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第04章 奴隷狩り

04 事情聴取からの歓待

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 さらわれた娘の捜索依頼を受けたと思ったら、まさかに翌日に発見し保護した。
 思っていた以上に早く見つかり、ちょっと拍子抜けしたのは仕方ない。

 だがまぁ、無事保護できたのはよかったと思う。

 というわけで、現在俺たちはキエリーヴを出てしばし街道を歩いてから、街道をはずれて森の中。
 テントを出してまずは、モニカを風呂に入れて着替えさせることにした。
 いつまでも、奴隷のボロってわけにはいかないからな。

「お待たせぇ」
「おう」
「……」

 シュンナとモニカが風呂から出てきた。
 モニカは身ぎれいとなり、シュンナから服を借りたようで胸元を気にしながら出てきた。

「あ、あの、シュンナさんから聞きました。その父からお願いされたみたいで、その、ありがとうございました」

 そう言って、モニカは俺とダンクスに向けて頭を下げてきた。

「なに、成り行きみたいなもんだ。気にすんな」
「……」

 俺も無言ながらもダンクスに同意しうなずく。

「そうそう、気にしないでって、ダンクスも言ったけど、成り行きだからね」

 極論を言えば暇つぶし、まぁダンクスの騎士魂がうずいただけといったところだ。

「もっとも、こんなに早く見つかるとは思わなかったが。まぁ、話はこいつを食ってからにしようぜ。腹減ったろ」

 俺たちは宿で朝飯を食っていない、というのも、ああいうところでは奴隷の食事というものはろくなものが出ないからだ。
 いくら奴隷だからといってモニカにそれを食わせるわけにはいかないし、俺たちもそんな粗末なものを食っている隣でまともな飯を食うには味気がなさすぎるということから、あえて朝飯を食わなかった。
 おかげで腹減ったよ。

「ほら、こいつを食いな」
「は、はい、ありがとうございます」
「テーブルの上には、モニカのだけではなく俺たち3人分用意してあったこともあり、モニカも素直に食べ始める」

 そうして、朝食を食べ終えたところで、事情聴取となった。

「んで、何があったのか聞かせてくれるか? もちろん、せかすつもりはないからゆっくりでいいぜ。思い出したくないこともあるだろうしな」

 ダンクスはそう言って、モニカに聞いたが、まさにその通り俺たちは取り調べをしているわけではないからな。

「そうよ。ゆっくりでいいからね」
「は、はい、大丈夫です。そ、その……」

 モニカはゆっくりと語りだした。

 それによると、モニカは友人のロリエとともに山菜取りに出かけ、森の中で少しの間別行動をとることになった。
 そこまでは、俺たちも村で聞いていたので特に新しい情報はない。

「そしたら、急に男の人たちが現れて……」

 山菜取りに夢中になっていると、突如男たちが3人現れた。
 そして、いきなり襲い掛かってきたという、ロリエが聞いた悲鳴はこの時のものだ。
 だが、すぐに男たちに口を防がれ拘束された。
 この話をしながらモニカは体を震わせていたので、シュンナがそっとその肩を抱きしめた。
 そりゃぁ、恐怖だよな。俺は男だからわからないが、突然知らない男たちに囲まれて、襲われて、口をふさがれて、そりゃぁまだ15の娘にとっては恐怖以外の何物でもない、いや、こればかりは年は関係ないか、どんな年でも、恐怖する事態だ。

 それから、モニカは馬車に乗せられ、首に奴隷の首輪をはめられたという。

「えっ、そこで?」
「……はい」

 おかしい、確か奴隷の首輪というものはシムサイト商業国という国が製造と販売を行っている。
 しかも、その製造には暗黒魔法の使い手たちが、儀式魔法という複数の人間が行う方法を用いて、首輪に付与するというやり方をする。
 そのため、奴隷の首輪自体数がかなり少ない。
 だから、基本は国が買い上げそれを奴隷商に売るという方法がとられている。
 んで、何がおかしいというと、モニカをさらった奴らは聞くところによると奴隷商ではない、なにせキエリーヴに入ったところですぐにモニカを売り払ったそうだからだ。
 しかもその風体と話していた内容から考えると、そいつらが奴隷商ではないことは間違いないだろう。

「そうか、すまないな」
「い、いえ」

 こうして、とりあえずの事情聴取は終わった。

「それじゃ、すぐにでもモニカちゃんを村に届けてあげましょう。コウリさんも喜ぶでしょ」
「そうだな。そうすっか」
「ああ」
「あ、あの、すみません」

 それからさっそくとばかりに立ち上がってテントを出たのだった。

「……」

 モニカは何も言わずにただ黙ってテントを眺めている。
 おそらく、これが何か聞きたいのだろうが、俺たちに聞くのをためらっているのであろう。
 まぁ、俺としては助かる。

「そんじゃ、飛ぶぞ」
「お願い」
「おう」
「飛ぶ?」

 モニカだけは首をかしげていたが、俺はそこを特に気にることはなく”転移”を発動させた。



 次の瞬間俺たちはシェルド村の側に立っていた。

「えっ、えっ、どこ? なに? あっ、ここは、まさか!」

 突然風景が変わったことでモニカは疑問符を頭に浮かべあたりを見渡していたが、すぐに見覚えのある場所であることに気が付いた。

「ここは、シェルド村の近くよ」
「えっ、ほ、ほんとだ。どうして?」
「スニルの魔法だ。こいつはこれでも魔法の天才でな。まぁ、気にすんな。ホラ、行くぜ。親父さんが待ってる」
「は、はい」

 ダンクスに言われてモニカはそれ以上疑問を言わず村のほうへと走っていった。
 それについていく俺たちだった。

「お父さん、お母さん、ロリエ!」

 村に戻ったモニカはすぐに両親とロリエを呼んだ。

「モニカ!!」
「ああっ!」
「モニカぁ!!」

 その声にすぐに反応した3人、コウリとその妻でありモニカの母バニラと事件当時一緒にいたロリエであった。
 尤も、そのあとすぐにほかの面々も集まって来て、モニカがあっという間に見えなくなるほどに囲まれてしまった。


 そんな様子を眺めていたら、村長がやってきた。

「みなさん、モニカをお救い頂ありがとうございました」
「気にすんな」
「そうよ。気にしないで、まぁ、あたしたちも思っていたよりも早く見つけられて驚いているんだけどね」
「ええ、ええ、本当に、こんなに早く見つけて頂けるとは思いもしませんでした」

 これはお互いに思っていたことで、というかそもそもさらわれた娘が見つかること自体普通はありえない。
 なにせ、さらった娘というものは裏を通ってあちこちに売られてしまうために、普通はこんな近くの街の奴隷商にはいない。
 俺たちだってキエリーヴの奴隷商を巡ったが、そこにモニカがいるなんてみじんも思っていなかったからな。
 だが、なんの偶然かモニカはまだキエリーヴにおり、無事俺たちが保護することができた。
 これはまさに奇跡的なこととしていいだろう。

「あ、あの、ダンクスさん、シュンナさん、スニル君、娘を助けてくださってありがとうございます」
「本当にありがとうございました」

 村長と話していると、コウリとバニラがやって来て深々と頭を下げた。

「村長にもいったが、気にすることはないさ」
「そうそう、あたしたちが勝手にやったことだしね」
「……」

 ダンクスとシュンナはそう言ったが俺はいつものごとく人見知りが発動して黙っていた。

「どうか、御三方これより歓待の宴を開きたいと思います、どうぞご参加くださいませんか?」
「宴会か、どうする」
「あたしは別にいいけど、スニルは?」
「いいんじゃないか」

 ということで俺たちは村からの歓待を受けることとなった。


 それから、数時間後村の中では急遽テーブルが並べられ、そこにはささやかながらも料理が並んでいる。

 うまそうだ。

「さぁ、みんな杯を取れ! ええ、この度、我らがモニカをお救い頂いたこの御三方をお招きしての宴会だ。モニカの無事と御三方の今後を祈って乾杯をしようじゃないか。かんぱーい」

 かんぱーいと杯をぶつけあう村人たち、俺たちもまた同じくぶつけあった。
 ちなみに、ダンクスとシュンナは酒(ワイン)で俺だけが果実水となっている。
 いや、まぁいいけどね。見た目こんなだし、というか実年齢も12だからどっちみちまだ飲めないけど……。

 とまぁ、そんな感じに始まった宴会だが、なぜか俺は村の少女に囲まれていた。

「スニル君、ほんとかわいいわね」
「うん、うん」
「かわいい」

 囲まれている理由は母さん譲りのこの顔、前世ではいたって普通の顔をしていた身としては、まさか異世界でイケメン扱いされるとは思ってもみなかった。
 いや、イケメンじゃないか、まだかわいいだからな。
 といっても、俺は今完全に人見知りが発動し、右往左往している状態となっている。

「スニル君って、魔法の天才なんだって、すごいね」
「あれでしょ、なんか別のとこからあっという間にこの近くまで来たんでしょ」
「すっごいよねぇ。ねぇ、どうやるの?」
「見せてよ」

 さすがは小さな村の少女のコミュニティだけあって、あっという間に俺の”転移”のことが広がっていた。
 別に隠すことではないから別にいいけど、さてどうしたものか、本当に見せればいいのだろうか。
 そう思いながらもダンクスとシュンナに助けを求めてみた。

「おっ、いいんじゃないか、スニル」
「スニルなら問題ないんだから、見せてあげれば」

 なんてことを酔っ払いながら言いやがった。

「はぁ、まぁいいか、えっと、じゃぁ、ちょっとだけなら」
「やった、あっ、じゃぁ、あっちとかできる」

 そう言って、少女の1人が村の端のほうを指さした。

「わかった、転移」

 魔法を行使すると俺の姿がその場から掻き消え、少女の指さした場所へと飛んでいた。

「えっ」
「うそっ!」
「すごっ」
「ねっ、すごいでしょ」

 俺がホントに”転移”したことで、少女たちは度肝を抜かれたようで目を見開き、モニカだけは得意げだった。

「へぇ、ほんとにすげぇな。それが使えればどこにでも行き放題だな」
「あれは、スニルだから簡単にできるだけで、普通は無理よ」
「あいつは特別だ」

 俺の”転移”を見た村の人が利便性を訴えたが、それは俺だからで普通は無理だと、酔っ払いながらもダンクスとシュンナがそう言った。

 こうして俺たちと村人たちは夜通し飲んで騒いで、宴会を楽しんだのだった。
 それにしても、こうやって楽しそうにしているモニカや村人たちを見て、ほんとモニカを保護出来てよかったと思う、ちなみに、モニカが奴隷だったってことは一応両親には話したけれど、ほかには内緒にしている。
 元奴隷だと、嫁の貰い手とかがなさそうだしな。
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