46 / 53
私は、貴方の優しさに甘え過ぎていたのでしょう。なな。
しおりを挟む
「セシリア……!」
「…ルシヨン副団長?」
____シャロン様の言葉は、最後の部分が聞けなかった。
私を探してくれていたのだろう。
所々に葉っぱや土が付いているルシヨン副団長と、後から第4騎士団の面々が現れる。
「すみません、お騒がせしました。」
「無事で良かった……!」
そう言って、抱き締めてくるルシヨン副団長に戸惑えば、イリヤ副団長が引き離してくれた。
「セシリアちゃん、どこか怪我してない?」
「足を少し…捻ってしまいまして…。」
「まぁ!本当!腫れてるじゃない!早く戻って手当てしなきゃ!」
そう言って、イリヤ風団長がなんと、私をお姫様抱っこする。
「え⁉︎ちょ、イリヤ副団長⁉︎」
「もぉ、大人しくしてなさい。落とすわよ?」
「………。」
落ちるわよ、じゃなくて落とすわよ、と言う所に本気を感じた私は、大人しくお姫様抱っこされる道を選んだ。
誰しも命は惜しいだろう。
いつもは一緒に女子会なるものを開いたり、一緒に洋服を買いに行ったりするが、こう言う時にはやっぱり男の人なのだと自覚する。
綺麗な顔がいつもより近くにあり、どきりとするが、いつも完璧な化粧が少し取れていた。
「ありがとうございます、イリヤ副団長。」
「なに?改まって。大丈夫、落とさないわよ。」
「ふふっ、お願いします。」
そう言ってシャロン様を探せば、もうすでに姿はなく、先に帰ったのだと知る。
この日、気になるところで終わった、シャロン様との話は、この旅の間で一回もする事はなかった。
そして私も、そんなシャロン様とどう接して良いのか分からず、相変わらずアレキサンダー団長が心配する関係をしばらく続けることになるのであった。
__________
_____
「し、失礼します。」
何だかんだあった旅も、残りはきたくするだけとなった。
最初の2日は馬に乗っていた私も、足の怪我がちゃんと治っていなかったのか、最終日はニコル王子と一緒に馬車での移動となる。
いつも同乗していた第1騎士団の青年に、私の軍馬を預け、おずおずと馬車に乗れば、ニコル王子が笑顔で迎えいれてくれた。
ニコル王子と斜め向いになるように座れば、窓の外にシャロン様の姿が見えた。
「ふふっ、見過ぎだよ、セシリア。」
「あっ、すみません。」
ニコル王子に言われ、初めて私がシャロン様を見つめていたことに気付く。
恥ずかしくなり居住まいを正せば、あれ、見ないの?と笑われた。
そのまま、和やかな雰囲気が続くかと思ったが、途中から薬草話になり、ポーション話になり…と白熱し過ぎて王都に到着したのに気づかないほどだった。
「また話をしよう、セシリア。」
君との話は面白くて楽しいよ。
そう言って去っていく馬車を眺め、私もイリヤ副団長の手を借り第4騎士団の寮に向かおうとすれば、ちょうど遠征先から帰って来たノア団長と遭遇した。
私の足を見て叫び声をあげるまで後1秒。
軍馬から降りて、治療を始めるまで後3秒。
そんな兄の元気な姿に、私の笑みが溢れるのは、もうすぐ先の未来だ。
____________________
「ギャァァァア!セシリー!どうしたのぉ!足!足!」
「森で捻っちゃいました。」
「早く手当するよ!ほら、足貸して!」
「はーい。」
「もぉ!僕がいないとすぐこうなんだからぁ!気をつけてよねぇ!」
「ふふっ、ごめんなさい。」
「セシリー!反省してないでしょー⁉︎」
「してますしてます!だから足握らないで!痛い!痛い!」
「…はぁ、もう!本当にぃ、怪我には気をつけてよねぇ。」
「うぅ、はい。気をつけます。」
「…それでー?シャロンとは仲直りしたのぉ?」
「…多分?」
「はぁ?なにそれぇ。もぉ、本当、いつになったら素直になるのかねぇ…?」
「……?」
「あぁ、セシリーは分からなくて良いよー。」
「…?そっか。」
「ちょっと、そこのノア団長。セシリアちゃんの為にも教えてあげなさいよ。」
「えぇ?何でこの僕が敵に加勢しなきゃならないんですかー。」
「敵って……。もうやだこのシスコン…。」
「…ルシヨン副団長?」
____シャロン様の言葉は、最後の部分が聞けなかった。
私を探してくれていたのだろう。
所々に葉っぱや土が付いているルシヨン副団長と、後から第4騎士団の面々が現れる。
「すみません、お騒がせしました。」
「無事で良かった……!」
そう言って、抱き締めてくるルシヨン副団長に戸惑えば、イリヤ副団長が引き離してくれた。
「セシリアちゃん、どこか怪我してない?」
「足を少し…捻ってしまいまして…。」
「まぁ!本当!腫れてるじゃない!早く戻って手当てしなきゃ!」
そう言って、イリヤ風団長がなんと、私をお姫様抱っこする。
「え⁉︎ちょ、イリヤ副団長⁉︎」
「もぉ、大人しくしてなさい。落とすわよ?」
「………。」
落ちるわよ、じゃなくて落とすわよ、と言う所に本気を感じた私は、大人しくお姫様抱っこされる道を選んだ。
誰しも命は惜しいだろう。
いつもは一緒に女子会なるものを開いたり、一緒に洋服を買いに行ったりするが、こう言う時にはやっぱり男の人なのだと自覚する。
綺麗な顔がいつもより近くにあり、どきりとするが、いつも完璧な化粧が少し取れていた。
「ありがとうございます、イリヤ副団長。」
「なに?改まって。大丈夫、落とさないわよ。」
「ふふっ、お願いします。」
そう言ってシャロン様を探せば、もうすでに姿はなく、先に帰ったのだと知る。
この日、気になるところで終わった、シャロン様との話は、この旅の間で一回もする事はなかった。
そして私も、そんなシャロン様とどう接して良いのか分からず、相変わらずアレキサンダー団長が心配する関係をしばらく続けることになるのであった。
__________
_____
「し、失礼します。」
何だかんだあった旅も、残りはきたくするだけとなった。
最初の2日は馬に乗っていた私も、足の怪我がちゃんと治っていなかったのか、最終日はニコル王子と一緒に馬車での移動となる。
いつも同乗していた第1騎士団の青年に、私の軍馬を預け、おずおずと馬車に乗れば、ニコル王子が笑顔で迎えいれてくれた。
ニコル王子と斜め向いになるように座れば、窓の外にシャロン様の姿が見えた。
「ふふっ、見過ぎだよ、セシリア。」
「あっ、すみません。」
ニコル王子に言われ、初めて私がシャロン様を見つめていたことに気付く。
恥ずかしくなり居住まいを正せば、あれ、見ないの?と笑われた。
そのまま、和やかな雰囲気が続くかと思ったが、途中から薬草話になり、ポーション話になり…と白熱し過ぎて王都に到着したのに気づかないほどだった。
「また話をしよう、セシリア。」
君との話は面白くて楽しいよ。
そう言って去っていく馬車を眺め、私もイリヤ副団長の手を借り第4騎士団の寮に向かおうとすれば、ちょうど遠征先から帰って来たノア団長と遭遇した。
私の足を見て叫び声をあげるまで後1秒。
軍馬から降りて、治療を始めるまで後3秒。
そんな兄の元気な姿に、私の笑みが溢れるのは、もうすぐ先の未来だ。
____________________
「ギャァァァア!セシリー!どうしたのぉ!足!足!」
「森で捻っちゃいました。」
「早く手当するよ!ほら、足貸して!」
「はーい。」
「もぉ!僕がいないとすぐこうなんだからぁ!気をつけてよねぇ!」
「ふふっ、ごめんなさい。」
「セシリー!反省してないでしょー⁉︎」
「してますしてます!だから足握らないで!痛い!痛い!」
「…はぁ、もう!本当にぃ、怪我には気をつけてよねぇ。」
「うぅ、はい。気をつけます。」
「…それでー?シャロンとは仲直りしたのぉ?」
「…多分?」
「はぁ?なにそれぇ。もぉ、本当、いつになったら素直になるのかねぇ…?」
「……?」
「あぁ、セシリーは分からなくて良いよー。」
「…?そっか。」
「ちょっと、そこのノア団長。セシリアちゃんの為にも教えてあげなさいよ。」
「えぇ?何でこの僕が敵に加勢しなきゃならないんですかー。」
「敵って……。もうやだこのシスコン…。」
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
弟に前世を告白され、モブの私は悪役になると決めました
珂里
ファンタジー
第二王子である弟に、ある日突然告白されました。
「自分には前世の記憶がある」と。
弟が言うには、この世界は自分が大好きだったゲームの話にそっくりだとか。
腹違いの王太子の兄。側室の子である第二王子の弟と王女の私。
側室である母が王太子を失脚させようと企み、あの手この手で計画を実行しようとするらしい。ーーって、そんなの駄目に決まってるでしょ!!
……決めました。大好きな兄弟達を守る為、私は悪役になります!
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる