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第12話 真宮葵〜仲里エリカになる前の私
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「あの、ここ座ってもいいですか?」
私、真宮葵は池袋のファストフード店で勉強をしていると、女性の声で突然、話しかけられた。
ノートから目を離し見上げてみると、そこにはスラッとした体型で目鼻立ちの整った女の子がトレイを両手に立っている。少し明るめの髪は後頭部でまとめられたポニーテールだ。
「ど、うぞ……」
少し大人びて見えるけど歳は同じくらい? あまりにも綺麗な子だったから緊張したけど、私は返事をしてテーブルのスペースを急いであけた。
「やった! ほんとに? ありがとう!」
女の子はお礼を言いながら前の席に腰をかけ、ドリンクにミルクとガムシロップ三個を入れ始める。
甘党なのかな? ガムシロップ三個って普通に多いと思うけど。
私には絶対無理。歯が溶けてしまいそう。
「あ! ガムシロップが気になった? あたしアイスティーのストレートって苦手なの」
「そ、そうなんですね……ジロジロ見ちゃってごめんなさい」
「ううん、いいよ。よく言われるし」
よく言われるんだ……牛乳は苦手だけど、コーヒー牛乳は好きみたいな感じかな? アイスティーを甘くした味が好きなのね。
「ポテト食べる?」
「い、いえ」
女の子はポテトに手を伸ばして美味しそうに食べている。見ていたらなんだかお腹が空いてきてしまったけど、夕食が食べられなくなりそうなので断った。
そろそろ会話をするのはやめておこう。つい流れで話してしまったけど、勉強の続きをしないと。
夕方までには終わらせて食材の買い足しもしておかないとだし……。
――ねぇ。
「真宮さん」
え?
「は、はい。えっと、どうして私の名前を知っているんですか?」
「だってほら、そこに書いてあるもの。まみやであってるよね? あたしは仲里っていうの」
仲里と名乗る女の子は、テーブルの端に寄せてあった教科書に書いてある名字を指差し言った。
この人なんだか距離が近くて苦手だな……人の名前を勝手に見て口にするなんて。
どうしよう……でも、無視するのは良くないよね。
「真宮さんは、勉強得意な感じ? 凄いよね。あたしそういうの苦手だから尊敬しちゃうよ」
私が会話に困っていると女の子は話を続けた。
別に勉強が得意なわけではないけど、仲里さんは勉強が好きじゃないことはわかる。
「別に得意とかじゃないですよ。家に帰ってやらないといけないことあるんで、予習とか復習を済ませているだけです」
「ふーん、凄いね。真宮さんって真面目なんだぁ」
「別に真面目とかじゃないです!」
彼女の言った真面目という言葉に少し気分が悪くなってしまい、思わず強めに言い返してしまった。
「でもさ、折角の休みなのにここで勉強してるんだもん、真面目じゃない?」
「真面目じゃないです」
「不真面目なんだ?」
「ふ、不真面目なんかじゃありません」
「じゃあ真面目だね!」
「勝手に決めないでください!」
なんなのこの人……すごく馴れ馴れしいし、初対面なのに失礼とか思わないのかな。
別に休日なにをしようと私の勝手だと思うんだけど……なんでだろうな……真面目って言われると不愉快だ。
でも不真面目は心外。それなら真面目の方がマシかも。
「だったら、コレで決めてみない?」
言うと仲里さんはチェーンの先に水晶がついたアクセサリーを差し出して見せた。
「綺麗な水晶ですね。それがどうかしたんですか?」
「これはね、ペンデュラムと言って振り子のようにして使うの。日本語で振り子って意味なんだよ?」
「そうなんですか……」
「ためしにやってみせるね」
仲里さんは言いながら水晶のついたチェーンを指でもち、空いた方の手で水晶にそっと手を添え、それが揺れないように静止させた。
「いい? このペンデュラムを使ったダウジングはチェーンの先についた水晶が重りとなっていて、これの揺れ方で、はい、といいえの質問形式で答えを導きだすの。ここまでは分かった?」
「は、はい……」
なに? 私もしかして怪しい勧誘みたいなのに捕まってしまったのかな?
「続けるわね。まず準備が必要なんだけど、最初は当たり前の質問をするわ。例えばあたしは男ですと質問する……見てて……水晶が回転するわ」
言われた通りに見つめていると、暫くして仲里さんの言う通り、水晶が静かに左右へと揺れ出し、次第に右回りに激しく回り出した。
「ほらほら、右回りに動いてるよね?」
「は、はい! 不思議です、面白いですね」
「説明を続けるね。あたしは男ですと質問した結果が右回りということは、これは間違いを意味するわ、だって答えは女だから。つまり右回りは、いいえを意味する……反対に左回りは、はい、になるわけ。OK?」
「お、おっけい、です……」
「これで準備ができたわ。これから質問することに対して右回りなら、いいえ、左回りなら、はい。――ということで、今から真宮さんは真面目かどうかを質問するね!」
「え?」
「はい、スタート!……真宮さんは真面目だ」
仲里さんは質問を口にすると、水晶が静かに左右へ揺れだした……右に、左に……さっきとは違って中々、回転は始まらない。
ずっと眺めていると酔ってしまいそう……これって占い? なんだろう? 私は真面目なんかじゃない……小さい頃から周りにそう言われることは多かったけど、その度に、そんな風に決めつけられるのが嫌で仕方なかった……いっそ、仲里さんみたいになれたらいいのにな……。
数秒、数分かな……暫くするとペンデュラムの水晶は激しく左右に揺れ出し……気がつくと――。
私は親指と人差し指で揺れるペンデュラムを持っていて、目の前には私、真宮葵の驚いた顔がこちらを凝視している。
この状況を理解するまでに、そう時間は掛からなかった。真宮葵は仲里さんと中身が入れ替わってしまったのだ……。
私、真宮葵は池袋のファストフード店で勉強をしていると、女性の声で突然、話しかけられた。
ノートから目を離し見上げてみると、そこにはスラッとした体型で目鼻立ちの整った女の子がトレイを両手に立っている。少し明るめの髪は後頭部でまとめられたポニーテールだ。
「ど、うぞ……」
少し大人びて見えるけど歳は同じくらい? あまりにも綺麗な子だったから緊張したけど、私は返事をしてテーブルのスペースを急いであけた。
「やった! ほんとに? ありがとう!」
女の子はお礼を言いながら前の席に腰をかけ、ドリンクにミルクとガムシロップ三個を入れ始める。
甘党なのかな? ガムシロップ三個って普通に多いと思うけど。
私には絶対無理。歯が溶けてしまいそう。
「あ! ガムシロップが気になった? あたしアイスティーのストレートって苦手なの」
「そ、そうなんですね……ジロジロ見ちゃってごめんなさい」
「ううん、いいよ。よく言われるし」
よく言われるんだ……牛乳は苦手だけど、コーヒー牛乳は好きみたいな感じかな? アイスティーを甘くした味が好きなのね。
「ポテト食べる?」
「い、いえ」
女の子はポテトに手を伸ばして美味しそうに食べている。見ていたらなんだかお腹が空いてきてしまったけど、夕食が食べられなくなりそうなので断った。
そろそろ会話をするのはやめておこう。つい流れで話してしまったけど、勉強の続きをしないと。
夕方までには終わらせて食材の買い足しもしておかないとだし……。
――ねぇ。
「真宮さん」
え?
「は、はい。えっと、どうして私の名前を知っているんですか?」
「だってほら、そこに書いてあるもの。まみやであってるよね? あたしは仲里っていうの」
仲里と名乗る女の子は、テーブルの端に寄せてあった教科書に書いてある名字を指差し言った。
この人なんだか距離が近くて苦手だな……人の名前を勝手に見て口にするなんて。
どうしよう……でも、無視するのは良くないよね。
「真宮さんは、勉強得意な感じ? 凄いよね。あたしそういうの苦手だから尊敬しちゃうよ」
私が会話に困っていると女の子は話を続けた。
別に勉強が得意なわけではないけど、仲里さんは勉強が好きじゃないことはわかる。
「別に得意とかじゃないですよ。家に帰ってやらないといけないことあるんで、予習とか復習を済ませているだけです」
「ふーん、凄いね。真宮さんって真面目なんだぁ」
「別に真面目とかじゃないです!」
彼女の言った真面目という言葉に少し気分が悪くなってしまい、思わず強めに言い返してしまった。
「でもさ、折角の休みなのにここで勉強してるんだもん、真面目じゃない?」
「真面目じゃないです」
「不真面目なんだ?」
「ふ、不真面目なんかじゃありません」
「じゃあ真面目だね!」
「勝手に決めないでください!」
なんなのこの人……すごく馴れ馴れしいし、初対面なのに失礼とか思わないのかな。
別に休日なにをしようと私の勝手だと思うんだけど……なんでだろうな……真面目って言われると不愉快だ。
でも不真面目は心外。それなら真面目の方がマシかも。
「だったら、コレで決めてみない?」
言うと仲里さんはチェーンの先に水晶がついたアクセサリーを差し出して見せた。
「綺麗な水晶ですね。それがどうかしたんですか?」
「これはね、ペンデュラムと言って振り子のようにして使うの。日本語で振り子って意味なんだよ?」
「そうなんですか……」
「ためしにやってみせるね」
仲里さんは言いながら水晶のついたチェーンを指でもち、空いた方の手で水晶にそっと手を添え、それが揺れないように静止させた。
「いい? このペンデュラムを使ったダウジングはチェーンの先についた水晶が重りとなっていて、これの揺れ方で、はい、といいえの質問形式で答えを導きだすの。ここまでは分かった?」
「は、はい……」
なに? 私もしかして怪しい勧誘みたいなのに捕まってしまったのかな?
「続けるわね。まず準備が必要なんだけど、最初は当たり前の質問をするわ。例えばあたしは男ですと質問する……見てて……水晶が回転するわ」
言われた通りに見つめていると、暫くして仲里さんの言う通り、水晶が静かに左右へと揺れ出し、次第に右回りに激しく回り出した。
「ほらほら、右回りに動いてるよね?」
「は、はい! 不思議です、面白いですね」
「説明を続けるね。あたしは男ですと質問した結果が右回りということは、これは間違いを意味するわ、だって答えは女だから。つまり右回りは、いいえを意味する……反対に左回りは、はい、になるわけ。OK?」
「お、おっけい、です……」
「これで準備ができたわ。これから質問することに対して右回りなら、いいえ、左回りなら、はい。――ということで、今から真宮さんは真面目かどうかを質問するね!」
「え?」
「はい、スタート!……真宮さんは真面目だ」
仲里さんは質問を口にすると、水晶が静かに左右へ揺れだした……右に、左に……さっきとは違って中々、回転は始まらない。
ずっと眺めていると酔ってしまいそう……これって占い? なんだろう? 私は真面目なんかじゃない……小さい頃から周りにそう言われることは多かったけど、その度に、そんな風に決めつけられるのが嫌で仕方なかった……いっそ、仲里さんみたいになれたらいいのにな……。
数秒、数分かな……暫くするとペンデュラムの水晶は激しく左右に揺れ出し……気がつくと――。
私は親指と人差し指で揺れるペンデュラムを持っていて、目の前には私、真宮葵の驚いた顔がこちらを凝視している。
この状況を理解するまでに、そう時間は掛からなかった。真宮葵は仲里さんと中身が入れ替わってしまったのだ……。
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