若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

一方その頃沙羅とフィリスは……

「あ～あ、今頃ルカ達は楽しんでるんだろうなぁ～」
「こら、そんな事を言っている暇があるなら手を動かしなさい」
「え～だってフィリスも気になるでしょ？ルカ達が今何してるのかなって」
私がそう言うと、フィリスは呆れたような顔をしてため息をつく。
そして、作業していた手を止めると私の顔をじっと見つめた。
私達二人は、今ポーションを作っている最中である。
フィリスが言うには、これも聖女の力を高めるためにも必要な事らしい。
「確かに、私もルカ達がどうしているのかは気になりますよ？でも、強くなってルカを驚かせたって言ったのは誰でしたっけ？」
「うぅ……っ、私です……」
「でしょう？まぁ、気持ちは分からなくもないけどね」
そう言いながらも、彼女は手を動かす。
私は、そんな彼女を見ながら窓の外を見る。
窓から見える景色は、綺麗な青空が広がっている。
「はぁ……少し休憩しましょうか？お茶を用意してきますね」
そう言うと、フィリスは部屋を出て行く。
フィリスを呆れさせちゃったかなと思いつつ、私は椅子にもたれかかる。
でも本当に、ルカ達は今頃何をしているのだろう……あれから、ルカからは連絡も無いし、私がメッセージを送っても返事が返ってくる事も無かった。
私としては、寂しいけれど無事でいるならそれでいいと思っている。
それに、私自身も忙しくてそれどころじゃなかったし。
そんな事を考えていると、扉がノックされる。
「お待たせしました、さぁ、お茶にしましょうか」
「うん！そうだね！」
フィリスがテーブルに
紅茶やお菓子などを置いてくれる。
そして、私の隣に座ってくれた。
二人でゆっくりお茶を飲みながら会話をする。
すると、部屋の外から大きな声が聞こえてきた。
慌てて教室の扉を開き外を見ると、書類の下敷きになっている
ウィル先生がいた。
「ウィル先生！？大丈夫ですか！？」
「あぁ～高木さんにフィリスさん……大丈夫ですよ」
私は慌てて駆け寄り、一緒に書類をどかすのを手伝う。
そして、やっとの事で書類を全て取り除くことが出来た。
「いてて……ありがとうございます……二人とも……」
「こんなに沢山の書類……どうかされたんですか？」
「いや～ちょっと調べものをね！君達は今からお茶会かい？」
「えぇ……あの……先生も……」
「いいのかい！？いや～今凄く喉が渇いてたんだよね～」
そう言って先生は教室の中に入ってくると、嬉しそうに椅子に座る。
私とフィリスは顔を見合わせ苦笑いをした。
それから三人でお茶をしながら談笑をしていると、ふと先生が思い出したように話し始める。
それは、私についてだった。
最近、私に嫌な噂が出回っているらしい。
内容は、召喚された聖女がこの国に災いをもたらすというもの 。
その話を聞いて、私とフィリスは、お互いの顔を見て首を傾げる。
「ルカがそんな事する訳がありません。まさか、先生はそんな噂を信じているのですか？」
「いやいや、そんな訳ないじゃないか！俺だって信じてはいないよ。ただ、他の教師がそんな話をしていてね……あ！もちろんその教師には注意したよ？！」
ウィル先生は慌てながら言う。
教師がそんな噂を流すだなんて許されるのだろうか……いいや、許されないだろう。
でも、だとしたら誰がこんな噂を流したんだろう……
私が何か恨みを買ったとか？ いや、私がこの世界にきてから
聖女らしい事なんて何もしていない、むしろ、この世界の人達に助けられてばかりだし……私は一体どうしたらいいんだろう……
私は不安になって俯いていると、ウィル先生がこう言った。
「そんな顔しないで、生徒の事はちゃんと守るから！っと……そろそろ時間だし俺は職員室に戻るよ、ポーション作り頑張るんだよ～じゃあね！」
そう言うと、先生は急いで出て行ってしまった。
残された私とフィリスは、しばらく沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは、フィリスだった。
彼女は私の肩に手を置くと優しく微笑みかけてくれた。
「大丈夫、私も付いてます。もし何かあったら私に言ってください。必ず力になりますから」
彼女のその言葉を聞いた私は、心が温かくなっていくのを感じた。
それと同時に安心感が芽生えてくる。
フィリスが私のお友達で本当に良かった……そう強く思った。