若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

この町のお話

一番近くのテーブルに座っている人達に話しかける。
私達が近づいて来たのに気づいたのか、男の人と女の人の二人がこちらを振り向いた。
「あら？見無い顔ね旅の人？」
「はい、最近この国に来たばかりなんです」
「へ～この国にだなんて珍しいな、ここは寒いし何も無い所だろう？」
そう言って、二人は笑っている。
この国に来る人間は珍しいからなのか、彼女達は興味津々のようだった。
どうやら、この国についての話を聞きたいと言っても問題なさそう。
早速、質問をしてみる事にした。
「あの、少し聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか？」
私がそう言うと、二人は笑顔で了承してくれた。
まずは、この町について教えてもらう事にした、
どうもこの町は、名前がないらしくて、人々は自分達の町を"スノーホワイト"と呼んでいるらしい。
そして、その中央にある大きな城を 、スノーホワイト城と呼んでいて、王様が住んでいるのだと言う。
「あんな所に王様が？」
思わず疑問を口に出してしまった。
あの城は氷で覆われていて、とてもじゃないけど人が住めるような環境ではないと思ったからだ。
しかし、その問いに答えてくれたのは、隣にいた女の子だった。
「王様は魔法が使えるの！だからあのお城でも生活できるんだって！凄いでしょ！！」
と、自慢げに胸を張って答えた。
魔法が使える……？まさか、あの魔女が住んでいる？
いや、魔女が住んでるとしても、あんな人目に付くようなところにわざわざ住むだろうか？ もっと隠れて暮らせる場所がありそうな気がする……
そんな事を考えていると、 今度は別の男性が口を開いた。
「びっくりした？魔法が使えるだなんて普通信じられないもんな～」
「え？あなた達は魔法は使えないのですか？」
私がそう聞くと二人は、大きな声で笑い出した。
何が可笑しかったんだろうか……？ よく分からなかったけれど、 ひとしきり笑うと、彼らは説明してくれた。
「俺達が魔法を使える訳ないだろう？魔法は王様しか使えないんだから」
「そう……なんですか……」
「魔法が使えるだなんておとぎ話の中だけよ」
そう言われてしまった。
どうやら、この国では、魔法は使えなくて当たり前のようだ。
でも、それならあの魔女は何者なんだ……？
もし、あの王様と呼ばれるのがあの魔女だったとしたら……
「あの！あのお城に行くことは出来ませんか！」
「城に？それは難しいな……」
「そうねぇ……あのお城は、特別な事が無い限り近づいてはいけないの」
特別……
それは、何かあると言っているようなものだ。
もしかしたら、魔女がそこに居るかもしれない。
でも、どうやって近づくかが問題だ。
やっぱり忍び込むしかないか……
私は、心の中でそう決意すると、二人にお礼を言った。
「色々ありがとうございました、これから少し町を散歩してきますね」
それだけ言い残すと、すぐにその場を離れた。
これ以上ここに居ても何も得る物はないと判断したためだ。
「ねぇ、ルカ……やっぱりあのお城……」
「えぇ……あの魔女がいるとみて間違い無さそうですね」
「けれど、どうやって行くつもりだ？」
「忍び込むしかないと思います……なるべく人目が無い時間に……」
そう言いながら、私達は辺りを注意深く観察しながら歩いた。
すると、町の外れに大きな湖があるのを見つけた。
その畔には、小さな小屋が建っている。
私達は、そこで作戦を練る事にした。