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37話 二人の母、そして激闘へ
しおりを挟むいつもならばコック達が夕飯を作っているはずのキッチンには人気は無い。
「では行きましょう。ここを出て右の大階段を登ってください。お母様の書斎は2階の突き当たりにあります」
「一ついいか?」
「なんでしょう?」
俺はサラサラの白銀の頭をポフリと掴む。
「お前はまだ子供なんだ。もしお前が呪われても俺が必ずなんとかする。だからそんなに気負わなくていい」
「な、な、なにするんですか……!?」
突然のことに銀髪を逆立ててワナワナ動揺するファナを見てはじめて子供らしさを見た気がした。
「ふふ……それじゃあいくか!」
「はい! 行きましょう!」
俺はファナの指示通りに階段を駆け上がり見つからないように廊下を横切る。
「止まってください……! ここです……!」
俺達は難なく廊下の突き当たりにある端の部屋にたどり着いた。
が、しかし部屋の鍵は閉められていた。
「まじか。俺の通常攻撃で壊してもいいが確実に音でバレるぞ……」
「任せてください。こんな時こそ後衛魔導師の腕の見せ所です」
「――錠解」
カチャ
見事解錠に成功したファナは誇らしげにこちらを見てくる。
「よくやった。さすがファナだ」
その言葉に少し照れながらはにかむ姿はヴァニラそっくりだった。
「やっぱりお前はヴァニラの妹だな。笑った時の可愛いえくぼまでそっくりだ」
「――!! シュ、シュント君……。さっきから女性を勘違いさせるような言動はよした方がいいですよ……!」
真っ赤になった頬もそっくりだ。
「そうか? 可愛いと思ったから言っただけだけど……」
「ああぁもう! シュント君みたいな鈍感男にお姉様を預けるのが心配になってきました!! あとファナの事はお前じゃなくてファナとお呼びください!! 」
何故かプンスカしたファナは勢い良く書斎に入っていき、俺もそれに続く。
エマの書斎はノーデンターク当主夫人にしては案外シンプルだった。
キングサイズのベッドとデスク、それに大きなクローゼットがある家具配置に、壁四面に敷き詰められた本棚から彼女の教養が見て取れるかもしれない。
「では手分けして探しましょう」
で、たしか高濃度ポーションがあるのは……。
「お、ファナ! デスクにあったぞ」
びくんと背筋を伸ばしたファナはまたも顔を真っ赤にしてこちらを振り向く。
「シュ、シュント君……! いきなり名前で……!」
「いやさっきそう呼べって聞こえたんだけど……?」
またもプンスカしたファナはやや大きめの足音をわざと鳴らしながらデスクに近づく。
「ふん! まぁこれでポーションは手に入った事ですし先を急ぎましょうか」
俺はポーションを手に入れ、書斎を後にしようとしたその時。
デスクにあった一枚の白黒写真が俺の目に飛び込んできた。
「これは……」
そこに写っていたのは、キリッとした男性一人と満面の笑みで肩を組みながらピースをする二人の女性、そして3人に囲まれるように白髪の赤ちゃんが椅子に座っている。
「その3人は若かりし頃のお父様とお母様そして……アクリシア様です。お父様の仏頂面は変わっていませんがお母様は少し雰囲気が違いますね」
!!
エマとアクリシアに親交があったなんて初耳だ。
そしておそらく3人に囲まれている赤ちゃんは……。
「そして赤子姿のお姉様です。ファナの子供の頃とそっくりなんです」
いや、今も十分子供だろ。
なんてツッコむこともできずに写真を眺める。
「――雷光滅」
光の如き速さの雷が書斎を一閃する。
「――ぐぁぁあ!!」
電気が俺の体を何周も何周も駆け回っていくのが細胞レベルで分かる。
「シュント君!!」
くそっ!
もろに肩をえぐられた……!
この雷を纏った鞭攻撃……間違いない。
「あら? 『私たちの攻撃パターン、行動パターン、戦闘スタイルは全てお見通し』だったのじゃないかしら?」
「――よお。早かったなエマ……!」
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