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第9話 それにしてもよく喋る
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「んぅんん! お風呂上がりのスポドリちょーうまいね!」
真宮さんは、なぜか俺の部屋にきて風呂上がりのスポーツドリンクを堪能中だ。
お泊まりセット的なものはしっかりと準備をしてきたようで、白Tに青いハーフパンツという学校指定の体操服に着替えている。
ん? 首にかけてるのって、あのペンデュラムのチェーンだよな? 先が白Tの中に入っていて確認できないけど間違いないだろう。
もしかして、いつも身につけているのか……。
それにしても、ここを旅館かなにかと勘違いしてそうなくつろぎようだ。
「それ、ストックしていた最後のやつだからな。ちゃんと感謝して飲めよ」
「ん」
彼女はペットボトルに口をつけながら返事をすると濡れた髪を揺らし、ごきゅごきゅと喉を鳴らしながら、中身を一気に飲み干した。
いい飲みっぷりですね真宮さん。絶対、感謝なんかしていないよね……後で百四十円を請求しておこう。
「ハァ~久しぶりの広いお風呂だったなぁ。あたしのアパートだとユニットバスじゃん?」
「じゃん? とか言われてもな。で? どうして風呂上がり早々に俺の部屋にいるんだ? 果奈のお客さまなんだろ?」
「果奈ちゃん、友達とオンラインゲームで遊ぶ約束してるんだって。邪魔しちゃ悪いじゃない?」
とりあえず俺の邪魔もしないで欲しいものだが……それにしても我が妹はお客を招待しておいて、なんでほったらかしにしているんだ。
兄はそんな妹に育てた覚えはないぞ。
「ちょっとまってて、果奈に注意してくるから」
「え? なんでよ?」
「なんでって、お客様を放っておくのも変な話だろ?」
「春時って変なところで真面目だよね? 別にいいわよ、子供じゃないんだし楽しんでいるとこ邪魔しちゃ可哀想じゃない。それに果奈ちゃんが夜に予定あるの承知で泊まりに来てるし」
いや、俺たちはまだ18歳にすらなっていないから一応、子供だろ? という屁理屈を言うのは止めておくか……なにかとてつもない反撃をくらいそうな予感がする。
「そんなことより、ドライヤー貸して」
「え? あぁ……洗面所の鏡の横に棚があっただろ? そこにあるから」
「この部屋にはないの?」
「ないな」
「ふーん、ならいいかな」
言うと彼女は持ち込んだリュックの中をゴソゴソと漁りはじめ、中からドライヤーを取り出す。
「おい、その手にしているのはなんだ」
「え? ドライヤーだけど? これで髪の毛を乾かすんだよ」
なんか言葉を返すのが面倒になってきた……。
黙っていると真宮さんは部屋をキョロキョロと見渡し、コンセントの差し込み口をみつけ、早速ドライヤーの電源を入れた。
すぐにブォオオオンという雑音が部屋に響く。
「ん?」
真宮さんの口から微かに声が聞こえてくる。
もしかして俺に話しかけてる? 声音が小さい上にドライヤーの音でかき消されてしまってなにを言っているのか全くわからない。
「なに? よく聞こえないんだけど」
俺の反応に少し不機嫌そうな表情をしながら口をパクパクしている――が、ほんの少しだけボリュームが上がっただけで、状況は改善していない。
頼むから、話すか乾かすかのどちらかに集中してくれ。
仕方がない……俺は読唇術ができるわけでもないし、乾かし終わるまでまつことにするか。
それにしてもよく喋る。
彼女は止まることなく口をパクパクとさせてなにかを話し続け――ようやくドライヤーの電源が切られた。
「……というわけなんだけど、信じてもらえたかな?」
「いや、それ以前に、なにも聞こえなかったんだけど」
「えぇええっ! 今、すごく大切なことを話してたんだよ? エリカの言ってたこととかも気になってたんでしょ? 真面目に聞いてよ!」
「おい……そんな大切な話ならドライヤーかけながら話すなよ」
「だって、内容が内容だし? フランクにさらっと話した方がいいのかなぁって思ったのよ」
「……フランクどうこう以前に声が聞こえてないからな。まぁ、いいや、悪いけどもう一度聞かせてくれない?」
「うえぇええ……」
「なんだよ、その嫌そうな声は」
真宮さんは軽くため息をつくと、面倒そうな態度を見せながらも俺の方に身体を向ける――と、突然、彼女のリュックからスマホの呼び出し音が鳴り響いた。
「真宮さん、なんか鳴ってるけど」
「え? あぁ、うん。そうだね」
呼び出し音は鳴り止まない。
「なんか急用なんじゃないか? 邪魔なら部屋から出るけど」
「えっと……ううん。大丈夫、エリカからだし」
彼女はリュックから取り出したスマホの画面を確認して言った。
――仲里さん?
真宮さんは、なぜか俺の部屋にきて風呂上がりのスポーツドリンクを堪能中だ。
お泊まりセット的なものはしっかりと準備をしてきたようで、白Tに青いハーフパンツという学校指定の体操服に着替えている。
ん? 首にかけてるのって、あのペンデュラムのチェーンだよな? 先が白Tの中に入っていて確認できないけど間違いないだろう。
もしかして、いつも身につけているのか……。
それにしても、ここを旅館かなにかと勘違いしてそうなくつろぎようだ。
「それ、ストックしていた最後のやつだからな。ちゃんと感謝して飲めよ」
「ん」
彼女はペットボトルに口をつけながら返事をすると濡れた髪を揺らし、ごきゅごきゅと喉を鳴らしながら、中身を一気に飲み干した。
いい飲みっぷりですね真宮さん。絶対、感謝なんかしていないよね……後で百四十円を請求しておこう。
「ハァ~久しぶりの広いお風呂だったなぁ。あたしのアパートだとユニットバスじゃん?」
「じゃん? とか言われてもな。で? どうして風呂上がり早々に俺の部屋にいるんだ? 果奈のお客さまなんだろ?」
「果奈ちゃん、友達とオンラインゲームで遊ぶ約束してるんだって。邪魔しちゃ悪いじゃない?」
とりあえず俺の邪魔もしないで欲しいものだが……それにしても我が妹はお客を招待しておいて、なんでほったらかしにしているんだ。
兄はそんな妹に育てた覚えはないぞ。
「ちょっとまってて、果奈に注意してくるから」
「え? なんでよ?」
「なんでって、お客様を放っておくのも変な話だろ?」
「春時って変なところで真面目だよね? 別にいいわよ、子供じゃないんだし楽しんでいるとこ邪魔しちゃ可哀想じゃない。それに果奈ちゃんが夜に予定あるの承知で泊まりに来てるし」
いや、俺たちはまだ18歳にすらなっていないから一応、子供だろ? という屁理屈を言うのは止めておくか……なにかとてつもない反撃をくらいそうな予感がする。
「そんなことより、ドライヤー貸して」
「え? あぁ……洗面所の鏡の横に棚があっただろ? そこにあるから」
「この部屋にはないの?」
「ないな」
「ふーん、ならいいかな」
言うと彼女は持ち込んだリュックの中をゴソゴソと漁りはじめ、中からドライヤーを取り出す。
「おい、その手にしているのはなんだ」
「え? ドライヤーだけど? これで髪の毛を乾かすんだよ」
なんか言葉を返すのが面倒になってきた……。
黙っていると真宮さんは部屋をキョロキョロと見渡し、コンセントの差し込み口をみつけ、早速ドライヤーの電源を入れた。
すぐにブォオオオンという雑音が部屋に響く。
「ん?」
真宮さんの口から微かに声が聞こえてくる。
もしかして俺に話しかけてる? 声音が小さい上にドライヤーの音でかき消されてしまってなにを言っているのか全くわからない。
「なに? よく聞こえないんだけど」
俺の反応に少し不機嫌そうな表情をしながら口をパクパクしている――が、ほんの少しだけボリュームが上がっただけで、状況は改善していない。
頼むから、話すか乾かすかのどちらかに集中してくれ。
仕方がない……俺は読唇術ができるわけでもないし、乾かし終わるまでまつことにするか。
それにしてもよく喋る。
彼女は止まることなく口をパクパクとさせてなにかを話し続け――ようやくドライヤーの電源が切られた。
「……というわけなんだけど、信じてもらえたかな?」
「いや、それ以前に、なにも聞こえなかったんだけど」
「えぇええっ! 今、すごく大切なことを話してたんだよ? エリカの言ってたこととかも気になってたんでしょ? 真面目に聞いてよ!」
「おい……そんな大切な話ならドライヤーかけながら話すなよ」
「だって、内容が内容だし? フランクにさらっと話した方がいいのかなぁって思ったのよ」
「……フランクどうこう以前に声が聞こえてないからな。まぁ、いいや、悪いけどもう一度聞かせてくれない?」
「うえぇええ……」
「なんだよ、その嫌そうな声は」
真宮さんは軽くため息をつくと、面倒そうな態度を見せながらも俺の方に身体を向ける――と、突然、彼女のリュックからスマホの呼び出し音が鳴り響いた。
「真宮さん、なんか鳴ってるけど」
「え? あぁ、うん。そうだね」
呼び出し音は鳴り止まない。
「なんか急用なんじゃないか? 邪魔なら部屋から出るけど」
「えっと……ううん。大丈夫、エリカからだし」
彼女はリュックから取り出したスマホの画面を確認して言った。
――仲里さん?
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