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私は、貴方の優しさに甘え過ぎていたのでしょう。ろく。
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びくりと体を揺らし、あたりを確認すれば、何の気配もない。
良かったと、小さく息を吐けば木々が揺れる音がした。
一瞬にして現れる気配に、恐怖が襲う。
西の森の遠征が終わってからの、初めての外での仕事。
すでにひと月は経っているし、森の中で一人で討伐なんて、遠征先ではよくある事だ。
それに、自分はあの頃の力のない子供ではない。
……分かってる。
分かっているはずなのに、体が動かないのだ。
「ぃゃ…、」
フラッシュバックのような光景が目の前に広がる。
生き絶えた魔物に、気絶する少年、そして、
______背中から血を流す、動かない兄。
「おに……ちゃん……?」
これは違うと、頭では分かっているのに、私の目はバカになっているようで、その光景から目が離せない。
「やだよ…ねぇ……。」
現実では、魔物が近づいてくる気配がする。
___怖い。
私は、目だけじゃなく、体までどうにかしてしまったようだ。
恐怖で、指一本動かせない。
魔物の気配は10匹もいない。
あの森の時よりは、怪我を負っていたとしても簡単なはずだ。
……いや、簡単だろうか?
そう思って、倒したと思って、兄に怪我をさせたのは、……妹じゃないか。
___こわい。
私に倒せるだろうか。
___怖い。
またあの時みたいに、目の前の兄みたいに、
___恐い。
誰かが怪我を負って、それで……っ!
「……けて……、」
暗い、暗い、森の中。
「たす、けて……おに、ちゃ……っ、」
魔物の、息遣いが聞こえる。
「…おねが、…す、けて……っ、」
いつもそうだ。
私は非力で、いつも誰かに助けてもらっている。
だから、そう。
だから、シャロン様も、私が嫌になった。
いつももらってばかりの私は、何もできることがなくて。
何も、返すことをしなくて。
それで……。
「……ヒック、ごめっ、なさ、」
でも、
「シャロ、様、…ごめん、なさ…っ、」
今は、
「おねが、い、…シャロン、様……っ、」
初めて会った時の様に、
「シャロン様ぁ…っ!」
私の王子様に、なってくれませんか……?
「相変わらず泣き虫だな。セシリア。」
そう言って、魔物を一瞬で倒す姿に、先ほどとは違う意味で涙が溢れる。
その後ろ姿は、12年前と変わらない。
「シャロン、様……。」
「この位、お前一人でも倒せただろう?」
そう言って、私に手を差し伸べてくれる姿さえ、あの頃と全く一緒だった。
足を捻った私は、シャロン様に背負われて森の中を進む。
あまりに近過ぎる距離に、自分の鼓動が早くなるのがわかる。
お互いが何も話さない状況が続き、森の入り口まで来た。
「シャロン、副、団長……。」
何か話さなければ、と口を開けば、シャロン様の足が止まった。
森の入り口にある切り株の上に降ろされ、私は失敗したと思った。
助けにきてくれたとは言え、私は、シャロン様に嫌われているのだ。
ここまでしてくれた事に感謝をしなければならないのに……。と、思った時、シャロン様が私の目の前に跪いた。
「もう、その名で呼ぶな。」
「……え?」
「だから、副団長と、呼ぶな。セシリア。」
……どう言うことだろうか?
これは、お前には名前をどんな形であろうと呼ばれたくない、とのことだろうか?
そう結論が出て、青くなる私に、シャロン様はため息をついた。
それにびくりと体を揺らせば、苦笑するシャロン様を見る。
「……俺が言うことでもないが、前みたいに呼んでくれないか?」
そう言って、私を見つめる紫の瞳を見れば、月明かりに照らされ、銀の輝きが見えた。
「シャロン、様…?」
おずおすとそう呼べば、あぁ。と返事が来て、シャロン様が顔を伏せた。
どうしたのかと、心配気に見れば、シャロン様の声が聞こえた。
「セシリア。この間は、すまなかった。」
そう言って、上を向いたシャロン様と目が合う。
その瞳は、不安気に揺れていた。
シャロン様は悪くない。と、口を開こうとすれば、シャロン様が口を開くのが先だった。
「あの時俺、聞いたんだ。ルシヨンが前からお前の事を好きだとは知っていた。それで、ルシヨンが告白したと言うのも、2人の様子を見ていれば、すぐに分かった。それから、何度か2人が一緒にいるのを見かけた。セシリアは俺が好きなんじゃないのかと、お前に対して憤りを覚えた。」
そう言って、シャロン様は一旦言葉を切る。
私はなんと言って良いか分からず、シャロン様を見つめた。
「そんな時だ。セシリアがルシヨンに好きだと言っているのを聞いたのは。」
「シャロン様、それは…っ!」
「あぁ。今思えば、あの時盗み聞きしていた俺も悪かったと思う。それに、本当は最後まで聞いていた。だから、セシリアのルシヨンへの好きが、恋愛感情じゃないことも分かっていた。…だが、俺は許せなかった。他の男に好きだと言うセシリアも、そんなお前に、ちゃんとした言葉が言えない自分自身にも。」
月明かりが陰り、シャロン様の手が私の頬に伝った涙の跡を撫でる。
「なぁ、セシリア。もしかしたら今更かもしれないけど言わせてくれ。俺は_______、」
良かったと、小さく息を吐けば木々が揺れる音がした。
一瞬にして現れる気配に、恐怖が襲う。
西の森の遠征が終わってからの、初めての外での仕事。
すでにひと月は経っているし、森の中で一人で討伐なんて、遠征先ではよくある事だ。
それに、自分はあの頃の力のない子供ではない。
……分かってる。
分かっているはずなのに、体が動かないのだ。
「ぃゃ…、」
フラッシュバックのような光景が目の前に広がる。
生き絶えた魔物に、気絶する少年、そして、
______背中から血を流す、動かない兄。
「おに……ちゃん……?」
これは違うと、頭では分かっているのに、私の目はバカになっているようで、その光景から目が離せない。
「やだよ…ねぇ……。」
現実では、魔物が近づいてくる気配がする。
___怖い。
私は、目だけじゃなく、体までどうにかしてしまったようだ。
恐怖で、指一本動かせない。
魔物の気配は10匹もいない。
あの森の時よりは、怪我を負っていたとしても簡単なはずだ。
……いや、簡単だろうか?
そう思って、倒したと思って、兄に怪我をさせたのは、……妹じゃないか。
___こわい。
私に倒せるだろうか。
___怖い。
またあの時みたいに、目の前の兄みたいに、
___恐い。
誰かが怪我を負って、それで……っ!
「……けて……、」
暗い、暗い、森の中。
「たす、けて……おに、ちゃ……っ、」
魔物の、息遣いが聞こえる。
「…おねが、…す、けて……っ、」
いつもそうだ。
私は非力で、いつも誰かに助けてもらっている。
だから、そう。
だから、シャロン様も、私が嫌になった。
いつももらってばかりの私は、何もできることがなくて。
何も、返すことをしなくて。
それで……。
「……ヒック、ごめっ、なさ、」
でも、
「シャロ、様、…ごめん、なさ…っ、」
今は、
「おねが、い、…シャロン、様……っ、」
初めて会った時の様に、
「シャロン様ぁ…っ!」
私の王子様に、なってくれませんか……?
「相変わらず泣き虫だな。セシリア。」
そう言って、魔物を一瞬で倒す姿に、先ほどとは違う意味で涙が溢れる。
その後ろ姿は、12年前と変わらない。
「シャロン、様……。」
「この位、お前一人でも倒せただろう?」
そう言って、私に手を差し伸べてくれる姿さえ、あの頃と全く一緒だった。
足を捻った私は、シャロン様に背負われて森の中を進む。
あまりに近過ぎる距離に、自分の鼓動が早くなるのがわかる。
お互いが何も話さない状況が続き、森の入り口まで来た。
「シャロン、副、団長……。」
何か話さなければ、と口を開けば、シャロン様の足が止まった。
森の入り口にある切り株の上に降ろされ、私は失敗したと思った。
助けにきてくれたとは言え、私は、シャロン様に嫌われているのだ。
ここまでしてくれた事に感謝をしなければならないのに……。と、思った時、シャロン様が私の目の前に跪いた。
「もう、その名で呼ぶな。」
「……え?」
「だから、副団長と、呼ぶな。セシリア。」
……どう言うことだろうか?
これは、お前には名前をどんな形であろうと呼ばれたくない、とのことだろうか?
そう結論が出て、青くなる私に、シャロン様はため息をついた。
それにびくりと体を揺らせば、苦笑するシャロン様を見る。
「……俺が言うことでもないが、前みたいに呼んでくれないか?」
そう言って、私を見つめる紫の瞳を見れば、月明かりに照らされ、銀の輝きが見えた。
「シャロン、様…?」
おずおすとそう呼べば、あぁ。と返事が来て、シャロン様が顔を伏せた。
どうしたのかと、心配気に見れば、シャロン様の声が聞こえた。
「セシリア。この間は、すまなかった。」
そう言って、上を向いたシャロン様と目が合う。
その瞳は、不安気に揺れていた。
シャロン様は悪くない。と、口を開こうとすれば、シャロン様が口を開くのが先だった。
「あの時俺、聞いたんだ。ルシヨンが前からお前の事を好きだとは知っていた。それで、ルシヨンが告白したと言うのも、2人の様子を見ていれば、すぐに分かった。それから、何度か2人が一緒にいるのを見かけた。セシリアは俺が好きなんじゃないのかと、お前に対して憤りを覚えた。」
そう言って、シャロン様は一旦言葉を切る。
私はなんと言って良いか分からず、シャロン様を見つめた。
「そんな時だ。セシリアがルシヨンに好きだと言っているのを聞いたのは。」
「シャロン様、それは…っ!」
「あぁ。今思えば、あの時盗み聞きしていた俺も悪かったと思う。それに、本当は最後まで聞いていた。だから、セシリアのルシヨンへの好きが、恋愛感情じゃないことも分かっていた。…だが、俺は許せなかった。他の男に好きだと言うセシリアも、そんなお前に、ちゃんとした言葉が言えない自分自身にも。」
月明かりが陰り、シャロン様の手が私の頬に伝った涙の跡を撫でる。
「なぁ、セシリア。もしかしたら今更かもしれないけど言わせてくれ。俺は_______、」
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