぉ?」
「そうですか……。」
「なにー?喧嘩でもしたぁ?」
「……。」
「…そっかぁ。じゃぁちょっとお兄ちゃんお仕事できたから行ってくるねぇ。」
「…行ってらっしゃい。」
「いやいやいや!行かしちゃいけないよ⁉︎セシリア!このノア団長止めて!お願いだから!」
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