魔術師の少女が仕事にも恋愛にも全力でぶつかっていくお話。

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私は、貴方の優しさに甘え過ぎていたのでしょう。なな。

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「セシリア……!」

「…ルシヨン副団長?」


____シャロン様の言葉は、最後の部分が聞けなかった。


私を探してくれていたのだろう。

所々に葉っぱや土が付いているルシヨン副団長と、後から第4騎士団の面々が現れる。

「すみません、お騒がせしました。」

「無事で良かった……!」

そう言って、抱き締めてくるルシヨン副団長に戸惑えば、イリヤ副団長が引き離してくれた。

「セシリアちゃん、どこか怪我してない?」

「足を少し…捻ってしまいまして…。」

「まぁ!本当!腫れてるじゃない!早く戻って手当てしなきゃ!」

そう言って、イリヤ風団長がなんと、私をお姫様抱っこする。

「え⁉︎ちょ、イリヤ副団長⁉︎」

「もぉ、大人しくしてなさい。落とすわよ?」

「………。」

落ちるわよ、じゃなくて落とすわよ、と言う所に本気を感じた私は、大人しくお姫様抱っこされる道を選んだ。

誰しも命は惜しいだろう。

いつもは一緒に女子会なるものを開いたり、一緒に洋服を買いに行ったりするが、こう言う時にはやっぱり男の人なのだと自覚する。

綺麗な顔がいつもより近くにあり、どきりとするが、いつも完璧な化粧が少し取れていた。

「ありがとうございます、イリヤ副団長。」

「なに?改まって。大丈夫、落とさないわよ。」

「ふふっ、お願いします。」

そう言ってシャロン様を探せば、もうすでに姿はなく、先に帰ったのだと知る。

この日、気になるところで終わった、シャロン様との話は、この旅の間で一回もする事はなかった。

そして私も、そんなシャロン様とどう接して良いのか分からず、相変わらずアレキサンダー団長が心配する関係をしばらく続けることになるのであった。





__________
_____



「し、失礼します。」


何だかんだあった旅も、残りはきたくするだけとなった。

最初の2日は馬に乗っていた私も、足の怪我がちゃんと治っていなかったのか、最終日はニコル王子と一緒に馬車での移動となる。

いつも同乗していた第1騎士団の青年に、私の軍馬を預け、おずおずと馬車に乗れば、ニコル王子が笑顔で迎えいれてくれた。

ニコル王子と斜め向いになるように座れば、窓の外にシャロン様の姿が見えた。

「ふふっ、見過ぎだよ、セシリア。」

「あっ、すみません。」

ニコル王子に言われ、初めて私がシャロン様を見つめていたことに気付く。

恥ずかしくなり居住まいを正せば、あれ、見ないの?と笑われた。

そのまま、和やかな雰囲気が続くかと思ったが、途中から薬草話になり、ポーション話になり…と白熱し過ぎて王都に到着したのに気づかないほどだった。

「また話をしよう、セシリア。」

君との話は面白くて楽しいよ。

そう言って去っていく馬車を眺め、私もイリヤ副団長の手を借り第4騎士団の寮に向かおうとすれば、ちょうど遠征先から帰って来たノア団長と遭遇した。

私の足を見て叫び声をあげるまで後1秒。

軍馬から降りて、治療を始めるまで後3秒。


そんな兄の元気な姿に、私の笑みが溢れるのは、もうすぐ先の未来だ。





____________________


「ギャァァァア!セシリー!どうしたのぉ!足!足!」

「森で捻っちゃいました。」

「早く手当するよ!ほら、足貸して!」

「はーい。」

「もぉ!僕がいないとすぐこうなんだからぁ!気をつけてよねぇ!」

「ふふっ、ごめんなさい。」

「セシリー!反省してないでしょー⁉︎」

「してますしてます!だから足握らないで!痛い!痛い!」

「…はぁ、もう!本当にぃ、怪我には気をつけてよねぇ。」

「うぅ、はい。気をつけます。」

「…それでー?シャロンとは仲直りしたのぉ?」

「…多分?」

「はぁ?なにそれぇ。もぉ、本当、いつになったら素直になるのかねぇ…?」

「……?」

「あぁ、セシリーは分からなくて良いよー。」

「…?そっか。」

「ちょっと、そこのノア団長シスコン。セシリアちゃんの為にも教えてあげなさいよ。」

「えぇ?何でこの僕が敵に加勢しなきゃならないんですかー。」

「敵って……。もうやだこのシスコン…。」
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