若い聖女が現れたから私はお役御免!?それならこっちから婚約破棄します! ~今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです~

桜乃

文字の大きさ
5 / 321

異世界から来た聖女

しおりを挟む
あれから数日後、私たちは馬車に乗り沙羅の住む
屋敷に向かっていた。
あの日、沙羅に手紙を書いた。
話したい事があるので伺いますと言う事と、謝罪の言葉を綴って。
正直に言うと不安だらけだった。
もし、沙羅に拒絶されたらと思うと怖くて仕方なかった。
でも、聖女の役目を果たさなければと思った。
例えそれがどんな結末になろうとも。
***
しばらくすると、大きな門の前に辿り着いた。
そこには、おそらく執事だろうと思われる男性とメイドであろう女性がいた。
私達が近づくと、男性は深々と頭を下げ挨拶をした。
メイドの女性もその男性と同じように頭を下げたので
、私達もそれに倣って軽く頭を下げる。
「お待ちしておりました。ルカ様にルーク様」
「お忙しいところお時間を作っていただき誠にありがとうございます」
「いえ、とんでもないです。お嬢様も楽しみにお待ちになっておりますのでどうぞこちらへ」
そう言われ、私達は男性の後ろをついて行った。
しばらく歩くと、玄関ホールへと着いた。
そこは広く豪華絢爛という言葉が似合う場所であった。
私達はその中を歩きながら奥の部屋へと向かう。
扉の前に着くと男性がノックをして、失礼しますと言い扉を開ける。
中にはソファーに座る沙羅の姿があった。
沙羅は私達に気付くと立ち上がり、駆け足で近づいてきた。
「…………!!」
「えっと……どうしましょう何を言っているのか分かりません……」
沙羅様は、私に何か伝えようと一生懸命に話しているけれど、沙羅様の言葉は聞いたことの無い言葉だった。
それはそうだ、だって沙羅様は別の世界から来たんだもの……
これでは、沙羅様も困るだろうと私は沙羅様の手を握って、ぽう……と魔力を込める。
チラッと沙羅様の方を見ると不安そうな表情を浮かべていたので、私は大丈夫、と言うようににっこり笑って見せた。
すると、沙羅様も安心したのか笑顔を向けてくれた。
「…………っ、あ……の……」
「沙羅様、私の言葉が分かりますか……?」
「……はい!、えっ!すごい……これ貴方がやったの?」
「えぇ、これでもう大丈夫ですわ」
「へ~~ここが異世界だってのは分かってたけど言葉通じなくて困ってたんだよね~」
「ちょっと!沙羅様!!聖女様になんて口を……申し訳ありません聖女様……」
真っ青な顔をしながら、沙羅様の隣にいたメイドさんが謝ってきたけれど
私は気にしていないと言って、なんとかその場は収まった。
それから私達は、向かい合って座り自己紹介をする。
「私はルカ、この国で聖女をしております。こちらは私の婚約者のルーク様です」
「ルークです、これからよろしくお願いいたします」
「はわぁ……聖女ってほんとにいたんだ……あっ!私は高木沙羅です!一応女子高生してます!」
そう言って、元気いっぱいに挨拶する沙羅様が眩しくて思わず目を細めてしまう。
沙羅様は、とても可愛らしい方だった、それに、すごく素直な人だと私は思った。
きっと、私とは違う世界で生きてきた人だからなんだろうと 思っていると、沙羅様が口を開いた。
「あのー私なんでここに呼ばれたんでしょう?」
「それは……貴方が聖女として選ばれたからですわ」
「聖女に?でも、ルカさんがいるんだし必要ないんじゃない?」
「あら、そんな事はないわ。この世界に呼ばれたって事は何か特別な力があるって事だもの」
「そうなのかな……あっ!あと、私がこっちに来た時になんかイケメンの人に何か言われたんだけど……何だったんだろ……」
「あぁ……それは多分アルマ様ね……それはそのうち説明してあげるわそれより私がここに来たのは、聖女として
貴方が相応しいか見極めに来たのだけれど……心配いらなかったみたいね」
そう言って、沙羅様の顔を見る。
沙羅様は、キョトンとした顔をして首を傾げていた。
「でも、今日の事はアルマ様には内緒にしておいてくれる?」
「え?わかっりました…」
「よろしくね、さて……ルーク様そろそろお暇致しましょ」
私はそう言い、席を立つ。
ルーク様も同じように立ち上がったのを確認してから 私は沙羅様の方を向く。
「これから大変かもしれないけれど、頑張ってね」
そう、一言残して部屋を出た。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで

雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。  ※王国は滅びます。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?

榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」 “偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。 地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。 終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。 そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。 けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。 「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」 全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。 すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく―― これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

処理中です...