この想いが、恋だと気付くまで

imu

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紬said.

6.

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「…面白いことになってるね」
「全然面白くないよー!」

私はいつもの所と言われた外階段の踊り場にて母特製お弁当を食べながら、昨日から先程までの流れを3人にひと通り話す。
あおいと咲はなぜか爆笑、莉子は残念な子を見るような顔をしながら先程の台詞だ。

「もうどうしたらいいのか…」
「付き合ったんでしょ?」
「ついに紬に彼氏かー」
「今日の帰りは雨かな?」
「えー、傘持ってきてないよー」
「もう!真面目に考えてよー!」

3人は何が面白いのかずっと笑っている。友の非常事態になんという人達だ。

「てか、莉子もなんであの時助けてくれなかったのー」

「すっごく念を送ったんだよ?」と言うと、「え、何、私のせいにするつもりー?こわー」と言われ、それに便乗したあおいと咲にも「「こわー」」と言われる。
なんだか悲しくなって1人寂しくミルクティーのストローを噛んでいると、あおいが「でもさ」と私の近くにズイッと寄ってきた。

「あの高杉君だよ?私的にはめっちゃおすすめだと思う!」

「あ、それ分かるー」と咲が同調した。莉子も「悪くないよね」とか言っているし…。
じゃあ誰か代わってよ、と言うと私達にはムリと揃って言った。

「でもさ、おすすめなのは本当だよ?」
「そうそう、顔良し頭良し性格も聞く限り良し。逆に何がダメなの?」
「紬の理想にタイプにも髪色以外合ってるし」

「「「ねぇ、何がダメなの?」」」と3人はまた揃って言う。…仲良しか⁉︎…仲良しか。

「だって罰ゲームだよ?あり得なくない?」

「告白は遊びとかじゃなくて普通好きな人にするものでしょう?」と言えば、一瞬、謎の静寂が辺りを包み込む。
何々?と下げていた視線を上げると、「「「純粋乙女か」」」とまた揃って言われる。何かもう打ち合わせとかしてたでしょう?と疑問が湧くくらいのハモリに除け者にされたようで悲しくなってきた。

「紬ちゃんにはまだ恋は早かったですかねー」
「そうですねー。純粋な紬ちゃんにはまだでしたねー」
「…馬鹿にしてるでしょう?」

ニヤニヤしながら話すあおいと咲にジトっと視線を向ければ、「ごめんごめん」と軽く謝られる。
別に怒ってはないよーと食べ終わったお弁当を片付けていると、キラリン、とLEMONの通知音が鳴った。
「高杉君じゃない?」と揶揄われながらもスマホを見ると渉からで、《朝はごめん》と可愛らしい猫のスタンプと一緒に送られてきた。
メッセージかわいいな。朝のことを渉なりに気にしていたらしい。
《私もごめんね。怒ってないよ》と返事をする。家族に甘えて八つ当たりしてしまった部分もあったから、悩ませてしまったことに多少なりとも罪悪感を感じる。

「…ブラコン」
「よーし怒った!今呟いた人、表に出ようか!」
「もうー、言ったの誰ー」
「さぁ?誰だろー」

ギャーギャーと騒がしくしていると、不意に莉子が「あっ」と言った。
ん?と3人動きが止まり、莉子を見る。

「思い出したんだけど、あの黒髪メガネ君はどうなったの?」
「あぁー…」

うわ、出た、と思わず顔を顰めてしまう私と、話を知らず「「何々?黒髪メガネ君って誰?」」と瞳を輝かせる2人。
「別に大した話ではないよ」とあおいと咲に言うが、恋愛話大好きな女子高生は、暗に聞くな面倒くさいという意味を込めた私の言葉を綺麗にシカトし聞いてくる。「別に面白い話じゃないよ」と言うと、「それを決めるのは聞いた人だからとりあえず話せ」と言われた。…確かに。妙に納得した。

「中学2年の冬、塾の帰りにバス待ってたんだけど」
「「うんうん」」
「結構夜遅くて、雨もすごい日で…」
「おっ、何傘貸したとか?」
「いや、違う」
「ちょっと咲うるさい」
「ごめーん」

あおいに軽く小突かれた頭を押さえ咲は口を結ぶ。
それを横目に私は話を続けた。

「一人でバス停にいたら、…あ、バス停は屋根付きの所だったんだけど、同じ年位の男の子が凄いずぶ濡れで走ってきたからタオルを貸した」
「「うんうん」」
「以上」
「「うんう…え?」」

それだけ?と言う顔をしている2人には申し訳ないが、それだけである。
ちなみにその後塾を変えたりしたため、その男の子に会うこともタオルが返ってくることもなかった。

「だから面白くないって言ったでしょう?」
「んー、まぁ面白くはないね」
「それから何かありましたーとかないわけ?」

「ない」ときっぱりはっきり言うと、「そこは連絡先とか聞いてさー」とか妄想を繰り広げる女子高生2人。
私はその横で興味なさそうにスマホを弄っている莉子を見ていると、私の視線に気付いたのか視線をチラリと向ける。

「やっぱり何度聞いても面白いね」

…莉子さんや、真顔で言われても全然嬉しくないです。
そんなことを思っていると、5限目の予鈴が鳴る。「やばっ、歯磨きしてない!」とみんなで慌てて歯磨きをし、走って教室までの道を戻っていると「紬」と莉子が呼んだ。

「どうしたの莉子?」

「早くしないと授業始まるよ?」と焦って言えば、「うん」と返事があった。

「高杉君のことは…まぁ置いといて。別に紬は何も悪いことしてないよ。だから木村さんや西園寺君とは普通に仲良くしたら良いと思う」
「ん?…よく分からないけどそうなの?」
「うん、そうなの。ぼっち回避もできるし」

「じゃあね」と言って莉子は自分の教室に入っていく。その後ろ姿に、ぼっちじゃないし!と心の中で叫んで私も教室に入る。
全然解決はしていないけれど、莉子のおかげで悩みのひとつは解消されたような不思議な感じがする。

席に着くと同時に本鈴が鳴って教科担当の先生が入ってくる。
私はお昼後の睡魔と戦いながら、暗闇の中に落ちていった。
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