青空のサンセット

大和 司

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第1章 いつもの日常

第02話 みんなで野営地に帰ろう(2)

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 30分ほど歩いただろうか。夕暮れも過ぎて辺りもだいぶ暗くなった頃、そうこうしているうちに野営地に到着。
「マック~、ただいま~。今夜のご飯はなぁにかな~」
 エレノア、テットから飛び降りてマックの元へダッシュ。

 マックは料理人である。フルネームをマクシミリアン・ベーコン(Maximilian Bacon)という。野営地でのエレノアやアッシュの英気を養うために、彼らに温かい料理を提供するのが仕事。マックもまた、任期付きで採用された料理人であり、王立研究所からの指令に応じて各地の野営地に出向している。今回はしばらくはエレノア・アッシュ組の料理担当である。
 野営地での料理は重要だ。というのも、単調な捕獲作業の割には、エレノアは魔法力を常に消費する行動なので、いつも腹ぺこなのであるが、それを満たすことでよりよい捕獲行動が期待できる。また、栄養価が高くてバランス取れた食事は、彼らの体調管理に貢献するし、何よりもエレノアの魔法力回復に多大に貢献する。そういうわけで、王立研究所では、ゴールドバード捕獲における食事管理も重要視している。

 キッチンに相当する場所には、特に匂いの立つ材料がない。どういうことだ?
「ねぇ、マック。今夜のおかずはどこ?何にも匂いがしないけど?」
「それは後からのお楽しみ。結構なごちそうだと思うよ。すぐにできるから直前まで秘密だよ」
 ぽっこりおなかをいそいそと動かしながら、別の料理の仕込み中なマック。

 マック・ベーコン。マックの好物はポテトフライ。一緒にシェイクもいかがですか?ちょっとBMIが高め。その体型から納得。身長はアッシュよりやや低めだが、体重では彼を遙かに凌駕する。膝への負担が心配。生活習慣病に気をつけて。なお、年齢はエレノアとアッシュの間くらい。

「う~ん、じゃあ楽しみに待ってるよ」
 腑に落ちないものの、粘っても何も起こらなそうなので撤退するエレノア。ひとっ風呂浴びて、なんてことはできないので、エレノアとアッシュは分かれて別々のテントの中で体をフキフキ。
「シャワー設備があったらいいのにな」
 と思うエレノア。

 日が暮れた野営地では、中央のたき火があたりをオレンジ色に照らす。気温もちょうどよい。熱くもなく寒くもなく。春から夏になろうという頃の夜の空気感だと思ってほしい。
 着替えたエレノアは、トップスはおへそまで隠れるタンクトップ、ボトムは支給品のミリタリースラックス。ブーツは乾かしているので代わりにサンダルで。

 今夜は星が綺麗だ。都会の喧噪もなく静かな山のハーモニーが聞こえる。虫の声、風の音。空気が澄んでいるの星空が綺麗だ。そう思うは作者くらいで、エレノアにとっては見慣れた景色。エレノアの心は料理に向かって一直線なのである。飯だ、飯なのである。

 既にダイニングテーブルに鎮座ましまして料理の到着を心待ちにしているエレノア。子供みたいだ。わくわく。エレノアは待ちきれない。ほどなくしてアッシュも着席。

「マックぅ~。まだぁ~?」
「もうすぐできるからまっててね~」
 キッチンポジションからマックの声が返ってくる。くんくん、鼻に神経を集中して気を研ぎ澄ますエレノア。もはや獣。
「は!これはっ」



 そう思ったときにマック登場。大きなお盆に料理が乗せられている。
 そこにあったモノは!
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