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〜兄弟の絆〜
守りたい人
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カイトは自分の兄のマルクスが死んだことをデミタスから聞いて心底ショックを受けた。あまりの衝撃によりその場で膝から崩れ落ちると、悲しみを感じることすらできずに呆けてしまっていた。私はそんな彼を両手で抱きしめると、カイトの名前をひたすら呼び続けた。
カイトはそのまま目の前が真っ暗になり何も考えられずにいた。真っ暗な暗闇の中、ぼんやりと昔の光景が見えてきた。それはまだカイトが幼い時の兄との記憶だった。
カイトとマルクスの兄弟の両親は、まだカイトが幼いときに二人共事故で亡くなり、兄のマルクスは自立をしていたが、幼かったカイトは一人で親戚の叔父に引き取られていた。小さかったカイトはその時にその叔父からひどい虐待を受けていた。カイトが見ていた光景は、虐待を見かねた兄のマルクスに引き取られてすぐの頃の記憶だった
記憶の中のカイトは、一人で兄の帰りを待っていた。兄に引き取られてすぐのことでカイトはその時感じていた心細い思いが蘇ってきた。兄に引き取られてこの家に来たものの、兄はすぐに自分を置いてどこか遠くに行ってしまうのではないか? 自分の面倒を見るなが嫌になって居なくなってしまうのではと心配していた。当時、兄は料理人の夢を諦めて、ギルティーに入隊したばかりで、まだ仕事に慣れていないのか、夜遅くに帰宅していたこともあり、カイトは時折そんなことを考えるようになっていた。
カイトが台所のイスに座っていると玄関の扉を開ける音がした。
「兄ちゃん!」
カイトはそう言うとマルクスの元に駆け寄った。
「カイト。ただいま。遅くなってすまないな」
マルクスは優しく微笑むと、駆け寄ってきたカイトの頭を撫でた。
「おかえりなさい、兄ちゃん。ううん。俺は大丈夫だよ」
カイトはマルクスが帰ってきてくれたことが心底嬉しかった。
マルクスは家の中に入るとヨロヨロとした足取りで台所に向かった。
「なにか美味しいものを作ってやるから待ってろよ」
「うん。兄ちゃん」
よほど疲れているのかマルクスの足取りは重くフラフラしていた。そんなマルクスの背中を見てカイトはゾッとした。マルクスの背中に血がベットリと付いていた。
「兄ちゃん! 背中!」
カイトは咄嗟にそう叫ぶと兄に駆け寄って、背中のシャツをめくると背中の一部がえぐれてそこから血が滲んでいた。
「ああ。今日の戦闘はいつもより少し激しかったからな」
「大丈夫? 早く手当をしよう?」
「これぐらい大丈夫だよ。それより腹が減ったろ? 早くご飯を作ろう」
「だめだよ! 俺のことはいいから早く手当をしよう!」
カイトはマルクスを強引にイスに座らせると棚から薬箱を取り出して背中の傷を手当した。薬を傷口に塗ると染みたのか少し痛そうに顔を歪めた。
「ごめん。兄ちゃん痛かった?」
「いや、大丈夫だよ。そんなことよりいつも一人にさせてすまないな」
「何いってんだよ、そんなこと、兄ちゃんがいるから俺はちっとも寂しくないよ」
「そ、そうか……」
そう言うとマルクスは優しい表情になり、何も言わなくなった。カイトはこの機会に今まで聞けなかった兄の胸の内を聞いてみようと思った。
「兄ちゃん?」
「ん? なんだ?」
「俺のために料理人の夢を諦めて後悔してる?」
「フッ。バカ、そんなことを思っていたのか?」
「だって……、俺が居なければ兄ちゃんは今でも料理人を続けられたんだよ?」
「俺は料理人をすることより、お前と一緒に住むことのほうが大事だと思ったから、料理人をやめたんだ。後悔はこれっぽっちも無いよ」
「本当に? 自分の夢を諦めてまで俺を養っていくほうが大事なの?」
「いいか、カイト。自分の夢に向かって努力するのも大事だが、自分が大切に思う人のために生きる方が重要なこともあるんだよ」
「う、嘘だ。みんな自分が一番大事じゃないの?」
「ハッハッハ~~! お前も大人になれば分かる時が来るさ。こいつのためなら自分がいくら犠牲になっても良いと思える者が現れる日が来るよ」
「本当に? そんな日が来るの?」
「ああ。そのうち分かる時が来るよ。さあ、お腹空いたろ? 早くなにかうまいもん作ってやるよ」
その時のマルクスの幸せそうな顔を今でも鮮明に覚えていた。やがてぼんやりとした記憶は消え再び眼の前が真っ暗になった。なぜ今その時の光景が見えたのか分からなかった。真っ暗な暗闇の中、カイトが呆然と立っているとなにかが聞こえてきた。耳を澄ませていると微かに自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
「……カ……カイ…ト……」
耳を澄ませて声のする方に向かってあるき出した。真っ暗な中、手探りで自分を呼ぶ声の方に吸い寄せられていく、暫く歩くと今度は、はっきりと聞こえた。
「カイト! カイト!」
その瞬間、カイトの意識が戻った。眼の前にはティアラが泣きながら自分を必死で呼んでいる顔が見えた。頭を両手で優しく包みながら、カイトしっかりして、ごめんなさい、と何度も何度も泣きながら繰り返していた。こんな自分を心配して泣いてくれているのか? そう思った瞬間、マルクスの言っていたことを思い出した。
『こいつのためなら自分がいくら犠牲になっても良いと思える日が来るよ』
(ああ、そうか。これが兄ちゃん言っていたことか。兄ちゃん。その言葉の意味が今になってやっと分かったよ。こんな同仕様もない俺を君は大切に思ってくれた。君に必要とされるたびに俺はどんなに勇気づけられたことか、俺はこの女のためなら自分を犠牲にできるよ)
「ティアラ!!」
カイトは叫ぶとティアラの両手を掴んだ。
「カイト! 大丈夫?」
「ああ、ティアラ。心配させて悪かった。もう大丈夫だ。今は悲しんでいる暇は無いな。俺に任せろ!」
カイトは意識が戻ると周りを見わたして驚いた。ルーン大国の兵士たちがデミタスと戦っていた。戦っていると言うよりもデミタスによって一方的に虐殺されているという表現のほうがあっているだろう、何人もの兵士たちがデミタスの腐食魔法によってミイラのような姿になって絶命していた。
カイトは遠くでデミタスと戦っている夜叉神将軍に向かった。
◇
次々とデミタスの前に倒れていく兵士たちを見て夜叉神はここに来たことを後悔した。
部下からティアラという聖女がここに向かったと知らせが入ったため、兵士を引き連れて彼女を連れ戻しに来ただけだった。そのため、あまり多くの兵士を連れていないので、このままではすぐに全滅してしまう。
(ティアラはロビナスを救ったマルクスの弟が愛した女性だと聞いたため、放おって置くこともできずにここに来てしまったが、俺の間違いだった。ここは一旦引き下がろう)
夜叉神はそう決断するとこの場から撤退の命令を叫ぼうとした時、危ない、と兵士の一人が叫んだ。その声に振り返るったときにはすでに、目の前に黒い塊があった。
(だめだ! 避けきれない!)
夜叉神にしては珍しく死を覚悟した時、森の中から何者かが出てきて飛んできた黒い塊を刀で両断した。黒い塊は半分になって、そのまま消滅した。
「お、お前は? ダンテか?」
「将軍、なぜあなたがここに?」
「ティアラがロビナスに向かったと聞いて連れ戻しに来た」
「フン! 人間ごときにあいつを倒すことは不可能だ。さっさと撤退しろ!」
ぶっきらぼうな言葉に夜叉神が振り返るとそこにはルディーの姿があった。
「お前、まだここに住んでいたのか?」
「ここでマルクスの意志を守るのが俺の役目だ」
「それは殊勝なことだな」
それを聞いてルディーはそんなんじゃねえ、と吐き捨てるように言うと刀を構えた。ダンテと夜叉神も続けて構えた。
「フッ、あっはっは~~~! 雑魚が群れても私は倒せんぞ~」
刀を構えた三人を見てデミタスはゆっくりと近づいてくる。
「おい。どうする?」
夜叉神に聞かれてルディーもいい案が浮かばない。
「どうすると言われてもどうすることもできない。あいつを倒すことができるのは……」
「何をいつまでも、三人でベラベラ喋っている? マルクスが寂しくないようにお前たちもここで始末してやろう」
デミタスはそう言うと再び高らかに笑った。
「き、貴様だけは絶対に許さねえ~~!!」
ルディーは刀に力を込めると飛びかかろうとした。
『ドッガ~~~~ン~~!!』
轟音とともにデミタスの体に巨大な雷が落ちた。デミタスはすごい勢いで吹き飛んだ。
「こ、この雷魔法は? ま、まさか……?」
「待たせたな。ここは俺に任せて、あんたたちはできるだけここから離れてくれ」
そう言いながらカイトは三人の前に空からゆっくりと降りてきた。
「カイト! お前……まさか?」
「ああ。全部あいつから聞いたよ。あいつは……あの男だけは俺が全力でこの世から葬り去ってやる!」
カイトはそう言うとデミタスを睨んだ。デミタスはゆっくりと立ち上がるとまだ黒く焦げた体を引きずリながらカイトに近づいてきた。
「お前がこの私を倒すだと? 笑わせるな! この前の戦いで貴様の雷魔法はこの私に効かないのを忘れたわけでは無いだろうな?」
デミタスはそう言いながら体の傷を自己修復していき、あれほど重症だった傷がほぼ元通りになっていた。
デミタスが言ったように少し前にカイトはデミタスと戦っていた、そのときカイトの魔法攻撃は全く効かずデミタスに圧勝されてしまった。もうだめかと思ったときに、夜叉神将軍の軍勢が助太刀に来てくれてなんとかティアラと逃げ出した。
「兄と同じこの地で永遠に眠れ!」
デミタスはそう言うと黒い塊をカイトに向けて飛ばそうとした時、逆にカイトから放たれた水の塊がデミタスを襲った。大量の水に押し流されてあっという間に全身がずぶ濡れになった。
「な、なんだこれは? なんのつもりだ?」
「俺はこれまでこの魔法だけは使わないと誓った」
「な、なんのことだ?」
デミタスは言っている意味がわからないという顔でカイトを見ていた。
「あまりに強力すぎるので、この魔法だけはたとえ人間相手でも使わないと誓ったんだ。ましてや同じエルフの仲間に使うことを、あの時も躊躇した」
「魔法? だと?」
「俺は雷魔法の他に水の精霊と契約している」
「そ、それがどうした? 何が言いたい?」
「水の精霊の力と俺の雷魔法が組み合わさるとどうなるか想像できるか?」
「き、貴様一体何をする気だ?」
「知ってるか? 水に濡れた体は乾いているときより、電気を33倍も流れ易くするんだぞ」
そう言うとカイトは全身ずぶ濡れになっているデミタスに向かって最大火力の電撃を放った。
カイトはそのまま目の前が真っ暗になり何も考えられずにいた。真っ暗な暗闇の中、ぼんやりと昔の光景が見えてきた。それはまだカイトが幼い時の兄との記憶だった。
カイトとマルクスの兄弟の両親は、まだカイトが幼いときに二人共事故で亡くなり、兄のマルクスは自立をしていたが、幼かったカイトは一人で親戚の叔父に引き取られていた。小さかったカイトはその時にその叔父からひどい虐待を受けていた。カイトが見ていた光景は、虐待を見かねた兄のマルクスに引き取られてすぐの頃の記憶だった
記憶の中のカイトは、一人で兄の帰りを待っていた。兄に引き取られてすぐのことでカイトはその時感じていた心細い思いが蘇ってきた。兄に引き取られてこの家に来たものの、兄はすぐに自分を置いてどこか遠くに行ってしまうのではないか? 自分の面倒を見るなが嫌になって居なくなってしまうのではと心配していた。当時、兄は料理人の夢を諦めて、ギルティーに入隊したばかりで、まだ仕事に慣れていないのか、夜遅くに帰宅していたこともあり、カイトは時折そんなことを考えるようになっていた。
カイトが台所のイスに座っていると玄関の扉を開ける音がした。
「兄ちゃん!」
カイトはそう言うとマルクスの元に駆け寄った。
「カイト。ただいま。遅くなってすまないな」
マルクスは優しく微笑むと、駆け寄ってきたカイトの頭を撫でた。
「おかえりなさい、兄ちゃん。ううん。俺は大丈夫だよ」
カイトはマルクスが帰ってきてくれたことが心底嬉しかった。
マルクスは家の中に入るとヨロヨロとした足取りで台所に向かった。
「なにか美味しいものを作ってやるから待ってろよ」
「うん。兄ちゃん」
よほど疲れているのかマルクスの足取りは重くフラフラしていた。そんなマルクスの背中を見てカイトはゾッとした。マルクスの背中に血がベットリと付いていた。
「兄ちゃん! 背中!」
カイトは咄嗟にそう叫ぶと兄に駆け寄って、背中のシャツをめくると背中の一部がえぐれてそこから血が滲んでいた。
「ああ。今日の戦闘はいつもより少し激しかったからな」
「大丈夫? 早く手当をしよう?」
「これぐらい大丈夫だよ。それより腹が減ったろ? 早くご飯を作ろう」
「だめだよ! 俺のことはいいから早く手当をしよう!」
カイトはマルクスを強引にイスに座らせると棚から薬箱を取り出して背中の傷を手当した。薬を傷口に塗ると染みたのか少し痛そうに顔を歪めた。
「ごめん。兄ちゃん痛かった?」
「いや、大丈夫だよ。そんなことよりいつも一人にさせてすまないな」
「何いってんだよ、そんなこと、兄ちゃんがいるから俺はちっとも寂しくないよ」
「そ、そうか……」
そう言うとマルクスは優しい表情になり、何も言わなくなった。カイトはこの機会に今まで聞けなかった兄の胸の内を聞いてみようと思った。
「兄ちゃん?」
「ん? なんだ?」
「俺のために料理人の夢を諦めて後悔してる?」
「フッ。バカ、そんなことを思っていたのか?」
「だって……、俺が居なければ兄ちゃんは今でも料理人を続けられたんだよ?」
「俺は料理人をすることより、お前と一緒に住むことのほうが大事だと思ったから、料理人をやめたんだ。後悔はこれっぽっちも無いよ」
「本当に? 自分の夢を諦めてまで俺を養っていくほうが大事なの?」
「いいか、カイト。自分の夢に向かって努力するのも大事だが、自分が大切に思う人のために生きる方が重要なこともあるんだよ」
「う、嘘だ。みんな自分が一番大事じゃないの?」
「ハッハッハ~~! お前も大人になれば分かる時が来るさ。こいつのためなら自分がいくら犠牲になっても良いと思える者が現れる日が来るよ」
「本当に? そんな日が来るの?」
「ああ。そのうち分かる時が来るよ。さあ、お腹空いたろ? 早くなにかうまいもん作ってやるよ」
その時のマルクスの幸せそうな顔を今でも鮮明に覚えていた。やがてぼんやりとした記憶は消え再び眼の前が真っ暗になった。なぜ今その時の光景が見えたのか分からなかった。真っ暗な暗闇の中、カイトが呆然と立っているとなにかが聞こえてきた。耳を澄ませていると微かに自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
「……カ……カイ…ト……」
耳を澄ませて声のする方に向かってあるき出した。真っ暗な中、手探りで自分を呼ぶ声の方に吸い寄せられていく、暫く歩くと今度は、はっきりと聞こえた。
「カイト! カイト!」
その瞬間、カイトの意識が戻った。眼の前にはティアラが泣きながら自分を必死で呼んでいる顔が見えた。頭を両手で優しく包みながら、カイトしっかりして、ごめんなさい、と何度も何度も泣きながら繰り返していた。こんな自分を心配して泣いてくれているのか? そう思った瞬間、マルクスの言っていたことを思い出した。
『こいつのためなら自分がいくら犠牲になっても良いと思える日が来るよ』
(ああ、そうか。これが兄ちゃん言っていたことか。兄ちゃん。その言葉の意味が今になってやっと分かったよ。こんな同仕様もない俺を君は大切に思ってくれた。君に必要とされるたびに俺はどんなに勇気づけられたことか、俺はこの女のためなら自分を犠牲にできるよ)
「ティアラ!!」
カイトは叫ぶとティアラの両手を掴んだ。
「カイト! 大丈夫?」
「ああ、ティアラ。心配させて悪かった。もう大丈夫だ。今は悲しんでいる暇は無いな。俺に任せろ!」
カイトは意識が戻ると周りを見わたして驚いた。ルーン大国の兵士たちがデミタスと戦っていた。戦っていると言うよりもデミタスによって一方的に虐殺されているという表現のほうがあっているだろう、何人もの兵士たちがデミタスの腐食魔法によってミイラのような姿になって絶命していた。
カイトは遠くでデミタスと戦っている夜叉神将軍に向かった。
◇
次々とデミタスの前に倒れていく兵士たちを見て夜叉神はここに来たことを後悔した。
部下からティアラという聖女がここに向かったと知らせが入ったため、兵士を引き連れて彼女を連れ戻しに来ただけだった。そのため、あまり多くの兵士を連れていないので、このままではすぐに全滅してしまう。
(ティアラはロビナスを救ったマルクスの弟が愛した女性だと聞いたため、放おって置くこともできずにここに来てしまったが、俺の間違いだった。ここは一旦引き下がろう)
夜叉神はそう決断するとこの場から撤退の命令を叫ぼうとした時、危ない、と兵士の一人が叫んだ。その声に振り返るったときにはすでに、目の前に黒い塊があった。
(だめだ! 避けきれない!)
夜叉神にしては珍しく死を覚悟した時、森の中から何者かが出てきて飛んできた黒い塊を刀で両断した。黒い塊は半分になって、そのまま消滅した。
「お、お前は? ダンテか?」
「将軍、なぜあなたがここに?」
「ティアラがロビナスに向かったと聞いて連れ戻しに来た」
「フン! 人間ごときにあいつを倒すことは不可能だ。さっさと撤退しろ!」
ぶっきらぼうな言葉に夜叉神が振り返るとそこにはルディーの姿があった。
「お前、まだここに住んでいたのか?」
「ここでマルクスの意志を守るのが俺の役目だ」
「それは殊勝なことだな」
それを聞いてルディーはそんなんじゃねえ、と吐き捨てるように言うと刀を構えた。ダンテと夜叉神も続けて構えた。
「フッ、あっはっは~~~! 雑魚が群れても私は倒せんぞ~」
刀を構えた三人を見てデミタスはゆっくりと近づいてくる。
「おい。どうする?」
夜叉神に聞かれてルディーもいい案が浮かばない。
「どうすると言われてもどうすることもできない。あいつを倒すことができるのは……」
「何をいつまでも、三人でベラベラ喋っている? マルクスが寂しくないようにお前たちもここで始末してやろう」
デミタスはそう言うと再び高らかに笑った。
「き、貴様だけは絶対に許さねえ~~!!」
ルディーは刀に力を込めると飛びかかろうとした。
『ドッガ~~~~ン~~!!』
轟音とともにデミタスの体に巨大な雷が落ちた。デミタスはすごい勢いで吹き飛んだ。
「こ、この雷魔法は? ま、まさか……?」
「待たせたな。ここは俺に任せて、あんたたちはできるだけここから離れてくれ」
そう言いながらカイトは三人の前に空からゆっくりと降りてきた。
「カイト! お前……まさか?」
「ああ。全部あいつから聞いたよ。あいつは……あの男だけは俺が全力でこの世から葬り去ってやる!」
カイトはそう言うとデミタスを睨んだ。デミタスはゆっくりと立ち上がるとまだ黒く焦げた体を引きずリながらカイトに近づいてきた。
「お前がこの私を倒すだと? 笑わせるな! この前の戦いで貴様の雷魔法はこの私に効かないのを忘れたわけでは無いだろうな?」
デミタスはそう言いながら体の傷を自己修復していき、あれほど重症だった傷がほぼ元通りになっていた。
デミタスが言ったように少し前にカイトはデミタスと戦っていた、そのときカイトの魔法攻撃は全く効かずデミタスに圧勝されてしまった。もうだめかと思ったときに、夜叉神将軍の軍勢が助太刀に来てくれてなんとかティアラと逃げ出した。
「兄と同じこの地で永遠に眠れ!」
デミタスはそう言うと黒い塊をカイトに向けて飛ばそうとした時、逆にカイトから放たれた水の塊がデミタスを襲った。大量の水に押し流されてあっという間に全身がずぶ濡れになった。
「な、なんだこれは? なんのつもりだ?」
「俺はこれまでこの魔法だけは使わないと誓った」
「な、なんのことだ?」
デミタスは言っている意味がわからないという顔でカイトを見ていた。
「あまりに強力すぎるので、この魔法だけはたとえ人間相手でも使わないと誓ったんだ。ましてや同じエルフの仲間に使うことを、あの時も躊躇した」
「魔法? だと?」
「俺は雷魔法の他に水の精霊と契約している」
「そ、それがどうした? 何が言いたい?」
「水の精霊の力と俺の雷魔法が組み合わさるとどうなるか想像できるか?」
「き、貴様一体何をする気だ?」
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