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第04章 奴隷狩り

05 疑問からのエイルード

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 突然発生した捜索依頼のクエストを終えた俺たちは、発注された村で宴会に呼ばれて夜通し飲んで騒いだ。
 といっても、俺は夜には寝てしまったので、そのあとのことは知らない。
 しかし、ダンクスは今朝になって村のど真ん中でいびきをかいて寝ていたし、頭を抱えていた。
 いわゆる二日酔いだ。

「う~、頭痛てぇ」
「飲みすぎよ。はい、水」
「お、おう、ていうかシュンナ、お前も結構飲んでなかったか?」
「そうみえただけで、あたしはあんな樽で飲んでないわよ」

 どうやらダンクスの奴、樽で酒を飲んでいたようだ。
 普段も晩酌はしているが、いくら何でも樽は飲みすぎだ。
 余談だが、その樽酒は村の物ではなく、俺たちが提供したものだ。
 自分で提供して自分で飲みほしたってことだな。

「仕方ない、”リキュリア”」
「あれ?」
「スニル、今のは?」
「回復魔法の状態異常治癒魔法だ。二日酔いにも効くだろ」
「おう、効いた効いた。ありがてぇ」

 そう言いながらダンクスは俺の方をガシガシたたく……いてぇよ。

「それより、朝飯にしよう。腹減った」
「ああ、そうだな。おーい、お前らぁ、そろそろ起きろ~」

 いまだ寝ている村人たちをダンクスは大声で起こした。

「んっ、ああ、えっと、ああ、確か昨日……うー、頭、いてぇ」
「あれ? なんで俺ここで?」

 村人たちが起きだしたわけだが、こんなところで寝ていただけあり、みんながみんな昨夜のことを覚えていないらしい。

「全く、お前らしっかりせんか。すみません。御三方」
「いえ、気にしない、こっちも1人似たような状況だったから」
「いや、お前もだろ」
「あら、私はちゃんと家で寝てたわよ」
「まじっ? いや、だってお前だって、あんなに飲んでただろ」
「あたしは訳が分からなくなるほど飲んでないわよ」
「うそだろっ」

 シュンナの物言いにダンクスがあっけにとられている。
 この様子だと、どうやらシュンナも相当量を飲んだようだが、まさに蟒蛇うわばみだったようだ。
 考えてみれば、ダンクスやシュンナがここまで飲んだのは初めて見たからな。
 以前飲んだといえば、カリブリンでの収穫祭の時だろう、まぁあの時は孤児院ということで、大人たちも自重していたから全体的にそこまで飲んでいなかったんだよな。
 だから、2人がどれほど飲むのかについては俺も知らない。
 まぁ、一応2人は飲めるときは、夜の俺が寝た後で飲んでいるらしいけどな。


 それはともかく、その後俺たちは村で朝食を食べモニカをはじめとした村人たちから、改めて感謝されつつ村を出たのだった。



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 村を出た俺たちは少し歩いたところで”転移”、昨日の場所まで飛んだ。


「さて、行くか」
「おう、次はエイルードって街だっけか」
「そうそう、確かおいしいご飯があるって話だったわよね」
「ああ、楽しみだぜ」
「はははっ、まぁ確かにな」

 前世の俺は食うことに興味なんてなかった、食えればなんでもよかったし食事なんてものはほんと面倒な作業でしかなかった。
 そんな俺だったが、ダンクスやシュンナと出会ってこれまでいろいろ食ってきて、だんだんと食事というものに興味が出てきている。


 そうして街道を歩くことしばし、俺たちhあ囲まれていた。

「へへっ、ここを通りたけりゃぁ。有り金おいていきな」

 久しぶりの盗賊である。

「あー、はいはい」

 盗賊を見たシュンナがそう言ってまるで虫でも払うように手で払った。

「死にたくなかったら、どっか行きな」

 ダンクスも呆れつつそういった。

「……」

 俺は相変わらず無言だ。こういうところだけは治らないよなぁ。
 まぁ、別にこいつらみたいな馬鹿に無駄に言葉を使いたくないからいいけど。

「んだと。てめぇら、どうやら死にてぇらしいな」
「お前ら、やっちまえ」
「へへへっ、女はもらったー」

 一斉に盗賊が襲い掛かってきた。
 もちろん、俺たち3人にかかればこういう連中は瞬殺だ。

「ずみまぜんでじだ」

 生き残った盗賊の頭が俺たちの目の前で、ぼこぼこになりながら土下座を敢行している。

「お前らのアジトはどこだ?」
「……ごぢらでず」

 えらい素直になったな。まぁ、あそこまでボコられればなぁ。それでも、これまでの盗賊だったらもう少し持ったはずなんだが。


 その後、俺たちは盗賊の頭の案内でアジトへ侵入……と思ったんだが、アジトに着くなり頭が豹変。

「出てきやがれぇ。こいつらを殺せぇー」

 さっきまであんなに素直に、濁点をつけながら話していた頭が急に叫んだ。
 すると、アジトの中から大量の男たちが出てきた。
 どうやら、アジトにはまだ仲間がいたらしい。
 まぁ、どっちみち殲滅されるんだけどな。もちろんさっきの頭もすでに死んでいる。

「結構な数だったな」
「あれだけいたんなら、それなりに稼いでいる盗賊かもね」
「なら、お宝ざっくざくってやつだな」

 俺たちはワクワクしながら、アジトへと入っていった。


「おおぅ、すげぇな」
「……こんな光景初めて見たわ」
「俺もアニメでしか見たことねぇよ。こんな光景」

 俺たちの目の前に広がっているのは金銀財宝の数々だった。
 こういうのって、アニメとかではよく見かける光景だけど、実際にはここまで金銀をため込む藤蔵なんていないから、俺たちも初めて見たよ。
 ていうか、ほんとすごいんだけど、ナニコレ?

「どうする。これ?」
「一応、”収納”に入れておくか」
「しないってわけにはいかないでしょ」

 というわけで、俺たちは手分けして、目の前に広がる金銀財宝を片っ端から”収納”に収めていった。
 とはいえ、これどうしようかという問題がある。なにせ、こんなものどうさばけばいいのかわからない。
 でもまぁ、ちょっとずつならさばこうと思えば様蹴るし、いつか役に立つ日が来るかもしれないから、一応とって置こうってわけだ。


 こうして、盗賊のアジトから思っていた以上の収穫にほくほく顔に俺たちは、再び街道に戻りエイルードを目指していく。

「それにしても、さっきの奴らはすげぇ奴らだったな」
「もしかしたら、結構高額の賞金が懸けられているかもね」
「あの財宝じゃ、ありうるな」

 そう考えるとますますワクワクしてくる。
 いったい、どれだけの賞金が懸けられているのか、楽しみだ。

 そんなことを考えつつ街道を歩くこと2日、目の前には防壁がそびえたっていた。

「やっと着いたな」
「さぁ、さっさと入ろうぜ」
「そうね。あっ、でも賞金は忘れないようにね」

 シュンナは借金で奴隷になったこともあり、俺たちの中で一番金に細かい。
 いや、ていうか俺とダンクスが緩いのかもしれない。
 この間も俺とダンクスが面白そうなものを見つけたんで、買おうとしたらそんなものいらないとシュンナの怒られた。
 まぁ、昔から男が金を持つとろくなことにならないっていうからな。

 それはともかくとして、どうやら俺たちの番が来たようだ。

「身分証は?」
「いえ、あたしたちは旅人なので、通行料を払います」
「なら、大人2430ドリアス、子供がその半額だ」
「それじゃ、はい、ああ、あと道中で盗賊に襲われて、討伐したんですけどどうします」

 シュンナは3人分の通行料を6075ドリアスを支払うと、討伐した盗賊をどうするか尋ねた。

「何か討伐の証明はあるか」
「はい、ありますけど、ここじゃちょっと……」
「なら、奥で頼む。おい誰か、こいつらを奥に案内してくれ」
「はっ」
「それじゃ、こいつについて行ってくれ」
「わかりました」

 というわけで、俺たちは案内をしてくれる兵士についていくことになった。

「ここだ、入ってくれ。それで、その討伐証明の物を出してくれるか」
「はい、ダンクス」
「おう」

 証明は俺の”収納”に収まっているが、俺が下手に出すとトラブルのもとになるためにこういうのはダンクスの務めとなっている。

 そうして、ダンクスが取り出したわけだが、それに兵士は驚愕した。

「なっ、どこから? いや、それより、こいつらは、ちょ、ちょっと待ってろ」

 ダンクスが取り出したものは、盗賊の死体だ。
 武器など装備品を持ってきてもよかったんだが、それだと拾ったとか言われたら終わりだし、そもそも盗賊が分かりやすい装備を持っていること自体が稀だ。
 そのため、こうして死体を直接持ってきたほうが話が早い。
 俺の”収納”なら、生き物は無理でも死体なら入るからな。

 ただし、俺の”収納”には、ほかにも食糧とか服とかが入っているわけで、それらと一緒に死体を入れるというのは気分がよろしくない。そこで、に”収納”を用意してそこに収めている。
 これも、メティスルのおかげといってもいいだろう。
 なにせ、通常空間魔法の”収納”となると、普通は1つしか作れないからだ。
 そこはまぁ、あれだ魔法式をいじくり分割したといったところだ。

 さて、そんな話はいいとして部屋の外に出ていった兵士が数人の兵士とともに帰ってきた。

「んで、こいつらか、って、おいおいおい、まじかよ、おい、なんでこんなところにスイードの奴らの死体があんだよ」

 やってきた兵士の1人がそう言ったがどうやら、俺たちが討伐した盗賊の名前らしい。

「どういうことだ?」

 その兵士はまず状況を確認するために案内してくれた兵士へ尋ねた。

「はっ、私もよくは分かりませんが、この3人が盗賊を討伐したということでしたので、その討伐証明を出すように言ったところ、どこからともなくこの死体が出現しました」

 案内の兵士は事実を言っただけだ。

「んなわけあるか!」

 事実ではあるが、どこからともなく死体が出現したということで、あり得ないと怒鳴りつける兵士。

「あ、あの、いいですか?」
「えっ、ああ、なんだ?」

 たまりかねてシュンナが真実を話す。

「空間魔法の”収納”って知ってますか?」
「聞いたことがある程度だが、それがなんだ。んっ、まさか!」
「はい、あたしたちはその魔法の力を込めた魔道具を持っていて、この人が持っているのがそれです。これなら、死体だろうが何だろうが、持ってるんです。あっ、これは秘密ですよ」

 シュンナはそう言って指を口元に当ててウィンクをした。
 その瞬間兵士たちがあまりの可愛さに絶句したのは言うまでもないだろう。
 ていうか、俺も危うく見とれるところだったんだが、アブねぇな。

「……お、おっ、そうか、いや、しかしそんな魔道具が、す、すまないが何か取り出したりして見せてもらえるか」
「構わないぞ」

 そう言ってダンクスは”収納”の力をつけたマジックバックから、巨大な盾を取り出した。
 ……なに、あれ。見たことないんだけど……

「ダンクス、いつの間にあんなものを……」

 どうやらダンクスが取り出した盾をシュンナも知らなかったようで、頭を抱えながら呆れていた。
 これは後で怒られるパターンだな。

「こ、これはまた、失礼した。あなた方の言葉を信じよう。さて、それでこいつらのことだが、こいつらはこの辺りを荒らしまわっていた盗賊でスイードと呼ばれている。かなりの人数と手ごわさなどから、幾度となく討伐隊を送っては返り討ちにあっていてな。ほとほと困っていたのだ。それをたった3人で、いや2人か、いやまぁ、とにかく助かる」

 兵士はそういうと、少し苦笑いしながらも心底ほっとしたような表情を見せてきたが、1つ間違ってる。
 この討伐は2人ではなく俺たち3人でやり遂げたものだということをな。
 まぁ、どうでもいいけど、とにかくそのあと盗賊にかけられていた賞金50万ドリアスをという大金をもらったのだった。


 そうして、俺たちは晴れてエイルードの街へと入ったのだった。
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