若い聖女が現れたから私はお役御免!?それならこっちから婚約破棄します! ~今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです~

桜乃

文字の大きさ
77 / 321

町の人達

しおりを挟む
「と言っても……どうしましょうか……」
「誰に話しかければいいのかなぁ~」
「俺達が、いきなり話しかけたら怪しまれそうだしな……」
私達は今、困っていた。
話しかけてみる、と決めてみたのはいいけれど、肝心の誰に話しかけるまでは
決めていなかった。
周りを見れば、色々な人達がいる。
若い男女や、お年寄り、小さな子達もいる。
この国では、皆が教会に来て祈りを捧げているのだろうか。
「君達見無い顔だね?」
「えっ?」
考え込んでいると、急に男の人に声をかけられた。
見ると、金髪の優しそうな男性だった。
年齢は私達と同じくらいか……それより若いか……
私達は、とりあえず挨拶をする。
すると、男性は笑顔で返してくれた。
「君達……見た感じ祈りに来たって感じじゃないよね?観光かい?」
「あぁ、宿の女将におすすめの場所を聞いたら、ここの教会を勧められまして」
男性の質問に対して、ルークが答えると納得した様子で、なるほどね、と言った。
「貴方はここの人なんですか?」
「そうだよ、僕はこの辺りに住んでてよくここに来るんだ。でも、旅行でこんな所に来ても楽しくないだろう?」
「いいえ、凄く素敵な場所だと思います」
ルークがそう言うと、男性は驚いた顔をした後、嬉しかったのか笑顔でお礼を言われた。それから、少し話をする事になった。
彼の名前は、アルフレッドと言うらしい。
彼はこの辺りに住んでいるみたいで、教会に来る人達の案内をしているそうだ。
「アルフレッド、少し聞きたいことがあるんだがいいだろうか?」
「もちろん!なんでも聞いてくれ!」
「あろがとう、じゃあ一つだけ……君は王様に会ったことがあるのかい?」
それを聞くと、また驚いていた。
そして、苦笑いをしながら、あるわけないよ。と答えた。
やっぱりそうなのか……
この国の人達は、簡単に王様に会う事が出来ないようだ。
すると、アルフレッドさんは、どうしてそんなこと聞くのかと聞かれたので
上手く誤魔化して、とルークに合図を送った。
「この国に来た時からあのお城が気になっててね、王様に会えないかなって思ってたんだ」
「そうなのかい、王様は俺達ですら会う事が難しい……いや、会えないような存在なんだ」
「そうか……残念だ」
そう言いながら私達はチラッと目を合わせて微笑む。
上手くいったか?と小声で聞かれたので、多分大丈夫です。と答えた。
すると、アルフレッドさんは何か思いついたのか、口を開いた。
どうやら、私達に王都を案内してくれるそうだ。
私達は、素直にアルフレッドについて行くことにした。しばらく歩くと、大きな噴水が見えてきた。
その近くには、沢山のお店があって賑わっている。
すると、突然後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには二人の男性が立っていた。
一人は背が高く、もうひとりは私より少し低いくらいだ。
「アルフレッド!その人たちは?」
「あぁ、旅の人だよ。この辺を観光したいらしいから、連れて来たんだよ」
そう言うと、二人はこちらに近づいて来た。
そして、二人共自己紹介をしてくれた。
最初に声をかけた方が、アレン。
そして、もう一人の方は、カイと言うらしい。私達も、それぞれ自己紹介をした。
「こんな国に観光だなんて……何もない国でしょう?」
「ううん!すっごく楽しいよ!さっきの教会のステンドグラスも本当に綺麗だったし!」
「ふふっ、エミリア落ち着いて。でも、本当に素敵な国です、ね?ルーク」
「あぁ、本当に素敵な国だと思います」
そう言って、お互い顔を見合わせて笑う。
それを見ていた三人は、ポカーンとしていた。
そして、しばらくして我に返ったのか、アルフレッドはそうだろう?と言って笑った。
「じゃあ、俺達用事あるから行くな」
「そうだったのか、じゃあまた後で」
「おう!君達も楽しんでいってね~じゃあ!」
そう言って、二人人はどこかへ行ってしまった。
そして、私達はそのまま王都を見て回る事にした。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで

雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。  ※王国は滅びます。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?

榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」 “偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。 地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。 終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。 そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。 けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。 「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」 全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。 すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく―― これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...