異世界転移したら白龍の契約者になりました。

千宮司蓮翔

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Episode8

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気配遮断を発動し、優夜とイノリは塀のすぐ側まできていた。街を囲むようにそびえ立つ大きな塀。材質は石のようだが魔法の強化付与が施されている。

この街の名は、都市フーレニア周りを大きな石塀で囲むのには理由がある都市フーレニアの近くにある大森林にはAランクのモンスターが蔓延り冒険者たちも進んで立ち入る場所ではなくモンスターと戦える力のない一般市民を守るためにも大きな石塀が必要不可欠であり都市フーレニアの住民たちの命の綱なのである。

「とりあえず中に入ることも出来ましたし、宿に向かいますか。」

優夜はこの2日ほど大森林で野宿を強いられていた。生活魔法のおかげで衣服や身体の汚れは落とせてもやはりシャワーを浴び、ベットで寝るのが恋しくなる。

「お!良さそうな宿が見えたぞ~」

イノリが指を指した少し先に、二階建ての木の家が見えた。
暖かな灯りで照らした扉に出迎えられ中に入ると、一階は食堂にもなっているのだろう。この宿に寝泊まりしている数名が酒を煽り、食事を楽しんでいた。

扉から前に進んだ所に階段があり、二階が客人の寝室なのだろう。
階段の隣には簡素だがフロントのようなものがあり女性が座っている。

「宿泊をお願いしたいのですが。」

何か書き物をしていたのか下を向いていた女性に話しかけると急いで顔を上げ、返事をしてくれたが優夜と目が合うと頬が赤く染った。

「あ、えっと、かしこまりました!何泊のご予定ですか?」

「ん~、それでは3日ほどお願いします。部屋は…」

「1部屋でいい。」

優夜の後ろに隠れていたイノリが顔を覗かせ、言葉を遮る。
『1』と人差し指を立たせて顔の前に出す。

「では1部屋でお願いします。」

「か、かしこまりましたっ!あの…1部屋でベットが2つあるお部屋が現在空いていなくて、今ご案内できるのは大きめのサイズのベットなんですけど1つしかないお部屋でも大丈夫ですか?」

「そちらでもかまいませんよ。」

「ありがとうございます!料金、お安くさせてもらいますね。こちら鍵になります。無くしたり壊したりした際は追加料金が発生しますので注意してください。」


「ありがとうございます。分かりました、気をつけますね。」


女性から鍵を受け取り、階段をのぼる。部屋は一番奥の部屋だ。
部屋の鍵を開け、中に入ると大きなベットが1つ。
窓際には書き物などができる、テーブルとイス。その近くには小さいながらも存在感のある白いソファーが目に入った。 

年季が入っているが丁寧に掃除や手入れをしているのが見てわかる部屋だ。


「中々良い宿に泊まれて良かったです。イノリは僕と一緒のベットでよろしかったですか?嫌ならソファーで寝ますが。」

「ん?俺は全然気にしないぞ。それに一緒のベットの方が血も飲みやすい」

イノリは大きなベットが気に入ったのかいつの間にか靴を脱ぎ捨て、寝転んでいた。


「僕はシャワーを浴びてきます。大人しくしていてくださいね」

わかってると手を振って返事をしたイノリをあとに、優夜は部屋に備え付けられているシャワー室に足を運んだ。

(やはりシャワーを浴びたほうが洗った気持ちになれますね)

濡れた髪をタオルで拭きながら、部屋に戻るとベットには寝てしまったイノリがいた。

「ふふっ、疲れて寝てしまいましたか。」

髪の水気もなくなり、優夜もベットに入ると振動で起きたのか眠たげな目をしたイノリと目があう。

「イノリ。貴方今日の分の血を飲んでいないでしょう?」 

「ぁ、そうだった。忘れてた、ゆうや~」

血を吸ってないと分かり、吸血行為をしたいが身体は眠たく自力では起きれないためにイノリは優夜の名を呼ぶと、優夜は軽々とイノリを持ち上げる。
身長に比べて細すぎる身体を己の膝の上に横抱きに抱え込む。

短刀をアイテムボックスから取り出し自分の右手首に刃をあてる。深く切りすぎないように刃をひくと、じわりと手首から直線に鮮血が滲む。
左手でイノリの頭を支え、口元に血が滲む右手首を押し当てる。

「飲めますか?」

「う、ん。のめる」

ぺろぺろと手首を舐めるイノリを見て、優夜は元の世界で幼い頃に飼っていた大型犬を思い出していた。
五分ほどたってようやく満足したのかイノリが「ご馳走様、おやすみ」と舌っ足らずに言うとそのまま寝てしまった。

「おやすみなさい。」

もうすでに手首の傷も治っており優夜も寝る体勢をとる。
イノリを抱き枕にして目を瞑ると、優夜自身も急に異世界に来て色々なこともあり、疲れていたのだろう。

暖かい毛布と隣に眠る人肌を感じすぐに眠りにおちた。


──────────────────────────

ちょっとはいちゃいちゃできました!
一応優夜もイノリも顔が良いです。APP18です。
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